2006-12-24

いただいたご本『高齢化社会と日本人の生き方』

oguogu.jpg以前にもこのサイトで紹介したことがある社会学者の小倉康嗣さんの博士論文が単行本として出版された。

「〈生き方としての学問へ〉ーー。老いの季節を迎えんとする『団塊の世代前後の現代中年と、30代でゲイでもある研究者が、それぞれに社会と対峙した経験をたずさえ、出会って生成される新たな人間存在の地平。それを、両者のライフストーリーの螺旋のなかから渾身の力で描き出す、人間生成のとエイジングの社会学』。

上記の帯のコピーの通り、この大著は著者とインタビューイの人生が織り込まれたタペストリーである。ぼくはあとがきを読んでいてどうにも切なく、涙をこぼしそうになった。それは書き手を直接知っているからではなく、人が生きるということの切実さが行間にほとばしっていたからだ。自分の生き様をもって学問する。そんな気概に深く打たれた。最近バトラーとセジウィックを使って社会を分析してみました、みたいな安直な論文を読んだ後だっただけに、よけいこの本の圧倒的な力に気圧された。

「自分に刺さった『棘』にフタをせず、その『棘』を一生懸命に生きると、社会を相対化する目が見開かれてくる。みずからの人生、そしてみずからが生きる社会は、わが身でつくっていくのだという深い了解が生まれる。そこから新たな生き方づくり・社会づくりへの模索が始まる」。これから社会学や他の学問をはじめる学徒たちにぜひとも読んでもらいたい。学問をするということが、誰かの理論をなぞることだったり、自分の情緒を満足させることではなく、自分の実存とそこに映し出されるものとの闘いと共生の営みであることがわかるだろう。

● 小倉康嗣『高齢化社会と日本人の生き方ーー岐路に立つ現代中年のライフストーリー』(慶應義塾大学出版会) 5600円+税