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[第2章●強靱なリファレンス環境の探求]
4… 電子辞書のすすめ
[2004.04.07登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

何か調べものをする際、つまり何事かの事柄を知りたくなった時、私はググるまえにとりあえず辞書・事典を引きます。私のコンピュータにはいくつかの辞書・事典がインストールされているからです。

もちろんコトの内容によっては最初っからググります。まさかシャープの太陽電池の値段が知りたいときに事典をひいたりはしません。載ってませんからね。池内亜美ってダレやねんという場合も同じく。

しかし逆に、辞書・事典だけですんでしまう探索もまた少なくありません。シェークスピアと近松門左衛門、どっちが年上なんてのは、辞書だけで完結してしまう。

辞書・事典だけではダメだし、Googleだけでもだめ。もちろんその両者だけでも時としてアカンのではありますが、コンピュータで引ける辞書・事典類は調べものには欠かせない道具であるのは間違いありません。私は、毎日30回くらいは引いてます。辞書検索ソフトは、ブラウザ、メーラ、エディタに次いで(もしくはそれ以上に)頻繁に使用しているソフトです。

コンピュータで引ける辞書・事典(これを以下電子辞書といいますが)はいいぜ、必携だぜ、極楽でっせと、折に触れ吹きまくっているのですが、なかなか人は折伏されません。悔しいです。情けないです。無念です。残念です。

「あー、電子辞書ね。持っているけど、ほとんど使わないね」

なんてことを言う人もいます。聞いてみるとエンカルタ(マイクロソフトの百科事典)と大辞林を持っている。でも、ほとんど使わない。だって面倒くさいもん。

うーむ、それはわかる。そうだったら私もきっと面倒くさくてわざわざとりたてて使うということはないかもしれません。

たぶん、電子辞書が爆発的な効力を持つには、ある種のしきい値があるのかも。いくつかの信頼できる辞書があり、かつ、それらの辞書が同じ検索ソフトでいちどに「串刺し検索」ができる。そうなったときに、あなたの知的生活(ヤなコトバではありますが)が革命的に変わっちゃうのですね。

たとえばあなたはコンピュータ言語のなにかに関する原稿を書いていて、「関数」の説明を書かなきゃならない場面に遭遇した、と。カンスーってのは中学高校から聞き慣れているコトバなんだけど、コンピュータ屋になってからのそれと、受験時代に慣れ親しんでいたそのコトバの広がりとの間に、えらくちがう印象を持っている、と。

コンピュータよりに記述するなら、以下のような文章が考えられます。

書いた手紙があるとして、それを誰かに郵送するためには、手紙を封筒に入れて、宛名を書き、その重さに応じた切手を貼り、ポストに投函しなければなりません。手紙の内容はいつも異なっているかもしれませんが、封筒に入れる→ポストに投函する、までの手続きはいかなる場合でも同じです。プログラムでも同じで、個々の「やりたい」ことのなかには、いつも「同じ手順」が含まれます。この「いつも同じ手順」を「既製品化」したものが「関数」です。関数は「数」という文字を含むため、また数学かよ、とアレルギー的反応を起こす人も多いのですが、英語で言えばfunction。「数」なんて訳語をいったいどこのどいつがつけたのでしょうね。数学とはまったく関係がありません。自動販売機のように、何かを入れれば、それに対して一連の処理をしてポコンと加工して出してくれるのが「関数」なのです。関数にはシステムがあらかじめ用意しているものと、自分で必要に応じて定義するもの(ユーザ関数)があります。


勢いで書いてしまったアナタは反省もしますよね。「自動販売機のように」以下の文章はなにも関数だけにあてはまることじゃない(これはコンピュータ屋的な疑問)。そもそも、羊毛を入れればセーターが出てくるという自動変換装置的なものは、受験期に親しんだ「関数」と同じではない(これは元受験生的な疑念)。

そこで、辞書検索ソフト。

私の現在、ふつーに使っている「コンピュータにインストールされている辞書・事典」は、いくつかの英和・和英辞典、2種の大型国語事典、2種の百科事典、現代用語事典、そして専門事典(この場合は岩波理化学事典)なのですが、「関数」でひくと44の結果が出る。

辞書ソフトでの検索結果


そのあれこれを読んでいくうちに、徐々に関数ってもんの意味が立ち現れてくる。

平凡社の世界百科大事典には、
例えば,半径 r の円の面積を S とすると,S=πr2という関係があり,r の値を定めると,それに対応して S の値が定まる。このように,ある範囲にわたって変化する量 x のおのおのの値に対して,別のある量 y の値を対応させる規則が定められているとき,y は x の関数であるという。またその対応規則のことを関数と呼び


なんてことが書いてあるし、小学館の日本大百科全書には、
たとえば、1個a円のりんごx個の値段をy円とすれば、y=axであり、この式によってyはxの関数として定められる。また郵便料金の場合、xグラムの書状の料金をy円とすれば、yをxについての一つの式だけで表すことはできない。しかし各xに対してyの値はただ一つ決まるからyはxの関数である。この二つの例をみると、第一の例では、変数xは1個、2個、3個……というように整数値、つまり、ばらばらな値(離散的という)しかとらない。第二の例では、xの値は整数値とは限らない(つまり、連続的な値をとる)。また、どちらの例でもxの値についてはその大きさについて常識的な限度を設けて考えるのが普通である。このように、日常の事例に関連する数理としては、変数xのとりうる値の範囲については漠然とした約束があるが、それだけでは数学の対象とはなりえないので、変数xがとることのできる値の範囲を決める。これを関数の定義域といい、関数のとる値全体の集合を値域という。

とある。広辞苑には、
〕(function) 数の集合Aから数の集合Bへの写像 y=f(x) のこと。xを独立変数、yを従属変数という。Aが複素数の集合ならば、特にfを複素変数関数という。Aとして2次元空間、3次元空間、…の部分集合をとる時は、2変数関数、3変数関数、…(総称して多変数関数)という。函数。

なんていうワケにわからんことが書いてあって、大辞林、
〔数〕〔function〕二つの変数x・yの間に、ある対応関係があって、xの値が定まるとそれに対応してyの値が従属的に定まる時の対応関係。また、yのxに対する称。この時xは単に変数または独立変数と呼ばれる。yがxの関数であることをy=f(x)などと表す。ふつう関数といえば、xの値に対してyの値が一つ定まるもの、すなわち一価関数をさす。従属変数。

とこれまたワケわからんことが書いてある。岩波理化学事典はもってのほか。で、現代用語の基礎知識には、
自然や社会は常に変化し続けるが、これを数学的にとらえようとするものが関数である。しかし、紀元前四世紀頃ギリシャではソフィストたちが種々のパラドクスを提示し、とりわけ『ツェノンの逆説』(→別項)は運動、連続、無限などから派生する矛盾を数学の世界に投げかけた。その結果、数学では動くものを避け、静的なものだけを研究対象とした。人類が一七世紀の躍動する社会を迎えたとき、数学界も微分・積分学を誕生させ、関数が代数、幾何に次ぐ数学の大きな柱となった。関数とは、二つの変数x、yの間にある対応関係があり、xの値が定まるとそれに対応してyの値が一つ定まるときxとyは関数関係にあるという。
〔参考〕→ 関数の語源は、中国にfunctionが輸入されたとき、その音と意味から函数(ファンスウ)を当てた。これが日本に伝えられたときそのまま函数を用いたが、戦後の教育漢字制限によって関数の語にかえた。

なんて記述があって、だんだんに「関数」ってのがわかってくる。

そこで、あなたは先の原稿を書き直すことになる。
書いた手紙があるとして、それを誰かに郵送するためには、手紙を封筒に入れて、宛名を書き、その重さに応じた切手を貼り、ポストに投函しなければなりません。手紙の内容はいつも異なっているかもしれませんが、封筒に入れる→ポストに投函する、までの手続きはいかなる場合でも同じです。プログラムでも同じで、個々の「やりたい」ことのなかには、いつも「同じ手順」が含まれます。この「いつも同じ手順」を「既製品化」したものが「関数」です。関数は「数」という文字を含むため、また数学かよ、とアレルギー的反応を起こす人も多いのですが、英語で言えばfunction。「数」なんて訳語をいったいどこのどいつがつけたのでしょうね。functionをシャレで函数(中国読みでファンスー)と訳したのがそのまま日本に移入されただけです。数学はとりあえず関係ないと考えていただいてけっこうです。自動販売機のように、何かを入れれば、それに対して一連の処理をしてたったひとつの結果をポコンと加工して出してくれるのが「関数」なのです。関数にはシステムがあらかじめ用意しているものと、自分で必要に応じて定義するもの(ユーザ関数)があります。


まだまだ不満はあるものの、とりあえず、次のセンテンスに進めます。

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ニイヤマさんより
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[2004-10-12]

買いました

ここを見て、平凡社の百科事典を買いました。快適です!!!

ありがとうございました。

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