2006-03-05

プライドと偏見

襟足からはみだす短い毛
それが気になってしようがない
プライドと偏見

映画「ブリジット・ジョーンズの日記」で初めて、ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」を知ったほど、古典文学には疎い。でも、「ブリジット」を観て、イギリスのテレビ番組で「高慢と偏見」のダーシー役を演じて人気を博したというコリン・ファースを知り、その彼がほぼダーシーのキャラで演じたというマーク役に惹かれてしまった。イケメンとも言えず、ただただプライドの高い男なのだけどなぜか魅力的。コリン演じるマークを通してダーシー役に惹かれてしまったので(かなりややこしい)、「高慢と偏見」を原作としている映画「プライドと偏見」は何としてでも観なければと思ってしまった。コリン・ファースがマークを演じるわけでもないのに…。

で、映画はどうだったかというと、興味深く、面白いシーンは多々あれど、ちょっと期待はずれだったという感じ…。ただただあの時代を再現した格調高い映画なのか、それとも、皮肉を込めて、人間の下世話な部分を格調高い雰囲気に包んで語ったのか、どうとらえていいのかわからず戸惑ってしまったからだ。
まず、原作を読んでいなかったので、その時代の金持ち男女のありようにびっくり仰天。超お金持ちの若い男たちと、そこそこお金持ちの若い女たちが、働くでもなく、生きがい探しに思い悩むでもなく、ただただ相手探しにしゃかりきになっているさまが描かれている。監督の真意はわからないが、少なくとも私にはそうとしか見えなかった。

私の習いごとの某先生に、この映画の話をしたら、「ジェーン・オースティンの原作がすごいのは、彼女の生きた時代に女性自ら、この時代の男女の姿を冷静に観て描いていること」と教えてくれた。なるほど、そう言われて考えてみると、確かにその時代の「え〜っ?」と仰天するほどの、娘を持った母親の結婚への思いや娘たちの結婚への考え方がよくわかる。
映画では、5人の娘たちの母親を「秘密と嘘」のブレンダ・ブレッシンが演じているのだけど、もう彼女の適役ぶりと言ったらない。あの、もにょもにょと甲高い声が、娘を5人も持った母親のなりふり構わぬ結婚への思いをとっても下品に、赤裸々に伝えていて、とってもうまかった。
そういう意味では、ジュディ・デンチが鼻持ちならない貴族の女を演じていたり、キーファーのお父さんのドナルド・サザーランドが情けないけど、娘を思うお父さんを味わい深く演じていたり、見所はいっぱい。

ただ、主役のふたりが、そういう意味ではインパクトに欠けるのだ。ダーシー役のマシュー・マクファディンは、合格点のかっこよさはあるが、観終わったらすぐ忘れてしまう程度のもので、心ときめくまではいかない。
エリザベスを演じるキーラ・ナイトレイも、スレンダーできれいだけど、情熱が感じられず、
ダーシーがなぜ彼女に惹かれるのかがよくわからない。しかも、途中から、彼女の髪型が気になって気になってしょうがなかった。なにしろ、アップに結った髪のえりあしから、短い毛がちょこちょこ出ているのだ。まるで時代劇のお侍かつらのように…。衣装も、風景もばっちりあの時代で決めて、その髪型はないだろう?と何回も見直したが、どう見ても、えりあしから短い毛がはみ出してる。なぜ?  それが気になっちゃって、キーラの髪はかつらなのかしら?と思ったり…。そもそもアップの髪型も全く似合ってなかったし、彼女には、はつらつとした現代娘がよく似合うと思う。なので、今回のアカデミー賞の女優賞にエントリーされているのには、正直驚いた。