2007-06-06
参院選に挑む元レバノン大使に聞く
『インターネット新聞・JANJAN』に【 参院選に挑む元レバノン大使に聞く】という記事を書きましたので転載します。
【リード】
レバノン大使の時代に、イラク戦争に反対する書簡を小泉純一郎首相(当時)に送って、話題になった元外務省職員の天木直人氏が7月の参議院選挙で広範な護憲勢力の結集を目指す政治団体「9条ネット」から比例区で出馬することになった。9条ネットはすでに10人の候補者を公認し、比例区に臨む。
2003年に出版した著作「さらば外務省! 私は小泉首相と売国官僚を許さない」(講談社)はベストセラーになり、天木氏は脚光を浴びた。同年には「アメリカの不正義 レバノンから見たアラブの苦悩」(展望社)を出版し、04年4月には小泉純一郎首相(当時)への決別状「さらば小泉純一郎! 国民の生命を無視する冷血、傲慢、厚顔宰相を許さない」(講談社)を上梓、反小泉の立場を鮮明にした。天木氏は出馬をなぜ、決意したのか。独占インタビューした。
【インタビュー】
▼諸悪の根元は小泉内閣にある
―――安部晋三政権をどのよう評価していますか?
天木:私は今日の日本の崩壊を招いたのは5年半の小泉政権にあると思っています。安倍政権は、結局は小泉政権から生まれたものです。安倍政権の発足当時、私は安倍政権が小泉政権より良くなるとすれば、それは「小泉政治のすべてを否定するところから始める」ことだと書いたり、言ったりして来ました。当初はその兆しがしたのですが、結局迷走し、ある時点からは急速に開き直って、タカ派路線を突っ走るようになりました。それ以降の安倍政権は、小泉政権より悪くなりましたが、今のような改憲を全面的に出した「戦後レジームからの脱却」は早晩行き詰まると思います。その意味でも小泉政権のほうがずるがしこく、タチが悪かったと思います。繰り返しますが、今糾弾されなければならないのは小泉政権、小泉政治です。その意味で小泉政治の全否定からすべては始まるという私の考えは今こそ生きてくるのです。
―――現状の政治を評価していますか?
天木:いまの政治は国民のために機能していません。もともと日本の政治は国民のものではなく、それぞれの政党の党勢拡大と権力争奪に明け暮れてきたのですが、特に現状はひどいものがあります。それはやはり小泉政治によってもたらされたものであると思います。すなわち一方において自民党内部がかつての派閥均衡によるチェック機能がなくなりました。派閥政治には勿論弊害がありましたが、自民党の永久政権の中で派閥力学が行過ぎた政治をチェックしてきました。しかし刺客に見られるとおり、味方さえも自分の意に沿わない者を排斥する、この態度が自民党のよさを完全に壊しました。そして小泉政治の弾圧政策が、野党第1党の民主党にとっては、何が何でも政権を取らないとどうしようもないという気持ちを強くさせ、国民のための政治より政権交代を第一命題にしてしまった。そして護憲政党はもはや生き残りの戦いに専念し、国民の事を思う余裕をなくしてしまった。国民の為の政治が機能していないゆえんです。
▼「政権交代」できない民主党に存在価値はない
―――民主党についてはどう思っていますか?
天木:私は今でも健全な政権交代がこの国を変えると思っています。だから野党第1党である民主党を応援してきました。それは今でも基本的には変わりません。しかし民主党はどんどんと悪くなっていきました。悪くなっていったという意味は立場の異なるグループの考え方の亀裂が大きくなっていったという意味です。もはや多くの点で私の目指す考え方と異なるようになりました。それでも彼らが政権交代できる力を持っていれば許せます。しかしもはやそれすら難しくなって来たと思います。政権交代のできる野党第1党という一点で私は民主党を支持してきました。その可能性が限りなくなくなった今の民主党はもはや私にとって何の価値もありません。
―――社民党や日本共産党についてはどうお考えですか?
天木:護憲政党の日本共産党や社民党に対してはこれまでの活動実績を評価し、敬意を表します。しかし幅広い国民の信頼を得ることに失敗してきたこれら護憲政党は、もはや自分たちの生き残りに精一杯で、護憲政党、野党としての機能を果たしていません。しかもこの期に及んでも団結できません。彼らも自民や民主と同様、国民の為の政治を行なっていないのです。だから国民の支持を伸ばせないのです。これは国民の多くが思っていることだと思いますが、日本共産党はやはり教条主義から脱却しなければなりません。そして社民党は自民党と連立を組んで支持者を裏切った過去をきっちりと総括しなければなりません。これがすべてです。
▼「憲法を守る機会はこれが最後だ」
―――今回、参院選に出馬した理由は何ですか?
天木:今回の私の出馬の動機は、今の政治では憲法9条が守れない、憲法9条を守るためには国民の覚醒が不可欠だ、国民の手で憲法9条を守らせる、それを政治家になって訴え、率先していくという目的の為に出馬しました。更に言えば国民の為の政治を実現する政治家の見本を示したいという思いがあります。
―――出馬する団体・政党として「9条ネット」を選んだ理由は何ですか?
天木:政治家になるためには、既存の政党から出馬して当選を確実にするという考えが多くの人にあります。特に2大政党の今は民主党から出馬することがもっとも近道だから、考えの違いを捨てて民主党からの出馬という選択もありました。しかしやはり私はそこまで自分を裏切ることはできない。支持できる政党がない限り今の選挙制度では一人で出馬することはできない。つまり小選挙区では私のような無所属の勝ち目は皆無であり、全国比例区では10人を擁立しなければならない。9条ネットはそのための唯一のチャンスであったのです。
―――「9条ネット」から出馬することに対する躊躇・戸惑いはありましたか?
天木:最大のとまどいはそれが私の望んでいる既存政党とはまったく異なる新党ではなく、既存政党を含めた護憲勢力の結集をめざしたネットワークであるというものです。これでは既存の護憲政党との関係が不透明になるばかりか、国民にアピールできません。風を起こせません。9割がた出馬を見送っていました。それでも、私を決断させたのは今しか憲法9条を守るときはない、これが最後の機会だと思ったからです。まったく政治的しがらみのない私が前面に出ることによって9条ネットを国民にアピールしようと決意しました。
▼目標は100万票
―――選挙でどのような訴えをするつもりですか。
天木:既存の政治に関心のない一般の国民の中でも、憲法9条は守りたいと強く考えている人が大勢いることを私は全国を講演して知っています。その人たちの代弁者としてその人たちを結集し、政治の世界に届ける、その役目を私が果たしたいと訴えます。共産党、社民党は当然のことながら警戒し、敵視すらします。しかし彼らだけではもはや憲法9条は守れない以上、彼らを支持しない護憲的な国民の票を掘り起こし、全体として護憲勢力を国会で増やすという点を主張します。
―――参院議員になったら、何をやりたいですか。
天木:私が政治家になったら憲法9条を守るという一点で護憲勢力をまとめ上げるということに挑戦します。9条ネットが大きくなればそれは可能です。少なくとも社民党との統合は可能です。しかし私のより大きな目的は今までの政党、政治家とはまったく異なった、国民の為の政党・政治家の手本を見せることを、身をもって証明しようと思っています。すなわち政権を取るとか、政党の組織を拡充する事を優先するのではなく、常に少数の自立した政治家だけで結束し、国民の為の政治を行なう。そのためには従来型の選挙に資金を投入することなく、政治資金や歳費の使い方を選挙にではなく、国民のために100%使うような政治を手本として示したいと思っています。
―――どのように選挙戦を闘いますか?
天木:「私はあなただ、あなたは私だ」というキャッチフレーズの下に既存の政党、政治家とまったく異なったしがらみにとらわれない立場から平和の重要性と護憲を訴え、自らの手で政治を作り出そうと国民に思わせる、つまり政治に関心のない人たちに私を使って政治に自分の意見を届けようと呼びかけます。
―――ズバリ、目標の票数は何票ですか?
天木:全国比例区ですからまったく想像がつきません。9条ネットの意味が浸透しないと9条ネットの票は期待できないでしょう。私の知名度が少ないと票が集まらないでしょう。しかしこの2つを克服しなければなりません。やはり私が自分の存在をどこまで全国的にアピールできるかにかかっている、そう覚悟し、そして大きな風にならないとそもそも私が立候補した意味はないし今後の展望も開けないという観点から、ズバリ一人で100万票を目指します。