2004-10-27

やさしい嘘

ラストシーンに思わず涙…。
やさしい嘘

「やさしい嘘」ちらしよりエカおばあちゃんを悲しませないために、その娘マリーナと孫娘アダがついた“嘘”。その嘘をめぐって展開する物語だ。

あらすじと題名から、文科省推薦ちっくな生真面目映画を想像していたのだが、随所にユーモアをちりばめ、ベタッとせずにほろっとさせる…。とりわけ登場人物を見つめる監督の、適度な距離感が心地いい!

舞台はグルジア(旧ソビエト)。エカおばあちゃんとマリーナ、アダ…、三世代の女たちが片寄せあって暮らしている。冒頭、3人がカフェでくつろぐシーンが出てくるが、エカおばあちゃんが頼んだケーキを何も言わずに横からつまみ食いする娘のマリーナ。それを“なによ”ってな顔で見ているおばあちゃん。孫娘のアダは我関せずの雰囲気…。このシーンに思わずにんまりした。「そうそう、家族ってそうだよねー」と。

マリーナには弟オタールがいて、彼は新しい生活を求めてパリで暮らしている。そのオタールからの手紙をエカおばあちゃんは楽しみにしているのだが、マリーナは母・エカが弟ばかりを愛してるみたいに感じて面白くない。そのオタールが不慮の事故で死んでしまうのである。そして、エカおばあちゃんを悲しませないためにマリーナとアダの母子は、オタールがまだ生きているように、嘘の手紙を書き始める。その“やさしい嘘”が彼女たちの生活をどう変えていくのか?
ちょっとほろ苦く、かなり切なく、それでも心がポッとあったかくなるラストシーンに思わず涙してしまった。

舞台となっているグルジアについて、失礼ながらほとんど私は知らなかった。なので、この映画はグルジアの人々の生活を垣間見る、という意味でもとても興味深かった。
グルジアは、ソ連が崩壊した後、内戦や民族紛争で混乱し、男たちは働き場所を求めて故国を離れ、女たちが家を守っているのだという。マリーナの夫もいないのだが、なぜなのか? ストーリーの中で明かされる事実は、現実とつながっていて、とても重い。
しかし、グルジアの街はとても素朴で、日本とはまったく違う文化が根付いている様子がうかがえる。エカおばあちゃんはかつては貴族だったのか、別荘も持っているのに、日々の生活のために娘のマリーナは家に眠る骨董品をフリーマーケットで売ったりしている。古くからの価値観を崩さず持ち続けているエカおばあちゃんと、自身の持つ価値観に揺らいでいるマリーナ、そしてまったく新しい価値観の中で生きようとしているアダ。そんな3人3様の思いが絡み合う映像から、目が離せなかった。

監督は、フランス人のジュリー・ベルトゥチェリ。3人の女たちを演じる女優も、ポーランド生まれ、グルジア生まれ、ロシア生まれと出身国はさまざまだが、見事に調和している。

東京では、日比谷シャンテシネで、10月30日(土)から。

このエントリへの反応

  1. やさしい嘘
    ■監督:ジュリー・ベルトゥチェリ ■出演:エステール・ゴランタン, ニノ・ホマ…

  2. やさしい嘘
    上映時間: 102分
    製作: 2003年 フランス・ベルギー
    URL:
    DVD: やさしい嘘 デラックス版 (Amazon.com)

    ■2005/02/25の日記(金)
    映画『やさしい嘘』を見た(ギンレイシネマ)。
    誰が誰に対し…