2009-03-14
いただいたご本『天然ブスと人工美人 どちらを選びますか?』
著者の山中登志子さんとは、「週刊金曜日」をめぐる論争となった「オカマ問題」のときに知り合った。そのときは誠実で優秀な編集者さんだなあという印象で、彼女が美醜の問題で苦悩を抱えていて、考察を深めている方だとは知らなかった。
というか、山中さんは本書で、オカマに間違われて傷ついたと書いていたが、伏見はこの新書を読むまで彼女がアクロメガリーという病気を患っていることも知らなかったし、実は勝手にMTFなんだと思い込んでいたのだ(失礼。と言うとそれも差別のような気がするので、謝罪はしないが)。
この本は読まれるべき内容に富んでいて、面白いと言えば面白い。しかし、山中さんはかつて林真理子氏のエッセイを読んで、女性エッセイストが書くものは毛糸のズロースを三枚も重ねてはいているみたいだという批判に喝采したというが、山中さん自身もまだ潔くパンツを脱いでいない気がする。その躊躇ゆえに、伏見の読後感はどうもすっきりせず、彼女も毛糸のズロースを一枚残していてそのなかはムレムレだ、という印象なのだ。その湿潤な毒にかなりやられる。そしてそれをいろんな方に読んでもらいたいとも思う。ムレムレのパンツに繁殖する細菌こそ、現代の女性たちの病みの大元になっているのだから。