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[第2章●強靱なリファレンス環境の探求] 10… 電子ブックで表記型検索を |
[2004.05.20登録] |
石田豊 |
電子ブックとEPWINGの違いはいろいろあるが、ユーザにとって、もっとも大きい差異は「表記型検索が可能かどうか」でしょう。 日本語で引く辞書は「よみ」で検索します。たとえば「おおさか」で「大阪」を、「こうじょう」で「厚情」や「工場」を引くわけです。 紙の辞書では当たり前の伝統ですが、この方法は「読めないと引けない」という致命的な欠点があります。われわれは(っても、ぼくだけかなあ)は、従来、この欠点を欠点としてちゃんと捉えてはいませんでした。ま、こんなもんかなあと見過ごしていたフシがある。電子辞書やインターネットの充実ではじめてこの不具合が意識されたってことでしょう。 「匝線」「美人局」「陳者」なんてのは、読めなきゃ意味もわからない(し、読める人は意味もなんとなくわかっている)。これら「読めない語」を引く方法がいままではなかった。漢和辞典でも解決しがたいでしょう。漢和辞典で「美」をひいても「美人局」は載っていないですし。 EPWINGでは「つつもたせ」ではなく「美人局」で引くことができます。これを「表記型検索」と言います。国語・百科系の辞書では表記型検索が可能かどうかが、おおきな効果の違いをもたらすことはいうまでもありません。 ひとつは、読みがわからない語を調べることができるからであり、もうひとつは、ソース(メールやWebページなど)から検索欄へのカット&ペーストが可能になるからです。 EPWINGはもちろん表記型検索だけではなく、読みによる検索も可能です。電子ブックは、その出自ゆえ、表記型検索はできないのが原則です。つまり電子ブックリーダーにはかな漢字変換機能が搭載されていないため、あえてこういう仕様だったんですかね。しかし、今は電子ブックのディスクを取り出してパソコンにコピーして使うのが主流の使い方。そうなってくると、表記型検索ができないのはEPWINGに比べると、致命的な欠点になってしまう。 しかし、前回紹介したEBStudioの作者がここでもすばらしいツールを提供してくださっています。「電子ブック漢字インデクサ」。 電子ブックのデータに表記型検索のためのインデックスを付加するためのツールです。しかもフリー。 前にも書いたように、同じタイトルで電子ブック版とEPWING版が存在する場合は、電子ブック版の方が安いのですが、これさえあれば、実質的には両者の差はほぼなくなってしまう。ま、図版やらマルチメディアデータはEPWINGの方が多いのですが、そんなもん、気にしない。あんまり重要じゃないです。 余談ですが、日本の電子辞書の「図版」ってやつは、歴史がないせいもあるんでしょうが、どうもいただけない。たんなる「図」でしかないのです。もうちょっと「辞書的な図」にしてもらわれへんやろか、とつねづね考えとります。タンポポの花の写真があっても、イメージにしか過ぎないやないですか。同じ図版を載せるなら、たとえば西洋タンポポと在来種はここがこう違いまんねん、っていうような図が欲しいんです。なんとか考えといてもらえへんかなあ、と。 同じタイトルで両方のフォーマットがあるばあいは、ためらわず電子ブック版を買い、「電子ブック漢字インデクサ」でちゃっちゃと表記型検索対応に加工してしまう。 これが倹約のウラワザってんでしょうかね。 |
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