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[第2章●強靱なリファレンス環境の探求]
6… 旅のお供に百科事典
[2004.04.21登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

スノッブだとかなんだとかバカにされるかもしれませんが、私は百科事典が好きです。長い間、憧れを抱いていたんですね。同じ買うなら重厚長大。ちゃんとしたのが欲しいと、長いこと思っていました。しかし、書籍版は30万円超。この価格は20年以上変わりません。コメとか醤油に追われて、なかなか手が出なかった。

そこに現れたのがNEC版の平凡社世界大百科。1990年くらいだったと思います。26万くらいだったかなあ。これも激しく欲しかった。でもやっぱり高い。だいいちMacでは使えない。

1996年に、ソニーから小学館の日本大百科全書のデータディスクマンが発売されました。8.8万円。データディスクマン(ハードウエア)+日本百科大全書の電子ブック+図版集(書籍)のセットです。

その頃すでに電子辞書フリークであった私は、はげしくココロを揺すぶられました。なにしろ全26巻の百科事典が所有できる。たった8万円で。

しかし、パソコンで閲覧するならハードウエアはいらない。電子ブックだけでいいのです。そこで意を決して小学館に電話をしてみました。ハードウエアはいらない。電子ブックメディアだけのバージョンはないのでしょうか。と。

出てきた男性(けっこうたらい回しされたのですが)が
「あー、あれですか。あれはですねえ、百科事典が8.8万円で、ハードはオマケでついているんです。ま、サービスですね」
ぬかしやがったおっしゃったんですね。なにしろ紙版なら26巻、25万6000円のものですから。
その言い方に出版社の負け惜しみ矜持を感じて、それが購入動機になりました。ハードウエアはいらなかったんですけど。

こんな感じ。

データディスクマン・小学館日本大百科全書



買う前はイランイランと思っていたハードウエアですが、未経験ゆえの短慮でありました。いいんですわ。とくに旅のおともに。

このデータディスクマンは電池(単三4本)込みで520グラム。けっして「軽い」というわけではなく、ポケットに入るサイズでもないんですが、旅行バッグの中に入れることを躊躇するほどのものではありません。分厚めの文庫本相当ってトコでしょうか。

見知らぬ土地では、見知らぬ風景や事物に触れるからなのでしょうが、脳がはげしく活性化します。それが旅の効用のひとつでもあるのでしょう。好奇心アンテナが大きく開き、普段考えないようなことを思いついたり、見たものに対する興味関心が一気にわき上がってきたりします。

しかし、われわれは残念ながら森羅万象に対する正確で広範な知識を有しているわけじゃない。だから、せっかくの発想が「たぶんこういうことじゃないの」とつまんない方向に流れていく。でも、そこに百科事典があると、多少ではありますが、一歩踏み出せるんですよね。たとえば、海辺にカモメが飛んでいる。見ていると、どうも波打ち際に平行に飛ぶ。ううむ。打ち上げられたサカナとかの死骸を探しているんじゃない? 普通なら「かもね」で通り過ぎるだけなんですが、百科事典があれば、即座に検索。
おもに沿岸域に生息する全長25〜75センチほどの中形の鳥であり、海岸線で打ち上げられた動物の死体を食べ、海上に出て魚類をとらえる。また内陸で小哺乳類や昆虫類なども捕食する。他種だけでなく、同種の卵や雛を略奪して食べるなど、きわめて多種多様なものを餌とする。
旅先のちょっとしたカンサツに裏打ちが与えられる。いいでしょ、なかなか。

もちろん歴史的・人文的なことがらも得意。

今ならケータイでネット検索でもいいんでしょうが、こっちのほうがソクソク調べられます。

旅にでてまで百科事典なんてひきたくねーや、旅はノンビリするために行くんだい派の方々もいらっしゃりましょうが、だったら引かなかったらいいだけで、500グラムは余分に持ってもそう負担にはなりません。つまり、博識で無口な同行者との旅行ですね。

ディスクを取り出してデータをハードディスクにドラッグコピーすることで、他の辞書・辞典類と一緒に串刺し検索することも、もちろんできます。つまり平時は普通の事典として使い、でかけるときは最強のモバイル事典となる、というところがスゴかったんです。

図版は冊子体で提供された。これはなかなか重宝している



今の電子辞書の価格からすると(後述)、百科事典といえども9万円は高いのですが、これは完全にモトをとったなという感じ。

いまでもこの製品はあります。ただし、私の購入したバージョンではなく、カラー化され、図版も本体に収納されたものにパワーアップしました。実売7万円程度。

しかし、これはどうでしょうね。今となれば、少し高いかも。

最近、ソニーはメモリスティックで辞書を追加できるタイプの電子辞書を展開しています。(SONY 電子辞書)。価格は実売で2万円強。これの別売辞書(メモリスティック)として「日本大百科全書 NIPPONICA Lite Pack」があります。これは1.5万円くらいかな。これならずいぶん安くなる。その上、他の辞書も同時に使えるというメリットもあります。

ただしこのLite Packは文字通り、「要約版」であるところがひっかかります。説明文がかなり要約されているのです。これをどうみるか。スノッブですんで、私なら躊躇してしまう。

リナザウ(シャープのLinuxで動作するザウルス)で平凡社の世界大百科を読むってのはどうか、とか、ジャパンナレッジに会費(月額1500円ほど)を支払うってのはどうか、とか、オルタナな解決はいろいろありそうです。


というわけで、こののち、仕事場での電子辞書というテーマと並べて、同時に「どこでも百科事典」環境をどう構築するかということも考えていきたい、と思っています。

ただ、上記の通り、私自身は、そのニーズはとりあえず満足させており、個人的な体験はありません。なにとぞ、ご存じご体験のことを教示していただきたい、と。

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