2012-08-31
学生インターンふたりの2週間
8月20日(月)ポットに学生インターンが2人やってきた。専修大学の3年生高埜くんと廣井くん。
二人とも長身で、掃除のときに天井にあるクーラーの蓋を椅子なしでラクラクにはずしたときには「つかえるやっちゃ〜」とほれぼれ。
今日までの2週間、10時〜17時まで私たちと一緒に机を並べ、一生懸命耳を傾け、まじめに取り組んでくれた。
そんな二人のインターンシップ体験記。猛暑のなか毎日お疲れさまでした![那須ゆかり]
●会社訪問記
文学部 人文・ジャーナリズム学科 3年 高埜 周
専修大学の火曜一限にインターンシップという講義がある。これは文学部、人文・人文ジャーナリズム学科の3.4年生のみが履修出来る専門科目だ。この学部学科の三年生である私は、この科目を履修して、夏期休暇期間にポット出版さまへ二週間の会社訪問をすることを決めた。
放送・新聞・出版業界と様々な選択肢があった中、私は兼ねてからその実態が気になっていた出版業界を選んだ。その中でポット出版さまは募集人数2名だったのにもかかわらず、応募が6、7名いたので、選考が行われた。その方法というのが作文や面接ではなく、ジャンケンであったため、自信のなかった私でも何とかその当選者として名を連ねることが出来た。
講義内で配布された資料には、会社ごとに簡単な紹介文が書いてあった。ポット出版については「本の企画、編集、デザイン、流通、etc……本のすべてがわかる」といったような紹介文が書かれており、「すべてがわかるならここしかない」と、それが決め手となった。しかし、自分で調べても教授に聞いても、会社が原宿にあり、犬がいて、多種多様な本を出版しているということ以外ほとんど分からないまま、8月20日のインターンシップ初日を迎えることになった。
事前に那須さんに、メールでお尋ねして、分かっていたことは「10時に、普段通りの格好で、最低限の筆記用具を持って」会社へ行くこと。その言葉だけとってみると、大学の一限へ行くよりも気軽であるはずだった。しかし、初めてのインターンシップに私はひどく緊張していた。一緒にインターンシップへ行く廣井君と、炎天下、駅から会社へ歩く途中、私は寒気すら感じていた。
オートロック式の黄色を基調とした、吹き抜けのあるデザインマンションの303号室に、ポット出版はあった。中に入ると那須さんと佐藤さんと犬2匹が迎えてくださった。挨拶をした後、デザイン・編集・出版部に分かれて仕事をしていることを教えて下さった。次に、大田さんに社内のどこに何があるかということと、ゴミの出し方を教えていただくと、早速はじめの仕事をいただいた。エクセルを使って番線印の情報を入力していく作業。私と廣井君は、背中合わせで1人ずつ仕事机を貸していただき、心の準備も整わぬまま初仕事にとりかかった。左の席でセンスのよい音楽をかけながら、煙草を吸いつつ颯爽と仕事をこなしていく上野さんを見て、圧倒されながら私は「本当に出版社に来たんだ」ということを実感していた。そして私は、社員の方々の話を聞き逃さないようにしたり、メモをとったりすることに必死で、緊張している場合ではなくなっていた。
そうこうしているうちに2週間。土日をのぞいて10日間。いつの間にか私の会社訪問は最終日を迎えていた。その中で私は、今まで知らなかった出版・本のことを多く知る事が出来た。それは例えば、注文販売と委託販売の違いや今までほとんど気にもとめていなかった書誌データのこと、社長の沢辺さんから講義していただいた著作権のことなど数えきれない。私がこのようなことを知ることが出来たのは、会社の方々が私の稚拙な質問に懇切丁寧に分かりやすく答えてくださったり、会議や話し合いを見学させてくださったりしたからだ。
「出版業界のことを知ってみたい」という好奇心を第一の理由に講義を履修した私にとって、出版・本のことを多く知ることが出来たこのインターンは、本当に充実したものになった。ただ、私はその出版業界のこと以上に、【人が一つの場に集まり仕事をする】ということにおいて大切なことを、この会社では教えていただけたと感じている。それは仲間への気遣いであったり、礼儀であったり、まず自分で考えて行動するということだったりと様々だ。これらのことは直接アドバイスしていただいたものもあるが、私が個人的に肌で感じたものも多々ある。
ポット出版さまは、服装や喫煙、ツイッターなど自由・自己責任な部分が多い。しかし私が思ったのは職場然としたピンと張りつめた空気が途切れることがないということだった。息苦しいとか全員が黙って仕事をしているとかそういう訳ではない。どこかで談笑がはじまってもそのまま話し続けているということはなく、社員の皆さんはすっと仕事モードに切り替えることが出来るのだ。また、何方かが別の何方かをただ怒鳴るというふうな光景は一度もなく、その個別のことがらをよりよくするにはどうしたらいいかということを分かりやすく指摘・説明されているのが印象的だった。
仕事をする上でというよりもむしろ、社会に出て様々な人々とコミュニケーションをとっていく上で重要なこと、と言った方がいいだろうか。このインターンでは、そのようなことも学べたと思っている。そう思えた理由に、特に印象的だった二つの出来事がある。ひとつは、上野さんが私と廣井君が作ったメールを確認してくださった時、「自分がどう見られているか、どうしたら丁寧(にみえる)か考えて行動するといいよ」という話をしてくださったこと。そしてもうひとつは廣井君が沢辺さんへインタビューをした時、自分の弱点を見つけ、見つめ、カバーをするとよい、という趣旨のことを話して下さったことだ。それらは全く自分では思いつかないような視点であり、また、いつも何となくごまかしながら「正しそうな」言動を選択していた私にとって非常に新しく心強い考え方であり、アドバイスだったのだ。
私はインターンシップでこの会社にこれて本当に良かったと思っている。会社の方々は皆さん優しく、私たちに割いていただいた時間や労力のことを思うと感謝してもしきれない。学んだことは多く、消化出来るか不安もあるが、私はこの会社訪問をさらに良いものにしたいと思えたので、学校に戻ったら今まで以上に勉強しようと思った。株式会社スタジオ・ポットの皆様、本当にお世話になりました。そして本当にありがとうございました。
●インターンシップの反省・感想文
専修大学 文学部 人文ジャーナリズム学科三年 廣井俊貴
今回、私は専修大学文学部•人文ジャーナリズム学科のインターンシップという形でポット出版にて二週間、職場体験、社会人としての経験をさせていただいた。
実際に、社会人と仕事をしていく中で様々な課題•反省点が浮き上がってきた。やはり、大学や家庭などでは意識出来ていなかったこと、自分に足りないことや欠点に、このインターンシップを通して気づくことが出来たのは、大きな収穫になった。
初日のパソコン作業では、番線と書店名、書店コードをエクセルの表に記入していくというものだったが、エクセルの基本操作を忘れていたため、作業に入るまでに時間がかかってしまった。また覚え書き(ISBN、出版社名、著者名、紙質、製本の型•大きさなど)のアプリ起動の仕方を忘れ、ここでも作業に入るまでに時間がかかってしまった。
Windows7でしかパソコン操作をしたことがなかったため、マックの基本操作にすぐに馴染めず戸惑った。その上、指示された作業の手順を一回で理解する事が出来なかったので、作業の取りかかりが遅れてしまった。パソコンを仕事上、不自由なく使いこなすようになる必要性があると痛感した。
メールの文章構成にも問題があり、上野さんから指導していただいた。撮影に使うクッキーをネットで探し、メールで報告することになった。私は見つけたクッキーのサイトのアドレスだけを記したため、これではクッキーの販売元と販売状況がどこに書いてあるのかが一目瞭然で分からない、とご指摘を受けた。日頃は何となく、相手も理解してくれるだろうという考えで、メールを作成してしまっていたため、このような失敗をしてしまった。件名は短く、丁寧に書く。相手にわかり易く伝えることを意識して書く重要性を学んだ。社会人になってからでは、懇切丁寧に教えてもらえず、失格の烙印を押されてしまうだけなので、上野さんに今回の失敗のご指導をしていただいたことは自分にとって、とても有り難かった。
また、態度や人間性など生活面でも色々とご指摘していただいた。
沢辺さんに著作権についてレクチャーをして頂いた際、教科書に載っている内容をただ丸覚えするだけでは、応用力が身につかず、社会では通用しないと教えていただいた。言われた事、教わった事をそのままやるのではなく、自分の頭で考え、自発的に行動する事が重要だということ。そして自分の意見をしっかり持つこと。たとえ人から違う意見を言われたり指摘されても、相手に無理に合わせないことだと教えていただいた。
そして、自分にとって一番気をつけなければならないことを上野さんからアドバイスしていただいた。
それは、人の話をよく聴くこと。内容をよく理解すること。自分の頭で考え、場に応じた対応をする。自分が話すときも、意見や主張を相手が理解出来るよう、順序立てて話すようにするくせ(習慣)をつけることだ。余計な(聞かれてもいないこと)を話すのはやめる。単刀直入に話すことだ。これらの行為を自分では出来ているつもりでいたが、実は全く出来ていなかったことに改めて気づいた。今後は、人と接する時にはこれらを意識し、自覚しながらコミュニケーションをとっていきたい。お互い気持ちよく過ごしていくためにも。
私がポット出版をインターンシップ先に選んだ理由は、大学卒業後に出版業界(特にスポーツ雑誌を扱っている出版社)に身を置きたいと考えていたため、本•雑誌がどのような過程で製作され、世に広まっていくのかということを学びたかったからだ。
前回、私が専攻しているゼミの教授である植村先生と共にポット出版を見学させて頂いた際、はたから見ていた作業を実際に自分でやってみると、チェック一つとってみても神経を使い、根気のいる仕事だと実感した。
一冊の本が出来るまでには、多くの工程があり、また多くの人が関わっている。地道な作業の積み重ねを経て世の中に出ていく。身近な本がどういう風に完成するのかを、ごく一部ではあるが、実際に自分で経験することが出来たのは本当に嬉しく思う。改めて、出版の仕事に携わりたいという気持ちを強くした。
最後に、お忙しい中、私たちに色々と手取り足取り指導していただき本当にありがとうございました。社員の皆様にはご迷惑をおかけしましたが、色々とご指導をいただき感謝しております。このインターンシップでの経験をこれからの学生生活でも活かせていけるよう努力しつづけます。