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沢辺の気文 [2000年11月24日]

委託制度の功罪を検証する
『新文化』2381号

『新文化』2381号・2000.11.16号に書いた文章です。
発行・新文化通信社 電話03-3942-5561
みなさん、買って読みましょう

 本(書籍の)業界に今一番必要なのは、バクチ度を減らすことだと思う。返品と売れ損じと断裁を減らすのだ。もちろん、作った分だけ確実に売れる商売なんてあり得ないのだからある程度のバクチ度はあっていい。しかし現状はあまりに中途半端。
 たとえば、日販は返品を減らすために、新刊委託を大幅に減らしている。八百の希望に対して二百部へというように。だからポット出版では事前注文を新刊委託から外して注文で入れる(指定配本されないから)。日販にしたら翌月支払いになるし、新刊配本で送品した部数は過剰送品になってしまう。せめて配本リストをくれれば、日販の減数をみてから注文部数との差だけを入れるとかの工夫もできるが、そのリストは五千円。二百部くらい(平均二〇万円)しか仕入れてくれないのだから、五千円は出す気にならない。日販は返品を減らし、コストを落とし、全体のバクチ度を減らそうとしているんだとは思うが、ポットのように対応しているところが多いはずなので効果はないと思う。
 バクチ度を減らすために必要なのは、書店・取次・出版社が売行き・在庫などの情報を共有することだ。そのために、VANに替えてインターネットを使った電子情報交換システムを作る。インターネットのコストなら、小書店・小零細出版社でも導入できるから。
 これらは現状の委託制度を前提にしている。では、委託制度はどうなのか。
 僕は、本業界に委託は必要だと思っている。
 僕自身、書店であれこれ見て本を買うことが多い。本は現物を見てもらった方が買ってもらえる商品だと思う。そのために書店の店先に「見本」の本を置いておかなければならない。だから、そのリスク=売れ残りを書店にすべて負ってもらうわけにはいかない。申し訳ないし、一〜二冊売れるかも程度のポットの本(初版三千部程度)は、そもそも店先に置いてもらえなくなる。
 だから委託というシステムは、本業界、特に少部数の本業界に必要だと思う。
 さてしかし、あまりに野放図な返品は、運賃と手数を無駄使いしている。僕のようなお調子者は、好調な注文が来たら喜んで刷りすぎてしまう。だからいくらでも返品可能という委託システムは少し変えたい。
 第一に、一〇%とか二〇%引きで返品を受け取ることにする。このマイナス分を書店の負担、リスクにしてもらう。
 第二に、書店の取次への委託支払いを六カ月後にする。一部の版元には「条件払い」という委託の翌月に入金してもらう制度があるそうだが、うちなどは委託期間終了後に計算・支払い。ほぼ八カ月後の入金。それが委託と言うものだと思う。書店の翌月支払いはやめ、出版社の条件払いもなくすべきだ。
 第三に、正味を見直すべきだと思う。本を売る見極めをもっとやってもらうために、返品の「ペナルティ」とリスクを書店に負ってもらうのだから、正味は下げるべきだ。今の書店マージンは、いつでも返品可を前提にしたものだと思う。
 第四に、返品ペナルティのパーセントを高くする場合は時限再販、低い場合は再販のままにすべきだろう。
 こうしてバクチ度を減らしていければ、歩戻しや支払い保留は当然のごとくなくなると思う。ポットはこれらの中で、できるところからやりたいと考えている。誰か、実現のためのお知恵を貸してくれませんか。
沢辺均(ポット出版)

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