2007-07-01
QJw「会社で生き残る!」その6
大手不動産●36歳
ホモ嫌いの上司が実はホモだった!
[名前]吉田武志
[居住地]大阪
[業種]大手不動産
[職種]営業
・営業が自分に向いている
勤めているのは、一応名前の知られている大手不動産会社です。自分は営業でチーフをしています。営業という仕事は、すでに顧客になってもらっているところをまわるものと新規開拓の2種類あります。今回は仕事で東京に来ています。
勤続して13年……その前は事務系の仕事をしていました。その会社には新卒で入って約2年いました。転職した理由は仕事が面白くなかったから。かといって自分のしたいこともわかっていなかったので、再就職の活動は大変でした。次に不動産業を選んだのは、営業が自分に向いているのではと思ったからです。実際、いまは営業の仕事を面白いと思っています。ひとと話をする仕事じゃないですか。その中でいろんな考え方を聞けるし、どの業種の景気がいいとか世の中の流れもわかる。対人関係の面白さもあるし、それに居心地は悪くありません。
ただ、他の仕事をしてみたいという気持ちもあります。東京志向もありますね。仕事で東京に来ると、いろんな仕事の流れや仕組みが東京に集中していることがよくわかるから、一度東京で仕事をしてみたい。組織の中で働く楽しさもありますが、経営者としてやってみたい気持ちもあるので、今後の展開としては、東京で別の業種の仕事をしながら、それに似合う形でサイドビジネスをしてみたいですね。
いまの会社を選択するときにゲイであることは気にしませんでした。というか、ぼくがゲイの世界でデビューしたのは28歳なんです。だから最初の就職のときも転職のときもそういうことは考えていませんでした。男を好きだと自覚したのは小学校のときですが、それからはずっと、あまりそういう世界を知らなかったこともあって、ゲイの自分を押し殺してきた部分がありました。思春期のころは、アダルトビデオを見ても意識的に女の子がイクところで一緒にイこうとしていましたね(笑)。でもレズビアンものはやっぱり駄目で、男女ものでごまかしていました。
・男ともノンケの手順を踏む
高校のときは女の子と付き合ってエッチもしていましたよ。女のひとを前にしてちゃんと勃つかな、という不安はありましたが、実際は難なくできましたね。いまにして思えば、男のひとしか知らないより女のひととも付き合っていて良かったかな? ぼくはひとりのひととちゃんとお付き合いしたいと思うほうなので、女のひとの場合だと付き合いの手順というものを踏むんですよね。デートをして相手のことを知った上で、キスをして、セックスをして……という流れがあるので、男のひとともその手順を踏むと、まあ、間違いはないかな。なんか、ハッテン場で知り合ってセックスをして、相性がよかったから付き合うってのもひとつの知り合い方だとは思いますが、まだ抵抗があります。それに、基本的にタチですが、女のひととセックスするときの、相手を気持ちよくさせてから一緒にイこうという流れは男のひとにも喜んでもらえる(笑)。そういう意味で言うと女のひととはいま、男とセックスするためにいい練習をさせてもらったって感じです(笑)
だけどバイセクシュアルというわけではなくて、それまではたまたま女のひとともセックスが出来ただけで、もともと自分はゲイでその部分を押し殺してきたのだ、と思います。28歳くらいでしょうか、ネットでゲイの世界を見始めたら気持ちを抑えることができなくなった。そこで知り合ったひととメールや電話をするようになって、一度会おうということになったんです。そしたら、そのひとのことをすごく好きになってしまった。それはいままで女の子を「好き」と思った感情とは全く違いました。女の子のときは自分が傷つかないようにテクニックだけで付き合っていたところがあったんですが、彼に対しては無防備になってしまった。けっきょく彼とは付き合うことが出来なかったんですが、それで本当に落ち込みました。その後、「やっぱり自分はゲイなんや」と思って当時付き合っていた彼女と別れました。それ以来女の子とは付き合っていません。
デビューしてみて初めて、バレたら周りにどう見られるだろう、ということは考えましたね。ちょうど酒の席でホモを馬鹿にする上司がいたんです。新人でかわいい感じの男がいたんですが、彼のことを「あいつホモやで」とわざわざ言ったりしていたから、このひとにバレたらどうしよう、と。でもこの話は、実はその上司もホモだった、というオチがつくんですけど(笑)。たぶんその優男のことを好きだったんでしょうね。よくあるパターンなんですよね。ある日、そのひとが既婚者なんで家にばれないように職場のひきだしにゲイ雑誌を隠してたんですが、たまたまそれを見つけちゃったんですよ。結婚しているひとですが、そういえば「俺は相手が好きで結婚したわけではなくて結婚したかったから結婚した」って、よく話していました。
社内で結婚圧力はありますよ。とはいえ、それも20代後半くらいから30代前半くらいまでで、だんだん言われなくなりますね。たとえ言われても、ぼくは女の子と付き合っていたこともあるのでそれが続いているように話したり、いまの彼氏を彼女に置き換えて話したりしています。親に対してもそう。「いつまでも遊んでんと、はよ結婚しい」と言われても、「また言うてんのか」と怒って返していたらあまり言われなくなりました。まさか男を好きだとは思っていないと思います。それに職場の飲み会の後で風俗に行くという話になったらぼくは行きますし(行ってもやらないけど)、猥談じゃないけどそういう会話にも参加して盛り上がることも出来るから、周りには、このひと、適当に遊んでいるんやな、と思われています。
会社で、とくに独身だから変わり者とは見られていないと思いますが、年を取っていって40代になってもこのままだとそう思われるかもしれない。結婚しているひとのほうが多いし、ぼく自身もそういう風に独身のひとを見ているところもあるから。たしかに結婚の話をされることはうっとうしいし辻褄あわせをするのも面倒ですが、ストレスになるほどではありません。また言ってるわ、と軽く流しています。あえて自分からカミングアウトはしないと思います。したらどうなるんでしょうね。仕事はしにくくなるかもしれません。さっきの上司になにかにつけて中傷されるとか、軽いイジメのような状況にはなるかもしれない。何かミスをしたら「あいつはホモやから」の一言で片付けられてしまうとか。「あの人と一緒にいると自分までそうやと思われる」とか言われて後輩とも距離ができてしまうかもしれませんね。
状況を変えるには、個人個人にカミングアウトをしていってゲイというものがどういうものかわからせていく、という時間のかかる作業をするしかないのかなとは思いますね。でもそれで周囲が変わったとしても、社会の風潮が変わらない限りはやっぱり会社自体を変えることは無理でしょう。セクハラに関しての意識はある会社ですが、男女格差はありますね。女子社員はいますが全体の1割か2割だし、完全に男と対等ということはないと思います。女子社員とは仲はいいですよ。いや、同性的な感覚はないですね。ぼくは子供のころから仕草や言葉遣いで女の子みたいといわれることはなかったし、いまもとくべつオネエ的なものはないと思います。だからといってゲイということを否定的には捉えていませんが。自分としてはデビューしてからずいぶん楽になったから。
いまの彼ともネットで知り合いました。彼氏とは同棲して5年になります。彼はもともと東京のひとで最初は遠距離でした。メールをしているうちに二丁目を案内してくれるという話になって、営業で東京に行ったときに初めて会いました。エッチをしたのは2日目……全然手順を踏んでないですね(笑)。それでしばらくして彼が仕事を辞めて大阪に来るという話になりました。年は6歳下ですね。面倒見たるから来い、となったわけではないですよ。家賃も就職したら払ってね、という感じです。家事は、掃除洗濯は向こうがして、料理はぼくがつくっています。料理はつくるのが好きなので苦ではないですね。ほぼ毎日夜は彼氏といっしょにごはんを食べています。自分が帰ってくるまで相手も待っているので、それからつくることになります。
・3500万円の3LDK
現在、住んでいるマンションは2年前に買いました。彼氏のことも考えにありましたね。間取りは3LDKです。自分ひとりなら賃貸で済ませていたかもしれません。あとはローンを組むなら30代前半からがいいということと、当時マンションブームで安くていい物件があったので。3500万円くらいですね。月々の支払いは10万円くらいで抑えてボーナス払いで25万円くらい。そのときは勢いで買ったので、まだ東京進出は考えていなかったんです。でも所有したままひとに貸すとか方法はあるから……。保険は医療系に重点を置いたものに入っています。
プライベートで付き合っている友達はゲイが多いです。もっとゲイの友達がほしいんですが。休日の大半は彼氏と過ごしています。カラオケに行ったり映画に行ったり家でごろごろしています。これからもずっと一緒にいたい、と思っています。そうですね、向こうもそう思ってくれている、と思いたい(笑)。