2003-10-27
第9回 音声配信その後
●音声配信その後
先日この場をお借りして告知させていただいた音声配信ですが、10月15日零時、既に上げておいた音声データと再生用のページ以外のHTMLファイル(音声配信用の目次ページ)や各ページからのリンク用の外部javascriptファイルを自宅からアップロードし、なんとか開始することができました。動作は完全にはチェックしきれていなかったため、その時点から細かい修正が多数発生し、深夜3時ごろまでちょこちょこと修正し、その日の作業を終えました。満足感もありましたが、不安も大きい始まりとなってしまいました。その後も大きな修正がありましたが、作業もようやく一段落し、アクセスも安定してきましたので、再度この場をお借りしてこの間の経過を報告したいと思います。
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音声配信トップページ
ヒアリング入門 中国語を聞き取る12のレッスンの音声目次ページ
ゼロから始める中国語の音声目次ページ
ゼロから始めるタイ語の音声目次ページ
●特許訴訟の影響
前回の原稿を書き終えた翌日に社内で「マクロメディア社からIEの特許訴訟についてのメール来ましたか?」と聞かれ、不吉なものを感じて調べてみたところ、どうやらEMBEDやOBJECTといったタグの使用についての特許訴訟らしく、まさしく該当してしまう、ということがわかりました。とりあえずマクロメディア社のサイトに掲載されていた記事を読みました。外部ファイルで関数を定義しそれを使うようにすれば良い、ということだそうなので言われた通りにしましたが、本当にこの程度の対策で良いのか、若干の不安はいまだに残っています。
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マクロメディア社
アクティブコンテンツが埋め込まれている Web サイトを最新ブラウザに対応させる
●直前に改善された点 Win用とMac用
公開前のサンプルでは「通常版」「簡易版」としていましたが、公開に際してはそれぞれを「Win用」「Mac用」としました。実際にはWindowsでは両方とも動作可能ですが、Mac(及びOpera6.03)では後者でしか動作しないため、そういうことにしてしまいました。今のところ「再生できない」という質問はいただいていないので、とりあえずこういった対策でも良かったかと思っています。
●直前に改善された点 音質
音質については、サンプル版の段階では社内からも社外からも「音質が悪い」という指摘をいただきました。今回、音声の編集方法は二通りの方法で行ないましたが、サンプル用の音声はもっとも音質の悪くなる方法で処理されたものでした。公開用の音声はサンプルのものよりだいぶ音質を改善しました。また、別の方法で処理された音声はもともとサンプル音声よりかなり音質が良くなっていますのでそのまま採用しています。
●直前に改善された点 ダウンロード用のリンク
今回の音声は無償で聞けるだけでなく、「転用・改変・販売・譲渡・翻案などを目的としない場合」に限ってダウンロードと複製を認めています。つまり、個人が学習用に音声ファイルをダウンロードし、MP3プレーヤーなどで聞くためにそれを複製する、といったことを認めているわけです。ですのでダウンロード用のリンクを表示するようにしました。ダウンロードが可能な事を明示したのはもう一つの意味もあります。サンプルの段階で関係者からあがった意見として「ちょっと早送りしたりちょっと巻き戻したりはできないのか?」というものがありました。これは残念ながら音声操作用のページでは実現できませんでした。ですが、ダウンロードしたMP3ファイルを他の音声再生用ソフトを使って再生すればより複雑な操作が可能です。ですのでダウンロードが可能であることを明示しました。
●直前に作ったページ 音声再生用の目次ページ
音声再生用の目次となる各ページはほとんど前日に作りました。音声ファイルの編集が前日までもつれ込んでしまったため、音声ファイルの編集が終了してからでないと作成できない「目次」部分の作業が遅れてしまったわけです。
目次ページでのリンクは通常のリンクだけでなく、別ファイルをサイズを指定して開く、という操作を行なうためにスクリプトを書いた部分が多くなってしまいました。メンテナンスのことを考えるともっと簡単な方法でも良かったような気もします。
●直前に作ったページ ページサンプル
ページサンプル自体は既にスキャンしてありましたが、それを見せるためのページはギリギリ間に合いそうにもなかったので後回しにすることにしていました。が、前日の夕方になんとか間に合いそうな感じが見えてきた段階で用意することにしました。ページサンプルのJPEGファイルを横に並べているだけですが、Windowサイズの指定によっては画像が縦に並んでしまうため、最後は数値を試しながら決めました。
●公開当日の修正
音声ファイルの一部に連番でつけたファイル名の間違い、音声再生用の操作WindowのHTMLの一部の記述ミス、その他にも細かい修正が多数見つかり、公開当日(15日)は修正作業に追われました。こういう作業をするといつも思うのですが、本来であれば公開後に慌てて修正するのではなく、事前にしっかりと時間をとって何度も確認を行なってから公開するべきです。その辺がおざなりになってしまうと余計な手間がかかりますが、出版社の場合、どうも事前にしっかり時間をかける、というところが甘いのかもしれません。編集に限らず営業についても行き当たりばったりではなく、もう少し事前の準備、ということに意識的である必要は常に感じています。
●告知活動 予算
今回の告知に関しては基本的に予算をかけずに行う、という原則を立てたため、新聞・雑誌媒体での告知を含むいわゆる広告は行なっていません。そうは言っても全く何もしなければ始めた意味がありませんので、事前の告知と同様に「プレスネットワーク」を利用したプレスリリースの配信を行ないました。さらに広告的な書き込みを許容されている掲示板への書き込み、新聞社などのリリース受付アドレスへの直接送信、自社収集のメールアドレスへの告知、今まで仕事でお付き合いのあった皆様(ネット関連)への個人宛メールなど、インターネット的な宣伝活動に絞り込んで行ないました。ですので予算はほとんどかかっていません。
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プレスネットワーク
プレスネットワークでの実際の掲載文章
●告知活動 プレスリリース
プレスネットワークでリリースを送ると、いつものことですが、送信直後から売り込みのメールや電話がどっと増えます。が、中には前回紹介させていただいた「ascii24」や「stream Now」、それよりさらに以前にも多数のIT系ニュースサイトで取り上げていただいていますが、そういうことがあるのでなかなか捨て難い方法だと思っています。リリースの送信が一回5000円(税別)と、格段に価格が安いのも魅力です。
●告知活動 掲示板への書き込み
掲示板への書き込みは基本的には禁じ手に近いものだと思っていますので今回もあまりやる気はなかったのですが、社内からの声もあり、迷惑にならない範囲で、というつもりで書き込んでみました。が、結果的にこれは学習者に直接訴えかける、という意味では最も効果的で、実際かなり多くのアクセスを得られました。ログからはそこまでは完全には分かりませんが、どうやらリピーター化している方も多いようです。書き込んだ掲示板の中には相互リンクを貼って欲しい、というところもありましたが、残念ながら弊社のサイトでは相互リンクを行なっていないため、その旨お伝えしたところ削除されてしまったものもあります。
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ALA! 中国
「ALA! 中国」中国語情報交換掲示板
中国情報ネット(china588.net)
中国情報ネットの中国語・中国留学に関する情報交流掲示板
●メール送信でのトラブル
新刊案内送信用などの自社で収集したメールアドレスに送信する際、全くのケアレスミスでお客様のメールアドレスを漏洩してしまう、というアクシデントを起こしてしまいました。深く反省しております。お客様からは、今後こういったことを起こさないように経緯と今後の対策をWebで公開せよ、とのご指摘を頂きました。すぐにページを作成し、公開しました。こちらです。もう二度とこういう失敗は犯しません。
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メール送信の不手際について
●文化通信メール速報(16日)
公開の翌日、業界紙の「文化通信」のメール「文化通信速報版」とそれに連動するWebサイトで紹介していただきました。このリンクからアクセスしてくる方のドメイン名を見ると同業者(出版社)の方がほとんどです。皆さんどういった感想を持たれたのか聞いてみたい気もしますが、直接的なリアクションはほとんどありませんでした。何かの機会をみつけて話をうかがってみようと思っています。
●アクセス数は増加
トップページのアクセスに関しては、音声配信開始直後は通常の平日の3〜4倍程度と、かなりの伸びが見られました。その後、トップページのアクセスは徐々に落ちてきましたが、音声配信トップページへのアクセスは直後の数字からは落ちましたが安定した数字を保っています。また、再生される音声ファイルも、ネット関連や同業者が多かった当初は目次の1番や2番のファイルばかりでしたが、徐々にそれ以降のファイルも聞かれ始めているようです。
●販売部数
音声配信を開始した3点のテキストのWebサイトからの注文は、10月24日金曜日までの時点で1冊です。非常に残念ですが、事実は事実です。せっかくのアクセス増をテキストの販売にまで結び付けられていない現状からどう次へと展開していくか、これからの課題です。
直接の注文数は1冊ですが、書店さんからの注文は既に通常月の3倍ほどの数字になっています。これには店頭展開分(見込み注文)も含まれますが、客注分もちらほら見受けられます。「本は本屋で、音はネットで」という点について言えば少しは実現の方向へ向かっているようですが、まだまだタネから芽が出始めた程度です。これからどう育てるかが課題です。
●他の商品への誘導(バナー広告)
該当のテキストはなかなか売れていませんが、アクセス数が増えた事を他の商品の販売に結び付けるため、急遽いくつか自社商品のバナー広告を作り、音声配信関連ページに貼り付けました。思った通り、バナーを作った商品への誘導はうまくいったようです。こちらもネットを通じての直接の注文は数件程度ですが、徐々に影響は出てきそうです。
●次の展開へ
該当のテキストをもっと売るための取り組みとして、書店店頭での案内も開始しています。今はまだごく少数のお店(営業が直接伺っているお店です)でのテスト的な販売に留めてありますが、次回の配信開始と合わせて書店店頭での展開を考えてます。また、Webでの見せ方についても、色々と検討しています。
プレスリリースについては、次回はプレスネットだけでなく、FAXなども使おうと考えています。また、付き合いのある広告代理店にもう少し話をつけてもらおうと考えています(今回は今ひとつでした)。
新刊や増刷の書籍に挟み込む「出版案内」の最新版には音声配信を明記しました。10月下旬の増刷分から挟み込む予定です。
今回配信を開始した書籍の著者の先生だけでなく、そのほかの先生からも概ね好評をいただきました。既にゼミの生徒に告知してくれている先生もいらっしゃるようですが、そのつながりについてもより積極的に働きかけていくつもりです。
●次回以降の配信予定
次回の配信開始商品は「はじめての英語プレゼンテーション」「はじめての英語ネゴシエーション」「英会話50の公式」「基本から学ぶフランス語」の四点、11月中旬から開始の予定です。次回の目玉はやはり英語の教材の無料配信です。さらに、音声配信は本来テキストを販売するために音声だけでは完結していない教材を中心に行なう予定ですが、次回配信開始予定の「英会話50の公式」の音声には一部「英語・日本語」という部分があります。つまり音声だけでも学習教材として成立する可能性が高いのですが、そういったものがどういうリアクションを得るのか、興味は尽きません。
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はじめての英語プレゼンテーション
はじめての英語ネゴシエーション
英会話50の公式
基本から学ぶフランス語
●今回の総括
今回の「音声無料配信」の最大の目的は「該当のテキストを売ること」です。その意味では今のところ結果は全く出ていません。ですが、「話題のないところで自ら話題を作る」「電子出版の新しい可能性を具体的に提示する」という目的についてはある程度の手応えを感じています。また、今回のことをきっかけに、社内でもWebの活用や電子出版への取組みについて関心が高まりました。ここで立ち止まるのではなく、さらに進むことでこの取組みの意味をより豊かなものに出来るのではと考えています。