2021-10-01
ポット出版の[出版流通]その4(番外)・本屋大賞は業界最高の改革事例だと思う
ポット出版の事務所は、版元ドットコムという業界団体の事務所と共有してる。ポット出版(株式会社スタジオ・ポット)の業務縮小以降、事務所にいるスタッフは版元ドットコムの事務局スタッフのほうが圧倒的に(笑)多いんだけどね。
版元ドットコム事務局には、楽天ブックネットワーク(楽天BN・旧大阪屋)という取次に30年以上働いてきて「業界の著名人」の、鎌垣さんが今年の2月から、週に一度のスタッフとして働いてくれてる。
その鎌垣さんと、今日おしゃべりをして「本屋大賞は、出版業界における近年最高のイノベーションだった」という話をされた。
じつは、ボクもそう思ってたんです(ホントですよwww)。
そのネタ書いてもいいかって無理強いしたんで、少し書きます。
出版業界は中小零細の書店・出版社の数がものすごく多いので、ついつい愚痴がでるのかもしれない。
どこの業界もおんなじかもしれないし。
例えば、中小零細出版社からは、取次の正味が安くて差別されている、とか、大手出版社の声はきいて中小零細の声はきかない、とかね。
書店からは、人気のある新刊は、紀伊國屋書店やジュンクなどの大きな本屋にはいっぱい積まれているけど、街の小さな本屋にはとどかない、とか。
飲み屋で一緒にいると良くそんな愚痴がでてたんですよ、その昔は。
芥川賞・直木賞についての、本屋の愚痴は、
「大々的にニュースになって、直後から本屋に買いに来る客がいても、発表までどの本が受賞するのか本屋にしらされないから、事前に注文して並べておくこともできない」、だから、発表のときには本屋に並べられるように我々には事前に教えて、注文にも応じろ、ってな愚痴ね。
愚痴だ、って決めつけてるのは、そんなことを愚直に改善しようという粘りのある交渉や行動があったって話を聞いたことがないから。
そこに登場したのが、本屋大賞、だと思うんです。
以下、すべて又聞き情報からの意見ですけど、本屋大賞は
・大賞が決まったら、公表まえに出版社と交渉して、増刷などの対応を依頼して、公表時には本屋に並べられるようにした
・これを大きな本屋などの取組ではなく、書店員の個々人の参加や運営ではじめた
という。
このことは、
芥川賞・直木賞の[公表前には誰にも(本屋にも)もらさない=結果公表時には本屋にその本が(潤沢に)ない]という状況にたいして、
本屋大賞という、自分たちで運営するあたらしい「賞」をつくることで、見事に改善した、というように見えるんです。
悪いことを告発し、それに抗議・糾弾することで、現状の問題(悪いこと)の改善を、(だれかに)迫るというスタイルから、
悪いことをなくすために(減らすために、あるいは悪くないことをつくりだすために)責任やマイナスの可能性を引き受けて、「良いこと」をつくりだす。
本屋大賞によって、公表されたときには、本屋にもその本が並んでいて、売りのがしも減らせるし、お客の要望にも答えることができる。
近年、出版業界で最高に成功した改革だと思うんですよ。
これからもこの本屋大賞の改革をなんか一つでも真似したいと思う、今日このごろです。