2008-01-10

原宿駅とテント村、ホコ天。

子どもの頃からずっと新宿周辺に住んでいるってこともあるのか、都内の盛り場、大抵は自転車でいく。
原宿も、そう。
新宿東口から、アルタをバックに明治通りを進むと、原宿・渋谷はあっという間だ。
自分が意識して原宿に足を向けるようになったのは、中学の1年から2年になるくらいの頃。最初に感動したのは、原宿まで自転車で15分ちょいで行けるってこと。で、次の感動はというと、原宿駅の明治神宮側の出口を出て信号渡ってすぐの場所に、あった。
いまはビルが建っている、てゆうかあの辺って大抵ビルが建っているんだけど、ま、信号渡ってすぐの場所。そこ、かつてはテント村と呼ばれる場所だった。
屋台風の簡単に設置された店舗がズラっと並んでいて、売られているのはアイドルやアーティストの非合法生写真にパチモン・グッズ。
アーティスト・グッズってのが、やっぱ珍しかった。CDだったらCD屋に行けば買えるけど、Tシャツをはじめとするグッズ類は、ライブ会場かファン・クラブ通販とかでしか買えない。ファン・クラブにいちいち入るのもカッタルイし。海外アーティストのグッズが欲しい場合どうすんだ?て感じでいた当時の俺には、まさに宝の山。
で、当時好きだった、てゆうか今でも大好きな、イギリスのPUNKバンド・CLASHとニューヨークのPUNKバンド・RAMONESのTシャツを、そのテント村で買った。
それを学生服の下に着たりしてな。笑いたきゃ笑え。
テント村は俺が初めて足を踏み入れてから数年で姿を消して、しばらくの間は、何ていうか、方向性を模索してますみたいな場所でいた。
鈴木清順監督の『夢二』が公開されたとき、その場所に巨大テントが出現し、高校2年生の夏、観にいった記憶がある。
その頃の自分、いま自分が映画を観ているこの場所で、かつてパチモンTシャツを買ったという歴史は完全に封印していた。
でも思うんだけど、ああゆうパチモン・グッズって、まだあるんだろうか。
現在でもコンサートをやっている東京ドームの側を通ると、ドーム近辺に屋台が出ていて生写真なんかを売っているのを目にする。ま、写真とかは、非公式ゆえのリアル感もあるだろうけど。Tシャツだのタオルだのステッカーだの、そうゆうのはネットでHPに飛べば正規モノが簡単に手に入る御時世。あえてパチモンに走ったりはしないような。
でも、やっぱり売ってんのかな。で、買っちゃったりしてんのかな。パチモンを。そうゆうのにときめく少年の心を笑ったりしない大人でありたいと、俺は思っている。

原宿といえば、ホコ天。
代々木公園脇の車道が日曜日には歩行者天国になって、そこでバンドが演奏をするっていう、で、大盛り上がりみたいな。俺が原宿に行きはじめたころ、そんな風景が毎週繰り広げられていた。
去年再結成したJUN SKY WALKERSは、ホコ天出身バンドってことで売り出していた。
JUN SKY WALKERSをそこで観たことはない。自分が観たのでいえば、ギタリストがのちにスパイラル・ライフ、エアーと発展していくBAKU、GARIC BOYS、インディーズで出したアルバムを愛聴していたMAD GANG、あと池田貴族のいたリモート。他にもたくさん観た筈なんだけど、もうスカッと忘れてしまった。
GARIC BOYSでは、演奏に合わせてその場でピョンピョン飛び跳ねながら首をアホみたいに振る「ポゴ・ダンス」てやつを初体験した。シド・ヴィシャスがはじめたなんて眉唾な説もある「ポゴ・ダンス」。その頃は「モッシュ」なんて言葉は知らなかった。ライブ後は自主で作ったテープ配布なんてのもあって、ストリートのカルチャーに触れた気分をしっかり満喫。
ホコ天、俺が体験した頃はバンド全盛だったけど、80年代には竹の子族と呼ばれる集団がその場所を占拠していたってのは、もう既に日本の歴史。
崔洋一監督のデビュー作『10階のモスキート』という映画に、竹の子族が出てくる。内田裕也演じる中年警察官の娘が竹の子族という設定で、その娘役を演じたのは小泉今日子。彼女の友達役を演じたのが、アナーキーというバンドのヴォーカリストだった仲野茂。

昭和天皇裕仁が死んだころ。ホコ天で、不穏な状況に出くわした。
演奏していたバンドのメンバーが逮捕された。そのバンドが断幕をかかげて演奏していて、それが逮捕の理由だった。そんなんで捕まるの?捕まるのだ。その断幕には、「さよならヒロヒト」と書いてあったのだから。
その時その場の雰囲気、今まで自分が体験したことのない空気が漲っていた。
あちらこちらでお兄さんが、「ケーサツってのはボクらを守ってくれるんじゃないんですかぁ?」みたいな声を張り上げている。
そんな叫びを聞きながら、そのころ14歳の俺、共に国家権力への怒りをたぎらせたかというと、それがちょっと違う。彼らの姿に、微妙な違和感を覚えていた。てか、ひらたく言ってしまえば「恥ずかしい」と、感じていた。
「…って~じゃないですかぁ?!」という語尾上げ口調による正論主張が、言っている内容の正否を飛び越えて、ただただ恥ずかしかった。
彼らだって普段は、「うるせえポリ公」とか言っていたんじゃないか。あえて挑発的な行動をしておいて、「予想以上の対応」が返ってくると、正論にすがる。
断幕ってのも、どうかと思った。正面切ってる感じが、どうも自分の性に合わない。もっとこう、じわりとした、横から突くような嫌がらせ、出来ないのかな、て。

ガキなりに日常にズレみたいなものを感じて、本や音楽や映画を求めた。違う世界を求めて。
そして、その「違う世界」で、ズレを感じた。はじめての体験だった。