2005-12-01

いただいたご本『美人とは何か?』

__________.jpg「美意識過剰スパイラル」という副題の本書は、人気作家、中村うさぎさんの最新エッセイ集。旧知の担当編集者が送ってくれた。どうもありがとう。伏見自身は以前、中村さんに『変態入門』(ちくま文庫)の解説を書いていただいたことがあったが、直接の面識はないのだが(何年か前の東京レズビアン&ゲイパレードで、出発前、先頭の横断幕の真ん中を岩井志麻子さんと中村さんの二人が陣取っていたので、「実行委員長に場所ゆずって」とおせっかいを言ったことがあったが……)。

この本は一言で言えば美醜論ということか。伏見はこのテーマ、すごく興味あり! 中村さんの分析力は、そこらの学者よりも数段上だから、大いに期待してしまう。

少し前、「週刊文春」の彼女の連載エッセイを読んでいたら、エスムラルダが「クィア・ジャパン VOL.3—魅惑のブス」(勁草書房)で書いた「私のブス人生」とよく似た文章が出てきて、うさぎさん、盗作とは言わないけど、こういうご商売でいいのかしらん? と思ったことがあった。だから、本書の座談のゲストにエスムラルダが招かれていることに妙に納得。きっと中村さんはエスムのファンで、無意識のうちに影響を受けていたのだろう。

まだ本論のほうは拝読していないのだが、中村うさぎ、マツコ・デラックス、エスムラルダの三人による座談「『ブス』から脱却せよ!」をとりあえず読んだ。それぞれ魅力的な人たちで、爆笑発言が連発なのだが、どうもシンクロ率が低い。こういう強烈キャラを集めた座談を上手く成功させるには、触媒の役割を負う人がいないと駄目なんだよね。みんな自分を押し出そうと必死になるから(笑)、全体として道筋がつかなくなる。

エスムは、年齢を重ねたことで美醜の価値観から解かれ、他の価値観で自他を見られるようになってきたという旨の発言をしていた。男はいればいたでいいし、いなきゃいないでいい、みたいなこと。諦観か。ただ、本当の解脱ならいいけど、理念なら毒が溜まる。まだ若いのだからもう少し煩悩の世界で毒を吐いておかないと、厄年あたりに、自分の猛毒で自家中毒になるよ!(←エスム調で)

自分が見る側に立って、相手を観察することで、アドヴァンテージを獲ることはできる。知っている、ということは支配にもなる。けれど、「目」になることを徹底すると、ただ「目」として生きたナンシー関の後を追うしかないだろう。それはそれで苦行の人生だ。

●中村うさぎ著『美人とは何か?』(文芸社)1200円+税