2012-09-24

水曜限定バー、エフメゾについて

メゾフォルテの休店日(水曜)を、伏見憲明が借りて営業しているのがエフメゾです。ゲイバーなのでゲイ中心主義ですが(笑)、ゲイ以外の性的少数者にも、異性愛者にも開かれたバーでもあります。ただし、「ブス!」とか「淫乱!」とかママに罵倒?されても、そういうゲイバーのノリを楽しめる方のみ入店をお願いしております。実際の客層は、ゲイが半分、あとの半分を女性やノンケ男子などが占めている感じです。

営業時間は19:00−04:00。ママの体調いかんでは早く店じまいすることもあります。ドリンクの他に、おでんや、ママが朝からぐつぐつ煮込んでいる名物「男ができるカレー」が用意されていて、食べると幸せになれます(たぶん、笑)。常連の学生さんには飲み放題コースも!

エフメゾは水曜限定ですが、バー内部活?というのがあって、「読書部」ほかの活動で週末などにお客様が集まる機会があります。ときにはみんなで合宿をしたり、出かけたりもします。読書部は担当者が指定した本をみんなで読んできて、あーだこーだ話し合う場です。あと、ドラクエ部や煩悶部なども?

住所:新宿区新宿2−14−16 タラクビル2F メゾフォルテ
*電話での場所のお問い合わせには応えるのが難しいので、ネット検索などで調べてお越しいただければと思います!

● 伏見ママがエフメゾについて書いたエッセイは→こちら

● 週1で発行している無料メルマガを配信希望の方は、yahoo.co.jpの前に、gaybarfushimiを置いたアドレスに簡単な自己紹介を記してお申し込みください。これまでのバックナンバーのダイジェスト版は以下に。

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メルマガ「エフメゾ!」 特別号 ベストセレクション!

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発行人/伏見憲明    購読料/無料

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相変わらず蒸し暑い毎日が続いておりますが、皆様、週末はいかがお過しですか? 

今回は夏休み特別号として、これまでのメルマガのなかからとりわけ面白い原稿をセレクトしてお届けしたいと思います。これもあれも捨て難い、という感じで選んでいたら、かなりの分量になってしまい、もしかしたら、携帯アドレスでご登録の方の場合、途中で途切れてしまうかもしれません。すべて読みたいというご要望があれば、パソコンのアドレスでの再送をお申し出いただければ。

それから、先日、エフメゾで催した『百年の憂鬱』刊行記念トークのテキストがサイトにアップされました。ゲストの中村うさぎさんのおかげで、こちらは伏見の近年の仕事のなかでもっとも内容の濃い対談となりました。自信を持って、読んでいただけたら!と宣伝いたします。
→ http://www.pot.co.jp/news/20120817_144132493929840.html

では、エフメゾの言葉の世界をお楽しみください。てか、これら、ほんとに店の集客につながるのでしょーか!?w ←寄稿者に失礼

伏見憲明

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チーママ、ツカーサのコラム 「一本、三千円!?」 第4回

まだ高専の学生だった頃、暇と、性欲がたぎるあまりに昼間から出会い系掲示板をチェックしていると、「新宿の○○ホテルで乱交しようぜ!」というタイトルが目に付きました。すぐさま主催者にメールを出し、家のトイレに備え付けてあるシャワートイレでケツを洗いながら返事が来るのを待ちます。十分くらいして場所を告げるメールが届くと、すぐにパンツを履いて出かけました。

指示されたホテルの部屋に着くと、すでに数人の男たちがまぐわっていて、汗と精液の臭いがむわっと充満していました。主催者に会費として三千円払うと、
「じゃあ、頑張ってね。今日はタチが多いから廻されちゃいな☆」
とオネエ口調で応援されました。

ワクワクしながら服を脱いで乱交の輪に混じると、両手にチンコ、口にチンコ、ケツにチンコとそこは天国でした! バックから犯されていると別の男からチンコを咥えさせられたり、熱い汁をぶっかけられたりとみんなノリがよく、二時間も頑張りました。

一度シャワーを借りて休憩することにしました。お腹が空いたので、用意されていた菓子パンをつまみながら辺りを眺めます。すると、冴えない感じがするおじさんが周囲から邪険に扱われているのが目に入りました。彼が隅っこに移動してうなだれているところを見ていたら、ふいにぼくが小学生だった頃を思い出しました。体育の授業で二人組みになってストレッチをすることがよくあり、誰かと組もうとお願いしても邪魔者扱いされて、先生しか相手をしてくれなかった自分。昔の苦い記憶がよみがえって、なんだかおじさんのことが他人事だとは思えませんでした。

座っていたソファを立つとおじさんのチンコをむんずと掴みます。驚いた顔をしていましたが、勃起していたのでまんざらでもない様子。すぐにゴムをかぶせてから、ねっとりとしゃぶりました。いまさら尻の穴をほぐす必要はないので、おじさんの肩に手をかけると上から乗りました。ぐちゃぐちゃと音を立てながら大きな声で喘ぎます。周りにアピールしたつもりでしたが、誰も寄ってきてくれません。しかも、おじさんはじいっとこちらを見るばかりで、すぐに小声で「イクっ」と言うとブルブル震えました。思ったよりも早く終わってしまい、彼のチンコをずるっと引き抜いてから、尻に塗りたくったローションを流しにいきました。

部屋に戻るとすでに着替えていたおじさんがぐぐっと近づいてきました。
「これ、良かったら」
と小声でぼそぼそ言いながら紙袋を突き出してきたのです。とりあえず受け取ると、彼はそのまま帰ってしまいました。中身を確認するとアドレスが書かれたメモ用紙と、らっきょ漬けのビンが入っていました。ほかほかの白米とよく合いそうで、帰宅して夕飯の支度をすることにしました。主催者に帰ることを告げると、
「あら残念。また来てね☆」
とオネエ言葉で見送ってくれました。

ホテルを出た後、急いで駅に向かう途中、チンコの握りすぎで握力がなくなっていて、気を抜いた拍子に袋を落としてしまいました。ガシャン!と嫌な音を立てた後、袋から汁が出てきました。持ち上げて中身を確認すると、ガラスとらっきょでぐちゃぐちゃになり、おじさんのアドレスが書かれたメモ用紙もにじんで読めなくなってしまいました。

食べ物を粗末にしたことが情けなくて、ぼくは思わず涙ぐみました。

● 伏見ママからのコメント
ツカーサは伝説の(阿佐ヶ谷限定)GOGOボーイでありますが、この連載ではもしかしたら天才随筆家ではないかと(一部で)評判になったほどでした。エロいんだけど、どこかさびしげで、切ないテイストが読み手の心を打つ文章です。すでにエフメゾのチーママは引退し他店に移籍しましたが、セックスファイターとしてだけではなく、書き手としてももっとヤッてほしいと願う伏見ママです。

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バイト、デヴィのコラム 
「ママは湯婆婆?」第3回

こんにちは、デヴィです。実家住まいの私、家族にはゲイであることを隠して過ごしています。そんな家族内のバランスは簡単なことで崩れてしまうのですね。

私は気が向いたときに、実家の自室にてMサイズのディルドを使用してケツの特訓をしています。使用後はシャワーを浴びるついでに風呂場で洗い、ひっそりと自室へと持ち帰ります。しかし、ある日私はディルドを風呂場の鏡の前に放置してしまったのです! 翌日、何事も無かったかのように風呂場からディルドを救出するも、特に両親から突っ込まれることもなかったので、ひとまず安心していました。

その三日後、なぜか姉から突然メールが…。
「あんた、変なモノを風呂場に置いておいたんだってね。パパとママにあやしまれてるよ~」
「なんのはなし?」私はなんとかはぐらかそうとするものの。
「ディルドのことよ!あんたがゲイかもしれないってカンカンなんだから~!」
「なんだってえええ!」
やっぱりディルドを置きっぱなしにしてたのはまずかった!その後すみやかに伏見ママに相談した結果、姉にだけはカミングアウトをして味方になってもらうことにしました。

そして恐怖の家族会議の日を迎えました。
「風呂場にあった、あの…シリコンのアレは…何だ」
円形のテーブル家族で囲み、向かいに座る父が冷静に会議を始めます。
「アレは、絵の資料でございます」絵描きのはしくれの私としても、なんと苦しい言い訳!
「アレで遊んでるんじゃないでしょうね?!」隣に座る母は少々ヒステリー気味です。
「ちがいます、本当なんです。絵の資料なんです!」
「なぜ風呂場にあったのかね?」父が的確な質問をします。
「それは……ホコリを流すためです」
「ほんとうだな?」「ほんとうね?」
父と母がとてつもない疑い目を向けてきます。私は負けませんでした。
「本当です。絵の資料です!」
「ほら、デヴィもそう言ってることだし~、大した事じゃないよ~」
ありがとう、お姉ちゃん!
「ふむ、真面目に大学生活を送っているのか?」
「はい、しっかりと単位はとっています」
あれ?ゲイかどうかよりも、まじめな学生生活を送っているかどうかに論点が移っているッ!
「まあ、とにかく、ちゃんとした生活をしなさい」

こうして、父のため息と共に苦しかった家族会議は終わり、しばらくは朝帰りを自粛し、真面目さをアピールすることになりました。

「へー、大変だったね」
その後エフメゾに行った時、ツカーサ先輩が慰めてくれました。
「デヴィちゃん、最近頑張ってるから僕達からプレゼントだよ!」
なんと、ツカーサ先輩とサム先輩からプレゼントがあるというのです。
「え、ホントですか?!うれしいです」
実家では大変な目にあったけど(自業自得)先輩からプレゼントなんてうれしいなー、なんて思っていると。
「はいこれ」と、ツカーサ先輩から渡されたのは、Lサイズのでっかいディルド。え…?頑張ってるってケツの開発のこと?!確かに頑張ってたからこんな事態に陥ったんですけどォ!!
「……あ、ありがとうございます」
一応受け取ったはいいものの、こんなでかいディルド、実家に置いておいたらもっと大変なことになっちゃうよー?!とはいえ、先輩からの心のこもったプレゼント、無碍にしては申し訳ない……いや、いらねーよ!!

● 伏見ママからのコメント
デヴィちゃんは元学生バイトで、いまは千葉の片田舎で元気に社会人をしている髭ガール。多忙な中、時々「上京」しては手作りのケーキをエフメゾで振る舞ってくれる、人気者です。会う度ごとに大人への階段を上っている様子で、たまに修羅場っている横顔がママにはとても微笑ましいの(笑)。

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伏見ママの巻頭エッセイ

日曜日、お客様の結婚式に明治神宮文化館まで出かけてまいりました。先週号でも記しましたが、エフメゾで「この淫乱女とやっちゃっていいから!」と伏見ママがむりくりくっつけたことがきっかけで付き合うようになった男女のカップルの挙式。という責任もあって、人生でほぼ初になる友人の結婚披露宴というやつに出席したわけです。

伏見は、そうでなくても背広とかネクタイを身につけると、それだけで借りて来た猫というか、動きがロボットみたくなって、毒キャラが封印されてしまうのですが、血縁ファミリーの醸し出すフォーマルな雰囲気に酸欠になりそうな緊張でした。その上、隣の席の、乾杯のご挨拶をするはずのうさぎ婆さんが遅刻するという大失態で(タクシーに間違って明治記念館のほうに拉致られたそうな)、あやうく代役を押し付けられるところでオーマイガー!

しかし、それは、額に汗を浮かべた婆さん登場でギリギリ回避できたのですが、司会のねーちゃんが新郎新婦の入場のときに、「花嫁の無垢な…」と言った途端、その「無垢」という言葉に、新婦の激ヤバな来歴が頭に吹き出して、声は出なかったけど背中がひさすら震えてしまった伏見です。

でも、披露宴はとてもなごやかなもので、新郎新婦はほんとキレイだった(新郎はイケメン、そして巨根という風評なので股間ばかり観てしまった)。両家とも愛情深いご家庭の様子が伝わってくるいい雰囲気でした。祝辞は、新婦側は会社の上司が「彼女は仕事ができます」と”できる女アピール”をしたのに対し、新郎側は友人代表が「カラオケを歌うときはラップを歌います」など人柄がセールスポイントだったのがw、古式ゆかしいながらも、なんともフェミニズムな時代を感じさせました。伏見的には、新郎側の友人たち、田舎の消防団仲間の男子たちの、ドレミの歌に合わせてひたすら酒を飲むという芸のノンケっぷりに、ふだんまったく観ることのできないホモソーシャルな文化を堪能できて、「うーん、松田聖子のディナーショーより来た甲斐があったかも!」 

消防団仲間からのプレゼントが新鮮でした。きっと地方の結婚式ではいまでもありえていそうな、「無垢な花嫁」にちょっとセクハラして笑いを取るという意図の、「岡本理研のコンドーム一箱」の贈呈というのが、微笑ましかったわ~。まあ、ふつうは、そこで花嫁は顔を赤らめたり逸らしたりして、男たちがヤンヤと盛り上がるわけですが、なにせこの花嫁の下半身はそんな生半なものではありません。堂に入った表情で、「あら、かわいいお品ね」みたいに微笑み返すだけ。すかさず、伏見の隣に座っていた腹黒いオカマが「バカな女ね、あそこは恥じらわなければならないところなのに」

先週号では、最低3万円のご祝儀なんて高いーー!!とセコいことを言っていた伏見ですが、初体験だったこともあり、けっこうな充実を得られました。パチンコで無駄金使うよりよほど社会貢献(未来の社会資本への投資)にもなったし。引き出物を持って家に帰ると、そういうものを品評するのが大好きな老母が(ほら、おばさんたちって、他人の結婚式に向ける目が批評的で、容赦ないじゃない?)、当日の食事の内容や、出席者のテーブル案内などを目を皿のようにして検討し、引き出物のチェックに余念がない。しばらくして、老母は伏見のほうを振り返りました。「あんた、これ、3万円しか持っていかなかったのなら、失礼だったかもしれないよ」 

そうなんだ! いや、たしかに食事もけっこう美味しかったし、大喰らいの伏見ですら食べきれないほど量もあった(披露宴の料理なんて見栄ばかりで満腹にならないって聞いていたのに)。「引き出物も、つまらない置物なんか一つもらうより、こうした食べ物の詰め合わせのほうがいいしね」と意地汚い老母はえらく満足げ。そして、夜遅くまで、こちらで選ぶプレゼントのカタログを「どれにしようかなあ」と虫眼鏡でめくりながら楽しんでおりました。やっぱセコいのは親の血ね!

まじめな話、結婚式もいいものですね。伏見はガキだった頃、結婚制度反対!なんて叫んでいるフェミニストだったのですが、歳とともにそれが違うと思い始め、先日は、人生には結婚という節目でリセットすることも大事かもしれない、とも思いました。平均寿命が男子でも70代半ばになっていいる長寿時代、途中、なんどか生まれ変わらないとやっていられないかもしれません。結婚をしない人たちも、なにかこう人生の節目を演出するイベントを意図的に作っていく必要があるのではないかと思いました。大晦日とお正月で毎年生まれ変わるようにね。

● プロの物書きとは思えない投げやりな文章っすね!(反省)

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お客様のリレーエッセイ その7
hinaさん(女王様)

こんにちは、hinaと申します。SM嬢を生業として早15年の中年SM女王です。わたしが伏見ママの著作と出会ったのは、まだ学生の頃、SMなんて言葉だけしか知らない頃でした。それから10数年後、「責めのバリエーションも尽きてきたし、ゲイSMからアイディア貰えないかしら…」とゲイ関連の検索をしていたはずが、気づけばメルマガ読者募集に応募し、オフ会に参加し、エフメゾの常連となっていたのですから、ママの吸引力はスゴイものがあります。

それはさておき。大人同士が知り合ったとき、「お仕事何してるんですか?」という質問って
普通に出ますよね。これが苦手なんです。世間一般の「SMの女王様」のイメージ(迫力ある美貌とも金持奴隷とも無縁です)とは似ても似つかないせいか、やたらと驚かれるのも困るし、ただの世間話だった場の空気が変わってしまうのも申し訳ない。そんなわけで、人との出会いに消極的になっていました。

ところが、エフメゾは「隠してるわけではないけど毎回語るのは面倒」「むしろ語りたい」なネタを抱えてる人ばかり。会話の中身も、役に立たないエロから真面目な政治談議まで百花繚乱 —というか狂乱?というカオスっぷりで、その場には「各人が適度に流しつつ適度に突っ込む」という、絶妙なバランスが成立しています。そんな空間では、SMが職業なんて、小ネタの1つでしかありません。有難いことです。

それはまるでママお手製のおでんのよう。各種のおでん種をグツグツ煮込んでる、あの汁が伏見ママです。煮られてる具材はエフメゾを訪れた人々で。他所では居場所のないチクワ麩も、何処でも平然としてる玉子も同じように「おでん」になってくように、どうぞ一緒に煮込まれてしまいましょう。

● 伏見ママからのコメント
エフメゾの最古参の常連にして、多彩な才能を持った女王様の推薦文です。エフメゾの空気をよく掬っていて、ご来店を躊躇している向きにはぜひ読んでいただきたい一文です。

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「べこの霊界通信」その壱

                     べこさん(エフメゾいち不幸な女)

 エフメゾのメルマガ会員の皆様、お久しぶりです。今回が初投稿の「べこの霊界通信」、お待たせいたしました。前回の記事より数々のオファーをいただいていたのですが、エフメゾに通いながらも、私自身文章を書くことがあまり好きではないため及び腰でした。でも皆さんのあまりの熱意におされ、また冷静に考えてみたら、この通信は「私自信」ではなく、「私の体を借りて自動書記で書くんだったわ!」と気づきまして、初投稿の運びになりました。楽しみにされていた皆さま、自動書記ゆえ不定期になることはご承知の上、マイペースな「べこの霊界通信」を楽しんでいただけたらと思います。

 さて、あいさつはこのくらいにいたしまして本題に入ろうとおもいます。前回の投稿でも書きました通り、幼少時代から「every day、水垢離」でありましたが、もちろんこういった「みずごり系」の類は単品ではなく、他にも色々なオプションがつくのが基本でして、子供が行きたがるテーマパークに代替して様々な「パワースポット?!」に行くことになります。その中でも印象に残っておりますエピソードの一つを書こうと思います。

 修行の中でも今回の話は、なんと云いますか、「出たモン勝ち」、と言うか、「浮いたモン勝ち」?! 娑婆の皆さまに分かりやすく言うと要は、「エクソシスターになったもん勝ち」なのです。具体的に言えば、お祓いをした際にいきなりキツネになったりとか、自身に色々と憑いているものが出てくるというか。それでその出てきたものと対話をして、あの世に帰ってもらう、本人からすれば穢れを落とす趣旨の修験です。小学生だった私は意義がさっぱり分からず仕舞いで、そこに行けば偉そうな感じのオヤジが念じてくれるのですが、加齢臭テイストな息が臭くて集中できず、ついぞ対話できることはありませんでしたが……(私自身が憑きものかもしれませんが)。

 惰性で通っているうちに同級生のお友達のお母さんが通っていることが分かりました。最初はかなりびっくり、いやかなり気まずくて、他人のふりをしようと思いましたが、ド田舎ですのでまったくもって無理でした。大都会にある新宿24会館のように暗がりで人の出入りが大量にあれば大丈夫だと思いますがそうはいきません。しかし、不思議なもので、お互いを認知しあうと急速におばさんと私の間に共通の秘密のような妙な連帯感が生じました。少し話していくと、どうやらおばさん、肩が大変重い様子。(わざわざここに来なくても早く病院に行けばいいのに…と思いましたが、まあそういう考えは通じないのでここに来てるんですよね…)

 そんなこんなで修験が始まり、おばさんは隣で偉い人から呪術を唱えられ、私は私でいつものように加齢臭を気にしながらも同じことをされていました。しばらくすると、隣から「ううううぅ~」という低い呻き声が聞こえたので声の方を向くと、先程まで朗らかに世間話をしていたおばさんが天に向けて両手を合わせ、くねくねと悶絶し始めました。そして、「え?!」と思うか思わないかの瞬間、白目を剥きひれ伏してくねくねと蛇、いや、あの体脂肪40%越えの巨体を「つちのこ」のように這わせながら部屋を出て行ってしまいました。
「ゆき子ちゃんのおかあさん……」
と唖然とする私を置いて、
「さとうさぁぁん!待ってぇ~待ちなさぁぁぁぁいぃぃ!!!!!」
と必死に後を追うおばちゃん達……。阿鼻叫喚さながらな雰囲気。
(おばちゃん達、「さとうさん」じゃないよ。「蛇」だよ。いまは。教義的に。)と冷静に思いながら、私も後から追いかけると、おばさんはくねくねと階段を降りた後に、玄関で使い古した便所スリッパに履き替え、
「きしゃーーーー!!!ケケケケケェェェェ!!!!!」
と奇声を上げ、あの巨体からは想像もつかない猛烈なダッシュでド田舎の茶畑に消えて行きました。どぼん。

その3時間後、近所の空き地で放心状態になっていたおばさんが見つかったそうです。偉いおじさんからは「一つ取れましたね」と褒められていましたが、あれがゆき子ちゃんのおかあさんなのか……と子供ながらに泣きそうになりながら、「人間って色々な顔があるなぁ」と歪んだ価値観を一つ身につけてしまいました。ある意味、社会勉強。

● 伏見ママからのコメント
昨年彗星のごとく現れた霊界からの使者。べこちゃんが店内にいてくれると、どんなに不幸なお客様でも「あぁ、自分の人生のほうがまだましだ」と思っていただけるので、店の精神衛生上ありがたい存在なのです(←ひどい)。

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不定期連載コラム「ヒントンを忘れないで!!」

第1回「少年ヒントンの夕食」

小学校低学年くらいの頃、母はあまり夕飯をつくることがなかった。昼はバイオリンを練習し、夜はミュージカルで演奏をする仕事をしていたので、時間がなかったのだろう。父も似たような仕事をしていたので、夕方以降は家にはぼくと姉だけになっていることがほとんどだった。

たいていの日は、学校を終えて家に帰ると、ダイニングテーブルの上にスーパーで買った出来合いの料理が置いてあり、母が仕事に出た後に自分のお腹がすいたタイミングで食べていた。姉とはすこし歳が離れていたからかあまり気が合わず、一緒に居たくなかったので、いつも食べ物を自分の部屋までもっていって、漫画なんかを読みながら一人で食べていた。

友人たちの家庭がしていたような、家族でテーブルを囲んで夕飯を食べるということはぼくにとっては日常ではなく、イベントのようなものだった。学校(日本人学校)の友達は駐在員の子供が多く一般的な日本人家庭だったので、彼らの家に行く度、お母さんが毎晩料理をしてくれることや、話をしたり甘えたりできる親が家に居ることをうらやましく思っていた。

しかし母も、一ヶ月に数日ほどは、夜のショーを休んでぼくと姉と過ごす時間をつくってくれていた。父も合わせて夜の仕事を休んでいた。母が仕事を休む日は、学校でも気持ちが弾んだ。

当時、学校の送り迎えは両親が車でしてくれていたのだが、夜のミュージカルを休む日は行きか帰りの車の中で母に夕飯のリクエストを訊かれた。自分の食べたい物がつくりたてで食べられるのが嬉しかった。

ぼくの特別お気に入りのメニューは、「親子丼」と「コロッケ」だった。

親子丼は、甘みが強すぎず、ダシの味が強く(醤油も確かカマダのだし醤油を使っていた)、玉子がトロトロだった。玉子でとじられたばかりの鶏肉やタマネギが、フライパンから丼の白米の上にちゅるんとおちていく様を観るときには、もう口の中はよだれでいっぱいだった。

コロッケは大きくて、俵のようなかたちをしていて、つぶしたジャガイモがぎっしり詰まっていて固めで、衣がサックサクだった。牛ひき肉も入っていたがじゃがいもの分量が多く、ひき肉はポツリポツリと見えるくらいの比率だった。まだ小さかったぼくには、コロッケのひとつひとつが握りこぶし3つ分くらいの大きさに見えた。山のように積まれたコロッケを皿にとり、ソースをとろっとかけて、箸で衣をバリっと割ると、湯気がぶわーっと出てきた。冷めるまで待ちきれず、よく口の中をやけどしていた。

大好きなメニューをお腹がはちきれそうになるまで食べられるのは、それはもう夢のようで、いつも吐きそうになるまで食べていた。家族とたわいもない話をする機会もあまりなかったので、舞い上がって学校でのことや友達の話をよく喋っていた気がする。

アメリカで過ごした少年時代の食の思い出は、母が作ってくれた和食がほとんどだ。実家で母の和食を食べていると、まだ日本に住んだこともないのに、故郷の味がする気がした。しかし、いざ日本に住んでみて親子丼やコロッケなどを食べてみても、寂しいことに、さほど美味しくないのである。はじめは驚いた。あんなに大好きだったはずの和食が、特別なものに感じられなかったのだ。

きっと、あのころの母の料理の味は、日本に対するあこがれと、母の愛を渇望する心が生み出した味だったのだろう。

 四年間の留学を終えて、今度の四月にアメリカに帰ることになった。実家に寄ったときには母にもう一度、手料理を作ってもらおうと思う。はたして、どんな味がするのだろうか。

ヒントン/1988年生まれ。父はアメリカ人、母は日本人の家庭に生まれ、ニュージャージーに育ちながら日本語洗脳教育を受ける。大学入学とともに来日し、二丁目では、デブ専のカントン包茎として名を馳せる? 椎名林檎の大ファン。この春、慶応義塾大学環境情報学部を卒業し、故郷のアメリカへ帰国。

● 伏見ママからのコメント
一時期は、エフメゾの屋台骨を支えてくれた元バイトのヒントンくん。いまではあのニューヨーク!で青春を謳歌し、恋に仕事に頑張っている…のかな!? それは直接本人に確認してもらうとして、連載がずっと中断しているのは寂しいですね。そろそろ皆、ヒントンのことを忘れてしまうよー!

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ハルの「田舎の主婦は病んでます」 その弐

30歳でド田舎に来てから25年、2人の息子は成人し自立をした。それなりに主婦業と夫の家業を手伝い、家庭を維持した。これからは自分の好きなように楽しく生きられるはずが、ここへきてこれまでの自分の人生が空疎に思えてならないのはなぜだろう。

思えば子供を産んだ後、私は女を捨てた。

女から母親へと移行したのだ。夫は不満足だったかもしれないが、慣れない土地で母親と主婦と店主の嫁をやっていると女は邪魔だった。着飾ることや遊びに行くことがままならない環境だし、私自身が性生活を面倒なものとして排除したのだ。25年の結婚生活でセックスをしたのは3ケタに届かないだろう。今さら、夫を含め、男とセックスがしたい訳ではない。ただ、女として愛された感じが絶対的に足りない。

最近、よく思い出されることがある。まだ子供が小学生の頃、近所のパチンコ屋に大型トラックが毎日2、3台停まっていた。銀色に輝くフロントグリルとペイントされたボディ。猛々しさを誇るトラックはフロントまでカーテンが引かれていて、私はそこで長距離ドライブの疲れをいやすためにトラック野郎が仮眠をとっているのだろうと思っていた。

ところがある日、そのトラックから降りてくる女性を見てしまった。茶髪のロングヘアーに白い透けるような肌、大きな黒い瞳にグロスに輝く唇。ミニスカートをはいたスレンダーなボディは田舎ではそれだけでも人目をひく。それは息子と同じ小学校に通う同級生の母親だった。

彼女はトラックから軽やかに降りると、運転席の若いトラック野郎に向かって手を振った。彼女がトラック野郎と売春をしているとか付き合っているという噂はあったが、それを目の当たりにし、私は動揺した。白昼堂々とパチンコ屋の駐車場で激しいセックスをする彼女の姿が脳裏に浮かんでしまったからだ。

その姿に刺激を受け、その夜、夫とセックスをしてみようかと思った自分の女の部分にも驚いた。

反面、こんなすぐ近所でトラック野郎とセックスをするなんて、子供や夫にばれてもいいんだろうかと、その軽率な行動を責める気持ちも湧いた。それは結局、私自身が田舎という縛りと同化しているということだった。

「田舎の普通・田舎の常識」の縛りで、自分に言い訳をし、欲望をねじ伏せ、女として夫には冷たい石のような女だった。そのつけが今になって回ってきている、今までの生活を空疎に感じるのはそのせいなのだろう。

どこにあっても自分の納得のいく人生を手に入れることはできるはずなのに、田舎を言い訳にして捨てたものの大きさが、私が私を納得できないものにしているのだ。
(続く)

ハル/結婚して25年、ド田舎に住む55歳の小売店主の妻。息子2人が独立し、夫とはセックスレス10数年の不毛の愛の夫婦。自分の存在意義に疑問を持ち、2丁目にたどり着き、欠落した何かを探しているオバサンです。

● 伏見ママからのコメント
北関東の片田舎で、得体の知れない欲求を抱えて暮らすハルさん。いまどきの主婦が秘める闇を、今後どう掘り出して、表現してくれるのか、注目したいところです。行間から妖しい汁が滴っております…

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● 伏見がパブでツイッターのインタビューを受けたものが、togetherされております。
もしよろしければ→ http://togetter.com/li/345852

● 『百年の憂鬱』の感想ツイートは→ http://togetter.com/li/348010

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*本メールからの引用、使用はお断りいたします。