2008-11-24

ホーキング青山・ビートたけし『日本の作法』


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● ホーキング青山・ビートたけし『無差別級トークバトル日本の差法―ビートたけし×ホーキング青山 (新風舎文庫)』(新風舎)

★★★★ ビートたけしにはいまだに共感し切れないところが

あえて波風を立てようと目論んだ一冊である。本書は「世界の北野」ことビートたけしと、自称「史上初の障害者お笑い芸人」ホーキング青山が、事なかれ主義の世間に向けて放った差別論対談だ。

ホーキング青山は先天性多発性関節拘縮症のために生まれつき両手両足が使えない重度の障害者で、デビューして以来、自らの障害をネタにしてはばからない芸風で勝負してきた。

「とにかく生まれたときに、医者から父親が『死産にしますか?』っていわれて、『うちは育てます』っていうことになった。そこから始まったわけですよ、ボクの人生は」

それにビートたけしはこう応じる。「中学の時に一回グレたの。そん時に、『何でオレを生んだんだ!』っていったら、『堕ろす金がなかった』っていうんだぜ(笑)」

この率直さ、風通しのよさこそが、この対談の最も大きな意義に違いない。昨今の世間の風潮は、差別問題に関るような事柄はできるだけアンタッチャブルにしておいて、表面上は自らが差別に加担していないことを証明しようとする、というものだ。それに抗して、彼らが突きつけたものは、建前なんかよりも実質の対等な関係こそが大切なのだ、ということ。

実際、この対談の中で、ビートたけしはホーキング青山を障害者としてことあげすることはないし、ホーキング青山も自分を障害者ゆえに特権化しようとはしない。彼らは、実に心地よいコミュニケーションを交わしてみせる。それこそが反差別の作法だ。

ただし、議論としては、差別をめぐる今日の閉塞状態を、高度成長期の社会の責任に帰したり、過去の町内会的な人間関係にその解決を求めるだけでは事足りない。やはり過去にも美化できない厳しい現実があったからこそ、それを変えようとする営為が存在したのだ。今日までの過程を批判的に乗り越えることでしか、突破口は見出せない。

*初出/共同配信→中國新聞(2002.12.1)ほか