2003-08-19

第2回 書店向け一覧注文書

●書店向け一覧注文書の大雑把な種類と機能
 
書店向け一覧注文書と言っても、書店に郵送(FAX)などで送付し書店さんに使ってもらうことを主眼としたもの、営業が持参し自ら在庫チェックなどを行ったうえで受注を行う事を主眼としたもの、とでは求められる機能は大きく変わってきます。どちらの場合についても出版社の側としては「なるべく多くの商品について有効な注文をより多く出してもらう」ことが目的となりますが、そのための過程が少し変わってくることによって求められる機能が変わってくるわけです。

前者の場合(書店員の使用が前提)、営業担当者が補足の説明を加えることができないため、なるべく注文書自体に商品の特徴などを明記するようにしています。それ以外は、事務処理に関わるいくつかの制約とFAXの使用を前提とした制約を除けば、かなり自由に作っています。
 
後者の場合(営業の使用が前提、ただし書店に置いてくることも)、こちらが今回の主題となります(作例1)。このタイプの注文書は弊社の場合は最も使用頻度が高い注文書であるため、使い勝手や効率について、かなり色々考えて作っています。FAXの使用・「全点」の掲載など以外に社内だけで通用する特殊なルールに対応するため、かなり制約があります。
 

作例1(クリックすると拡大して表示します)
 
 
●弊社の書店向け一覧注文書にこめられていた工夫
 
店頭の在庫を一覧注文書でチェックしたうえで番線印を押してもらう、いわゆる注文取りは、弊社の書店営業にとって、非常に重要な仕事の一つです。そのため、弊社の一覧注文書はそ業務がやりやすいこと、が重要な条件になっています。そのため、弊社の一覧注文書はその業務がやりやすいことが重要な条件になっています。その条件を満たすため、弊社では私が勤務する以前から多くの工夫が凝らされていました。そのまま引き継いだ点もありますし、変更した点、また不足している要素を追加した点などもあります。
 
 
●引き継がれた工夫その一、ピッキングリストを兼ねるという使用法
 
私が入社する前の一覧注文書を作例2として掲示します。この注文書の商品の順番は、弊社が契約している倉庫の棚の順番と全く同じです。つまり、この一覧注文書は倉庫でのピッキングリストを兼ねているわけです。このやり方には感心しましたが、これはあくまで今までの業務の流れ(営業の受注→伝票入力後、倉庫に直接FAX)を前提としているわけで、伝票の処理に使用しているDB(これが業務の流れを限定し、FAXベースの状態を強いているわけですが)が変更になれば、業務の流れも変わります。ですので、この工夫自体は今でも有効だと思いますが、今後もこのやり方を続けるかどうかは今のところ不明です。
 

作例2(クリックすると拡大して表示します)
 
 
●引き継がれた工夫その二、潰れても判別可能なフォント
 
FAXでの送受信を前提としているため、フォントには随分気を使っています。コード(社内で入力に使用するコードですが)にTimesというフォントを使用している理由は、「かなり潰れても0と3と6と8と9の違いが明確にわかる」からです。実際試していただくとわかりますが、通常のゴシックや明朝だと少し潰れただけで判別が難しくなります。自分はそこまで全く気がつかなかったんで驚きました。この知恵は他のFAXを前提とした注文書などに応用しています。
 
 
●変更した点、名称は正式名称で表記し、略さない
 
現在の注文書(作例1)も過去の注文書(作例2)も、一枚の紙になるべく多くの商品を掲載するためにかなり細かい字を使用しています。過去の注文書は列が3列になっていますが、その枠内に商品名を納めるため、商品名を略しています。この注文書が絶対に外に出ないものであればそれでも良いと思いますが、現実には営業が在庫チェックした上でお店に置いてくることはよくある話です。その際、商品名が略されていては、書店員にとっては分かりにくいのではないでしょうか。書店やお客さんからのお問い合わせの電話でも、商品名について社内での略称を使ってしまうことはよくあります。が、それはあくまで社内で通用する符丁でしかなく、相手がある以上は正式名称を述べるのが正解だと考えています。ですので、注文書の場合でも商品名は略さないのが弊社での原則です。
 
 
●追加した要素その一、売行ランク
 
売れ筋をなるべく多く発注してもらうようにするために、と、同時に死に筋の発注を減らすために、売行ランクは必ず入れています。全点一覧ではないジャンル別などの注文書の場合は死に筋は注文書に載せない、ということもあります。死に筋の注文をとらない、というのは一冊でも多くの注文が欲しい中小版元にとっては苦しい選択なんですが、返品率を下げるためには最も有効な手段なのであえて注文書から外す場合もある、ということです。
 
 
●売行ランクの効能
 
売行ランクを入れたのは書店さんからの死に筋の注文を防ぐ、というより、営業による死に筋の受注を防ぐ、というのがより正確です。注文をとるべき目安がないと、どうしても各イチで注文をとってしまったり、「全部お願いします」ということになってしまいがちです。ランクを入れることによって始めて、注文すべき商品とそうでない商品という目安が生まれるわけです。ですので営業が使う注文書にこそ売行ランクは必須だと考えています。
 
 
●売行ランクをどう決めるか
 
売行ランクは、全商品についての直近六ヶ月の各月ごとの実売の基準値の合計と、直近三ヶ月の実売動向、最新の一ヶ月の実売、を勘案してつけています。平均や合計は、月ごとの変動が考慮に入らないだけでなく、売行きの変化が全く反映されないので、なるべく使わないようにしています(が、実際には簡単なのでよく見ます)。その際、納返品の要素は考えません。売行ランクはあくまで売行きを表すべきものなので、使う数字は実売の数値だけにしています。具体的にP-Net(にブックサービスや弊社のネット販売の実売を足したもの)の数値を使っています。
 
 
●追加した要素その二、ISBNコード
 
書店に置いてくることがある、ということであればISBNコードも必要不可欠であると考えています。弊社の営業が在庫チェックをした注文書を書店員に渡した後、書店員がそれを見ながらNOCSやらTONETSなどで発注する、ということも有り得るかと思います。そうでなくとも「全点の一覧注文書が欲しい」というお店からの要望は頻繁にあります。端末を使用した発注に限らず、例えば自動発注の補充・非補充フラグを確認するためにもISBNコードは重要なので、弊社では注文書に限らず、書店に渡す販促物などにはISBNコードをほぼ必ず入れています。
 
 
●FAXの枚数を減らすという工夫
 
注文書の枚数を減らすことによってコピー用紙の枚数を減らすとか持参する枚数が減って営業の鞄が軽くなるとか、利点はいくつかあります。さらに大きい利点は、注文書の枚数を減らすとFAXの送信枚数が減る、という点です。特に弊社の場合は注文書を倉庫にFAXで送信しているのと、大阪で業務を委託している代行業者から注文書がFAXで送られてくる、ということからこのメリットは意外と大きいものになっています(正確に言うとなっていました)。さらに複数枚数の注文書について売れ筋商品をなるべく一枚の注文書にまとめ、結果としてFAX送信枚数を減らす、ということも考えていたんですが、なかなか上手くいっていません。
 
 
●FAXの枚数を減らすための根本的な工夫
 
注文書自体の話からは逸れますが、弊社では最近FAXの送信数は減っています。最大の理由は書店が取次の在庫を利用してくれるようになったため、直接弊社に宛てた注文が減った、ということです。営業が直接訪問しているお店でも、自動発注を導入したことによって同じような状況が発生しています。取次の在庫を増やすこともそれの利用を書店に告知することも時間がかかるだけでなく手間もかかる作業ですが、これについてはまたあらためてまとめたいと思います。
 
 
●全点を掲載するという意味
 
「死に筋の注文をとらない」という話と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、注文書に載っていない商品は注文されない、というのも事実です。弊社でも最近は在庫情報を各取次に公開しています。そこで在庫ステータスを「品切」にしてしまうと以降の注文はほぼ発生しません。同様に注文書から除いてしまった商品について注文は激減します。在庫が少ないにも関わらずだらだらと返品が返ってきてしまっている商品の場合、注文出荷が、たとえ少なくとも、あるとないとでは大違いなので、死に筋(で、かつ在庫を抱えている商品)であればあるほど一覧注文書から外すわけにいきません。
 
 
●自分の分身
 
書店に送るこういった注文書やFAXなどは、ある意味、自分の代わりに営業をしてもらう、ぐらいのつもりで考えています。ですので、本来であれば自分が話しているであろう内容を盛り込んでおきたい。だからと言って、それぞれの特徴を無視してまで何でもかんでも盛り込むのも違います。一覧注文書の場合は、情報を盛り込むよりは一覧性が重要なので、必要最低限な情報に絞るということが肝心です。
 
 
●誰が注文書を使うのか
 
書店員がやるにしても出版社の営業がやるにしても(取次の営業の方もやってますが)、在庫チェックは単純作業ですが手間はかなりかかります。ノートパソコンを使ったペーパーレスでの受注なども試みられているようですが、残念ながら詳しい実例を知りません。ただ、現状の「番線印」を前提とした中では電子化は難しいのでは、と思います。
 
 
●オンラインでの受注について
 
これについては別途まとめますが、書店主導の発注、という意味では今回の一番最初にあげた「書店に郵送(FAX)などで送付し書店さんに使ってもらうことを主眼としたもの」に置き換わるものであり、今回の「営業が持参し自ら在庫チェックなどを行ったうえで受注を行う事を主眼としたもの」に置き換わるものではない、と考えています。
 
 
●誰でも修正可能にするために
 
一覧注文書はExcelを使って作られています。Wordだと複雑な表組みの際、極端にスピードが落ちてしまうことがあったため、Excelに変更しました。アイテムごとの追加・削除・移動は格段にラクになりました。そういう意味での変更は、誰でもできる状態になっています。ただし、売行ランクの更新については標準偏差や基準値などを使っているため、今のところ誰でもができる、というわけではありません。これについてはもっと簡単な方法を探しています。