2003-08-16

第1回 POP

●POPの目的と求められる機能(本来の目的と機能)
 
POPは店頭にあまたある商品の中からお客さんにピンポイントで目をとめてもらう、という明解な目的を持って作られるべきものだと思っていますので、機能として「目立つ」ということが非常に重要である、と考えています。
 
 
●「手書き」POPと「手書き風」POP
 
POPについては「手書き」至上主義のような考えもあるようですが、別に手書きにこだわる必然はないと考えています。目立つ、目立たない、というのは相対的な話です。本屋に並んでいる商品が印刷物ばかりだから手書きのPOPが目立つだけの話で、店内の商品が全部ヘタうま風の手書きで書かれたモノ(最近どこでも見かける居酒屋風)ばかりだったら、逆に手書きのPOPは目立たないんじゃないでしょうか。
 
手書きPOPというのはあくまで書店員が自分の店に来るお客に向けて自分が売りたいと思う書籍に対する思い入れを伝えるためのメディアであると思っています。思い入れがあるからこそ「手書き」なのであって、手書きをコピーしてあちこちのお店に置いて、というのは「手書き風」でしかない。同様に、思い入れのない書籍についてオビなどを見て作られた手書きPOPは本来の意味の手書きPOPではなく、これもまた「手書き風」POPです。
 
本来の意味での「手書き」POPを否定する気はありませんが、POPは商品を手にとってもらうための手段でしかないので、つまるところ手書きだろうがPCで作ろうが商品を手にとってもらえばそれで良いと思っています。なので、無理して手書き風のモノを作ろうとは思っていません。「手書き」で味を出すのはとても難しいことなので、中途半端な「手書き風」POPを作るぐらいならPCを使って見やすいPOPを作ったほうがマシだと考えています。
 
 
●営業からみたPOPのもうひとつの重要な目的
 
POPの本来の目的については上で触れましたが、弊社ではPOPにはもうひとつ重要な目的があります。それは、POPを立てることによって店頭での平積期間を少しでも長く維持し販売の機会を増やす、という目的です。そのためには書店員が「これなら立てても良いです」と思ってくれるようなモノを作らないといけないと思っています。
 
また、この目的は場所を選びません。なるべく多くの店で平積を維持したい、という考えが基本にあります。1枚1枚手書きで書いているとこういう目的には対応しきれないため、PCで作ってプリントアウトする方法を選んでいます。
 
 
●どの商品に、どのタイミングでPOPを立てるべきか
 
「手書き」POPは思い入れ、通常のPOPは店頭での売上促進、営業からみたPOPは平積維持、ということで、それぞれ立てるべき商品とタイミングは違います。ただし、どの場合においても、店頭での陳列状態は平積であること(什器の都合で面陳の場合もあります)が前提になります。
 
「手書き」POPの場合は、読んで面白かった本にPOPを立てるので、特に時期は重要ではないと思います。ただし、映画・TV化されたり書評で取り上げられたりといった一般的な売り時と重なっていれば「売る」という点についてはより大きな効果が期待できるはずです。
 
通常のPOPの場合は、やはり新刊の立ち上がりに合わせることが多いです。最初に売れた→そのまま売れ続ける、という状態に持っていくのが理想ですが、新刊の立ち上がりはPOP以外の要素(広告宣伝・販促等)が大きいため、なかなか理想通りにはいかないのが現状です。
 
平積維持のPOPの場合は、お店が「そろそろ返そうかな」と思いだす直前がタイミングです。パブラインやWeBRAINのように在庫状況が日次で分かるデータはこのタイミングを見極めるのに非常に重要です。弊社の場合は発売から3〜4週間後のあたりと6〜8週間後のあたりに返品の山があります(もちろん、商品によって違いがかなりあるのでその辺はデータを見て見極めるわけですが)。ですので、その直前に営業がPOPを持参します。
 
 
●複数の商品(またはフェアなど)に対応したPOPなど
 
POPは単品に対して立てるのが最も効果的だ、と思ってはいますが、意識的に複数の商品に対してのPOPを作ることはあります。要は並べて平積みしてもらいたい、ということなんですが、これは自社の商品に限った話ではなく、他社の商品でも構わないと思います。作例では掲示していませんが、「この本(矢印)の○○ページに紹介されています。」というPOPを作ったことがあります。その場合もその本(他社の商品です)と自社の商品を並べて売ってもらい、かなり効果的でした。また、大型店で棚が変更になった際に「ここにあった○○の本は○番の棚に移動しました」といったPOPを用意し、使ってもらったことがあります。これはPOPというよりは案内ですが、これも非常に効果的だったようです。
 
 
●POPが乱立したり大きかったりすると弊社の本が見えなくることについて
 
POPの乱立している棚や平台は後ろの本が見えにくいと思うんですが、皆さんはどう思われますか。弊社の本は平台よりも棚に1冊であったり、平積していただいている場合も一番前ではなかったりする場合が多いので、後ろが見えにくいのは非常に困ります。また、馬鹿でかいPOPもあまり歓迎できません。
 
 
●POPは営業の誰でもが作れるように
 
平積を維持するための販促ツールとしてのPOP、という観点からいくと、個別のお店の状況に対応したPOPがあっても良いと思います。最近はそこまで手が回らないのでやっていませんが、以前は店名入りのPOPを作ったりもしていました。そういった個店対応のものは、基本的にはそのお店に対する営業担当者が作っていました。そのため、POPを作るためのアプリケーションはなるべく誰でもが簡単に使えるアプリケーション、ということで「Illustrator」や「Photoshop」ではなく「PowerPoint」を使っています。パソコンで使わなければならないアプリケーションの数はなるべく減らす、特殊な操作は極力行なわない、この考え方は他の場合でも共通です。
 
 
●作例をいくつか
 
私の作ったPOPをいくつか掲示しておきます。「目立つこと」「書店員に納得してもらえること」「邪魔にならないこと」「簡単に作れること」を心がけていますが、思い通りに作るのはなかなか難しいです。
 
    
 
    
 
 
●POP作りにかけられる時間
 
POP職人になりたいわけではないのでそれだけをやっているわけにはいきません。なるべく短時間に作ろうと思うとどうしてもありきたりの感じになってしまいます。しょうがないのでPOPや広告版下を作る際は自分なりのテーマを決め、それをある程度満たせれば良しとするようにしています。誰かに頼んで作ってもらう場合も同様にテーマを決めています(指示として明文化するかどうかは別ですが)。掲示した作例で言えば、「アメリカンな感じを出す」「和風な感じを出す」「表紙イラストをモノクロ化し背景に使う」などです。
 
 
●何も思いつかずに困ったときは
 
POPなどの販促物や広告原稿、フェアの企画や資料作りなど、作るべきものはけっこうあります。誰かに全部お任せ、ではつまらないので自分で作った方が良いと思いますが、引き出しが無限にあるわけではないのですぐに行き詰ります。その時は「まず真似る」という姿勢です。「ヒト真似なんて……」という方もいるかと思いますが、真似て同じモノを作る、というのは意外と大変な作業です。その過程で身になることは少なくありません。中途半端なオリジナリティにこだわるより「パクリ」を実践しています(この辺、誤解されそうですが、そのうちまた触れたいと思います)。