2007-06-06
今夏の参院選、台風の目は「新党日本」? ~田中康夫・代表と有田芳生氏が出馬表明~
『オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。
タイトル:今夏の参院選、台風の目は「新党日本」?
サブ・タイトル:田中康夫・代表と有田芳生氏が出馬表明
【本文】
前長野県知事で「新党日本」代表の田中康夫氏は4日、都内のホテルで記者会見を開き、自らが参院比例区から同党の名簿で出馬すると公式に表明した。会見場にどよめきが走ったのは、田中氏と共によく知られた顔の人物が現れからだ。
その人とは日本テレビ「ザ・ワイド」のコメンテーターとして知られる有田芳生(ほうせい)氏だ。有田氏は統一協会の霊感商法を告発し、1995年にオウム真理教(アーレフに改称)が起こした地下鉄サリン事件以降では、オウム(現・アーレフ)を知る第一人者としてメディアに露出した。オウム騒動が沈静化してからは昼のワイドショー「ザ・ワイド」のコメント役として活躍してきた。
有田氏は会見で自らが新党日本の名簿で比例区から出馬すると述べた。決意表明では、「テレビのコメンテーターを12年間、務めてきて、このままの政治ではいけないと思うようにいたった。最近の問題では年金だ。数年前『ザ・ワイド』で取り上げたとき、年金制度は100年安心だと政府はいった。それにもかかわらず、わずか数年で5000万件の『消えた年金』騒動が出てくる。20兆円が消えたという指摘もある。政治への信頼が失われている現状で、田中代表と政治を変えたいと強く思うようになった。また、子どもたちの問題も切実だと感じている。子どもの問題は未来の問題だ。これに手をつけなければならない」と思いの丈を語った。
続いて田中代表が決意表明を語った。
「年金、教育問題、財政問題、ハコモノ行政……。右肩上がりの戦後を乗り切るために永田町と霞ヶ関がつくりあげたさまざまなシステムがあらゆる分野において制度疲労を起こしている。日本は1年間に80万人、人口が減少するという今まで経験したことのない超少子・超高齢化社会に直面している。日本において確かな希望と誇りと夢の持てる社会をつくりあげるために、私たちは従来の発想を変え、仕組みを改めていかなければならないと思う。過去の成功体験に寄りかかる組織の都合ではなく、まっとうに働き、学び、暮らす人間が希望の持てる社会へと踏み出さなければならない」。
比例区を選んだ理由については「(落選した)昨年の長野県知事選で、約半数の長野県民は私に長野以外でも活躍せよといった。私の活動をほかの都道府県で支援してくれた方のためにも、比例で『信じられる日本』をつくる」と説明した。
田中氏と親交のある全盲のイラストレーター、エム・ナマエ氏は私の取材に対し、「数の力で個人の運命が左右されてはならない。小さな願いや祈りに光を投げかける勇気こそが時代を築く鍵なのだ。田中康夫さんのような卓見が国政の場にあってこそ、民主主義の理想が実現するのではないだろうか」と述べ、エールを送った。
田中色が強まった新党日本
田中康夫氏と新党日本の参戦は政界で少なからぬ波紋を呼んでいる。民主党の関係者は語る。
「『消えた年金』騒動など相次ぐスキャンダルで支持率が低迷する安倍晋三政権ですが、かといって民主党に風が吹いているわけではない。小沢一郎氏は実務型政治家で、パンチ力にかける。党首討論という絶好の機会が与えられたのに、安倍首相をとことん追求してもいいのに、追い詰められない。参院選が始まって、各テレビ局で党首討論が行われますが、口べたな小沢さんでは、民主党の株をあげられない。そんな中、田中康夫さんが知名度の高い有田さんと共にさっそうと登場した。テレビ慣れした田中さんのことですから、参院選ではテレビを最大限、利用するでしょう。迫力不足の民主党のおかげで、田中代表が目立つことになる。新党日本が無党派の受け皿になるのではと警戒しています」。
いわゆる「郵政選挙」と呼ばれた2005総選挙では、選挙直前に新党日本が結党され、時間がなく候補者も十分に立てられなかった。そんな逆境の中、11ブロックのうち5ブロックのみに候補を立てたにもかかわらず、全国で164万3506票を獲得した。各ブロックの得票率は社民党と同程度だった。衆院選の得票率を維持できれば、参院比例区で2~3議席は獲得できることになる。しかし、新党日本には躍進する可能性がある。古参の政治アナリストは次のように分析する。
「総選挙のときは小林興起・元衆院議員をはじめ、自民党をやむなく離れた守旧派と共に選挙を戦った。しかし、小林氏など旧自民党組の多くが国民新党に移籍し、新党日本は田中色の強い市民政党になっています。2年前に比べれば、がぜんイメージがいい。有田さんを擁立したように、今後も新鮮な候補を立てて、旧自民色を完全に消せば、無党派層から票が流れる可能性が高い」。
「日本新党」ブームに類似
前出のアナリストはかつてブームを起こした「日本新党」(1994年に解党)のように新党日本が躍進する可能性があると指摘する。日本新党は熊本県知事を辞した細川護煕(もりひろ)・元首相が代表(当時)で、知事出身者が党首という点で新党日本と共通する。日本新党は15年前の1992年参院選で結党から2カ月しかたっていないのに、比例区で日本共産党や民社党(1994年に解党)といった既成政党の得票を上回る361万72463票(7.73%)を得て、4議席獲得した。そのとき名簿2位で初当選したのが、小池百合子・前環境相だ。同党からは民主党の円より子・参院議員や松崎哲久・衆院議員も出馬した。
「この選挙で日本新党が躍進した背景には、有権者による既成政党への飽き・不満・不信があった。今、2大政党制の閉そく感が日本を覆っています。参院の場合、有権者は目新しい党に入れる傾向がある。新党が旋風を起こす要素は十分にあります。日本新党のように、清新なイメージを出せれば、今夏の参院選で台風の目になりえます」。
新党日本の関係者によれば、現在、同党は候補者を発掘中だという。河内音頭家元でタレントの河内家菊水丸(かわちや きくすいまる)氏の名前も上がっている。有田氏に続く「サプライズ」もありうると党関係者は語る。
よどんだ空気で覆われた政界に今夏、新党日本は新風を吹き入れるかもしれない。告示日まで2カ月をきり、同党の動向に今後も注目が集まりそうだ。