2008-11-18
河合香織『セックス ボランティア』
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● 河合香織『セックスボランティア 』(新潮文庫)
★★★ 寸止めの誠実さ?
物質的に豊かになって、ある程度富の平等が実現すると、人々は今度、エロスの平等を求めるようになる。誰だって、素敵な恋がしたいし、めくるめくセックスだって経験したい!
もちろん、体の不自由な人たちがそう思うことだって、当然である。本書は、ただ生存しているだけではなく、人生にそうしたつややかな時間を獲得しようとし始めた障害者と、それをいかにサポートするかに奮闘する人たちに関するレポートである。
重度の障害者が性愛を可能にするには、2つの問題が横たわっている。実際上、身体の機能が性行為に適さないこと。そして、障害を持った容姿が、性的な魅力を喚起しないという傾向。容姿の魅力は、なにも障害者に限った条件ではないが、障害という表象に顕著に現れる問題でもある。
そこで一部では、障害者がセックスを得るための手段として、風俗など金銭を媒介にすることと、ボランティアを募ることが実践されている。
著者は、酸素ボンベをつけながら風俗に通う脳性麻痺の男性や、パソコン通信の掲示板で性の介助を申し出た主婦、知的障害の夫婦の寝室で性の介助を行なった大学教員などを取材し、理想と現実のはざまに揺れる人たちの声をなまなましく取り出している。また、障害者にセックスボランティアを派遣する市民団体をオランダまで尋ねている。
そこであらわになるのは、性にまつわる情緒が、金銭との交換や、ボランティア精神に頼ったりといった、割り切った関係になかなか馴染まない、というごくごく当たり前の現実だ。著者は自身の感受性と、そうしてでもセックスを求めざるを得ない人たちの苦悩とのあいだで、迷い、自問するが、結局のところ結論は出せない。それは誠実な態度とも言える。
だが、ここまでは言ってもよかったのではないか。不満は残っても、それでも、セックスはないよりあったほうがましだ、と。
*初出/長野日報(2004.8.3)ほか