2009-11-23
いただいたご本『こんな私が大嫌い!』
● 中村うさぎ『こんな私が大嫌い!』(理論社/よりみちパン!セ)1000円+税
良書が数多く含まれている「よりみちパン!セ」シリーズのなかでも、これは最高傑作ではないだろうか。もちろん伏見の本も含めてであるが、ぼくとしては『こんな私が大嫌い!』を「よりみちパン!セ」のベスト1に挙げたいと思う。
理由は、まず取り上げられている題材が、いまどきの思春期の子供たちにとっていちばん琴線に触れる問題であること(大人にとっても重要な問題である!)。その表現方法が、文体、デザインともにちゃんと読者対象に向けて練られたものであること。文章量も彼らにとってちょうどよくコンパクトにまとまっているところ。イラストが内容にあっていて、とてもかわいいところ。そして、文章がとにかく魅力的で、内容が深く説得力があるところ。
これだけそろった一冊はそうそうない。
「「自分が嫌いじゃなくなる」ってことは、「自分への執着から解放される」ってことで、要するに「自分を嫌いでも好きでもなくなる」ってことなんだ」
こんなことなかなか言えません。中村うさぎがこれまでの七転八倒の試行錯誤なかから獲得してきた哲学の、もっとも純度の高い部分を、最高のエッセイで綴っている本だと思う。彼女の作品のなかでも、ぼくはこれがいちばん好きかもしれない。推薦なんてしないでも、ロングセラーとして読み継がれることでしょう。