2009-11-19

いただいたご本『恋の蛍』

● 松本侑子『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』(光文社)1800円+税

え? 松本侑子さんって太宰治なんて好きだったんだ?
と送っていただいたご著書のタイトルを見てビックリ。松本さんの作風からは太宰はかなり遠い感じがしたからだ。

でも読みはじめると、太宰という作家のかげで誤解にさらされてきた女性を取り上げた評伝小説で、フェミニストの松本さんらしい問題意識に貫徹された一冊であった。

「 「死ぬ気で恋愛してみないか」「先生を、愛してしまいました」昭和23年、太宰と入水した山崎富栄の知られざる生涯。幸福な少女期、戦争の悲劇、太宰との恋、情死の謎とスキャンダルを徹底した取材から描く「愛」の評伝小説。」

「酒場の女」という具合に(世間や文壇の)女性蔑視のもとに語られてきた山崎富栄は、実は令嬢で、英語が堪能な女性経営者だった。そんな彼女がなぜ貶められてきたのか。彼女を通して見たときに太宰はどのような作家として像を結ぶのか。緻密な取材、調査に定評のある作家・松本侑子ならではの迫り方で、ひとつの生き方、ふたりの関係に光を与えている。