2008-12-13

今一生『家族新生』


*マイミク募集中! http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3837974 

* ↓↓現在、ブログ布教中につきご協力を。踏んだ数だけご利益がある!?
ずっとベスト10前後を行ったり来たりなので、もう少しのご助力を!(笑)

● 今一生『家族新生』(ワニブックス)

★★ 結論には異論がないが

私たちには郷愁の中に普遍を見出したがる傾向がある。ほんの少し前の過去の状態が、本来あるべき姿なのだという思いを抱きやすい。たかだかここ百年くらいの間に作りだされたものが、通史的な伝統や、人間の本来性を兼ね備えていると錯覚されている例もままある。

ここで問題にされる家族にしてもそうである。多くが婚姻関係を国家に届け出るようになったのは案外最近のことだし、かつて農業が中心だった社会では、女性も労働の重要な担い手であり、職を持っていない「専業主婦」という存在は、きわめて今日的な女性役割にすぎない…。

現在、家族は、メディアの発達や経済状況の変化によって、それを支えてきた近代的基盤そのものを崩されつつある。残滓する過去のイメージと、現実の関係との齟齬で、援交、家出、家庭内暴力など、さまざまな問題が噴出しているのだ。『家族新生』は、そうした時代の過渡期において親と子の関係を再考しようという提案の書である。

著者は『日本一醜い親への手紙』というベストセラーの編集を手掛けたフリーライターで、彼自身、二十代を「親との10年戦争」として過した経験を持つ。本書は「家族・親子に関して、これまで多くの人に支持されている考え方を根本的に疑い…家族のイメージがどうやって作られたかをハッキリさせ、それにとって代わる『新しい考え方』を紹介し…」というスタンスで書かれている。

理論的な背景や、データとしての信ぴょう性がはっきりしないので説得力には若干欠けるが、ほころびかけている家族への処方箋が、伝統や過去への回帰にはありえないことは十分納得させられる。

インターネットなどの情報環境の激変によって、家族空間が外部に開かれたものとなっている今日、親はただ親だという権威によって底上げされることはない。親と子供との関係性は、相互のコミュニケーションによってしか成立しえないという著者の認識は、しごく現実的である。

*初出/北日本新聞(2000.12.10)