2005-03-17

フランスはサービス後進国?

パリって、ほんと変わった街です。

今週、駅構内の多くに、全裸の男女がサッカーの競技場を走るポスターが張られています(後ろ姿ではありますが)。写真の現像ができしだい、このブログでポスターをアップしますが、なんの広告かと思いマジマジと見たら、ロンドン行きの「Euro Star」の宣伝でした。日本でいえば、新幹線みたいなもんです。強烈ですから、人の目をひきます。

まあ、アテネなんぞは公道にある売店で、表紙・パッケージに男性器・女性器がまるだしで出ているビデオ、雑誌が堂々と並べられていますから、それに比べたら他愛のないものかもしれません。私がいままで行った都市でもっとも、ポルノが町中に氾濫している都市はアテネです。

さて、本題。

フランス人店員のふてぶてしさに、渡仏してから驚かされました。

電化製品の大規模店舗で商品の場所を聞くと、「あっち」と無愛想に指さされるだけのことがほとんどです。MD用のマイクを買うとき、マイクの展示しているところで、「どのマイクがいいですか?」と聞いたら、「分からない」といわれました。まあ、商品の「良さ」は客によって違うわけですから、店員の対応は正しいっちゃ、正しいんですが。

先日、フィルムを現像するためFNACに出したのですが、いつものようにプリントアウトなしの「現像+CD-R」だけを依頼しました。店員も「CD-Rだけだな」と呟いたのを覚えております。
でも、いざ現像のできた日に取りに行くと、CD-Rにデータは入力されておらず、写真がプリントアウトされていました。同店では写真の入った袋を客に渡すとき、中身の確認をしません。他人のだったら困るし、できが悪かった時には文句を云おうと考えているので、必ず封を開けることにしているので、間違いに気がつきました。

「現像とCD-Rだけを注文したのですが、CD-Rが入っていないで、プリントアウトされた写真が入っている」
と文句を言うと、

「そんなこと、書いてないぞ。ほら」

 といって、現像依頼を受けた社員が書いた用紙(form)を私に見せました。
 たしかに、「CD-Rに焼け」とは書かれていません。でも、それを書いたのは客の私ではなく、店員さんであります。店員のミスです。

 プリントアウトはいらないから、CD-Rに焼いてくれ、と依頼すると、

「両方の料金を払わなければならない」

 といいます。
 同社の内部連絡ミスが原因であるのに、そのコストを客に支払わせようとするのですから、大した度胸です。写真現像にFNACを日頃、私は利用しており、客のデータはパソコンに残っていますので、常連であることは店員にも分かります。ねばればいいのですが、そのときはちょっとした事情がありました。

 マニュアルの古いカメラを使用しているため、あちこちにガタがきています。36枚入りのフィルムをつかい終わったあと、巻き戻すためにフィルムを固定しているロックを解除するボタンを押したのですが、解除されなかったようで、巻き戻しているときに、フィルムが切れました。このまま、フィルムを出してしまえば、全部、おじゃんになってしまいますので、FNACに行って暗室で処理してもらうように頼みました。

 そしたら、それ用の黒い布を店員さんが持ってきまして、その中にカメラを入れ、フィルムを取り出すようにいいました。布の中にカメラを入れ、自分の手でフィルムを巻き戻し、ケースに入れました。

「現像できるかどうかわからない。でも、やってみるよ」

 そのときの店員さんは、いいました。

 フィルムがダメになっていることも覚悟しました。でも、無事に現像できたので、一安心でした。特別処理の費用は加算されていませんでしたので、その分だと思えばいいかと思い、私は引き下がり、店員にプリントアウト代・現像代を支払い、CD-Rに焼くように指示しました。

 さて、本年三月一〇日(木)、フランスでは国鉄がストを起こしました。パリ市内では幾つかの電車が終日、運行を停止し、幾つかの地下鉄は50%運行、30%運行という表示が出されました。地下鉄の駅構内は当然、どこも混んでいます。しかも、本数が少ないため、三〇分に一本しか、来ない場合もあります。

 わたしは大変、いらつきました。というのは、運行しているといっても、待てども、待てども来ない。せめて、何分後に来るとか、アナウンスしてくれればいいのに、それもありません。本当に来るのか疑心暗鬼になることもしばしばでした。

 パリ郊外電車C線は、ほぼ四〇分おきに出ており、駅にはスト用の時刻表もわざわざ提示されていました。本数は少ないとはいえ、来ることは確実な上、到着時刻も分かっているので、三五分ほど待ちました。そして、到着事故から七分ほど遅れてやって来たC線に乗ったのはいいものの、終点まで行くはずの電車が二駅、走ったところで、車内アナウンスが突如流され、「本日、C線の運行はこれで終わることになりました」といいます。たくさんのフランス人は文句もいわず、プラット・フォームに降り、無言のまま、別の交通手段を探し始めました。日本だったら、駅員に皆、文句を言いそうなものです。

 フランスでは郵便局や役所ではたいてい待たされます。「四時に業務終了」という場合、たとえそれまで並んでいたとしても、四時になった時点で窓口は閉まります。並んでいた時間はまったくの損です。

 日本では店員の対応が良いのは当たり前、サービスはタダです。レストランのレシートに「サービス料」なんて記載されているときは、いつサービスされただろうか……と思うものです。
 フランスに来て、サービスは「金を払って受ける」ことなのだと、悟りました。店員の対応が無愛想でも、文句はいわれません。待たすことは当たり前。

きっと、店員や役人、駅員のふてぶてしさを非難したら、「給料にはサービス料は入ってない」と、反論されるんじゃないかと思います。

 日本を旅行したフランス人が、百貨店などにおける店員の対応の良さに、感激していました。もともと、待たされることが苦手だった私ですが、フランスに来て忍耐がついてきました。

このエントリへの反応

  1. まだ8ヶ月しかパリにいないのでどうかわかりませんが、フランスのお店でサービスが悪いと思ったことがありません。お店のサービスは15年住んでたnyや33年住んでいた日本よりも絶対いと思います。

    たぶん違いは何かというと私たち夫婦は大資本に反対していて、大きな大規模店舗には足を向けません。パリの小さなお店を守るためにも小さいお店だけに通ってます。お店の主人とは直ぐ和気藹々の話ができますし、サービスもよく、仕事は最後まで責任もってきちんと丁寧にやってもらえます。30年前日本の小さい店舗はそうでしたね。

    日本人の方は、何かと大きな店舗に足を運ぶみたいですが、小さい店舗のほうが味があっていいのになと思います。18区にすんでいるので、そういうお店に恵まれてます。観光客の行くところほど、大きくなればなるほど、接客は悪いですよ。小さいお店で”私のお店”を作るとなんでもスムーズにことが運ぶと思いますがいかがでしょう。

    確かに郵便局や役所ではたいてい待たされますが、ボンジュールに始まる彼らのサービスや、ちょっとした会話など人間くさいところが私は大好きです。日本は事務的でしょう。感じのよいロボットみたいで味気ないです。nyに比べると郵便局や役所はきちんとしてミスがないですね。だから行くの楽しみです。

    ストライキは働くものの当然の権利です。だから協力してあげてるつもりで、みんな文句も言わないんだと思います。以前ストライキで飛行機の便を逃したことがありました。駅員さんとかアナウンスに頼るんじゃなくて、周りの人に聞いてみるとみんな情報交換してくれますよ。私たちは、私たちと同じく待っていたスチュワーデスの人に、どの行き方が空港までにいいのか教えてもらえました。それでも乗り遅れましたが、ストで乗り遅れたといったら、エアーフランスはささっと次の便の手配をしてくれました。とても感じがよかったですよ。

    いや、私のフランス語能力は赤ちゃん程度です。それでもみんなほんとに感じがよくてフランス天国だと思います。フランスのよさを楽しむためにも小さなお店をお勧めします。それと周りの人と話すこと。これってパリの2倍楽しむ方法だと思いますがいかがでしょう。

    麗子

  2. 私はフランスでもパリではなくトゥルーズに住んでいます。まだ半年ほどですが。

    その前はイタリアの数都市に計3年住んでいました。イタリアでも郵便局で長い列は当たり前、職員も本当にめんどくさそうに働いていたり、窓口Aでダメと言われたことを、窓口Bで試すとOKだったりしました。
    電車ではストも多いし時刻表どおりに運行することはまずありません。最初は”なんで電車が20分も遅れているのに謝罪アナウンスがないのだろう”と思いました。情報はプラットホームにごった返す乗客による口伝えで得ることができました。駅員は逆に間違った情報を平気で言ったりします。

    日本のサービスがすばらしいのは私も同感です。
    あともうひとつつけくわえると”上”からの情報伝達能力が素晴らしいと思います。日本で窓口の人がみんな違うことを言うなんてクレームになるでしょう。

    イタリアのゆるさに較べて、フランスの(南仏での印象ですが)例えば店員さんはなんて行儀がいいんだろう!というのが印象です。

    及川さん同様、私もダメサービスに対する忍耐がついたのだと思います。日本では店員をしていたのですが、すべての責任を店に求めるお客さんが多く日々冷や冷やしていました。伊では客とケンカしてでも
    返品などさせない、という構えの人が多かったです。

    郷に入っては郷に、というやつですね。

  3. 仕事でモンペリエに2年ほど住んでいました。フランス=サービス後進国、同感です。店の大きさによるという話もありましたが、一般に「商業的サービスの質」とは「不特定多数の顧客を最大限満足させる能力」のことであり、店主と懇意にならなければ受けられないサービスは、一般的な意味の「サービス」とは違うように思います。
    SNCFがらみの文句は当たり前すぎて言う気がありませんが、一等者の切符を予約した→到着した列車には一等車両が連結されていなかった→駅員に問いただしたら「その切符は私が売った物ではない」と言われた・・・この駅員のセリフは、フランスのサービス(の悪さ)に関する問題が、多くの場合、責任感の欠如に由来する、ということを示しています。自分が受け付けた現像じゃない、自分が売った商品じゃない、自分が作った製品じゃない、だから自分に責任はない、だから受注ミスがあってもあやまらないし、壊れてても返品は受け付けない、というわけです。
    自分のサイトで、「ナポレオンの辞書には不可能の文字はない、フランスの辞書には責任感の文字はない」と書いたら、フランスの友人からクレームが来ました。「『謙虚さ』もないよ、書き加えておいて」だって。

  4. パリには日本人経営の現像写真店があり日本語も通じるし品質もサービスも行き届いていますよ。ジュンク堂やマイバスのあるピラミッド通りにありますので一度試してみたら。

  5. いまはプロ専用のラボをつかっており、サービスはとてもよいです。