2007-06-07

英国のゴードン・ブラウン次期首相の憂鬱~支持率・党首の人気で保守党がリード~

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オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。

タイトル:英国のゴードン・ブラウン次期首相の憂鬱
サブ・タイトル:支持率・党首の人気で保守党がリード

 英国のトニー・ブレア首相の退任を受け、ゴードン・ブラウン財務相(56)が6月27日、首相に就任する。

 野党の保守党が支持率を伸ばしているのに対し、労働党は支持率の低迷にあえぎ、ブラウン氏の前途は多難だ。

英国の次期首相になるブラウン財務相(ロイター) ブレア氏は1994年に労働党の党首に就任し、党綱領の国有化路線を削除し、競争を重視する自由市場経済を導入する「第3の道」路線を採った。同路線はマーガレット・サッチャー元首相流の小さな政府路線でも、社会主義国家のような大きな路線でもない社会福祉と効率が両立する国家を目指すものだった。

 1997年の総選挙では、659議席中419議席を獲得し、万年野党といわれた労働党を大勝に導き、18年ぶりに政権を奪還した。

 2001年、2005年の総選挙でもブレア首相が率いる労働党は過半数を制し、労働党史上初の3期連続政権を実現させた。しかし、イラク戦争を全面支持して参戦したものの、英米軍はイラク統治に失敗し、同国は内戦状態にある。

 イラク戦争を機に、ブレア首相の支持率は低迷し、今年5月3日に行われたイギリス統一地方選挙では議席を大幅に減らした。また、イングランドでは、保守党の得票率が41パーセントと労働党の27パーセントを大きく上回った。

 ブラウン氏は1983年から下院議員を務めており、1997年5月からブレア首相の右腕として、財務相を務めている。174カ月連続の景気拡大が続き、失業率が5パーセント前後に抑制されたのはブラウン氏によるところが大きい。

 しかし、外交は不得手といわれ、イラク戦争については党首選の出馬表明で「誤りがあった」と認めた。ブラウン氏は早期イラク訪問を希望するといったが、泥沼化するイラク情勢を建て直すプランは何もない。

 保守党は2005年12月、清新なイメージで売る若手政治家のデーヴィッド・キャメロン下院議員(40)が39歳の若さで党首に就任した。キャメロン党首は国民的人気が高く、保守党の躍進の原動力となっている。

 調査会社のICMが5月18~20日に有権者1003人を対象に行った世論調査では、次期総選挙ではキャメロン保守党に投票すると回答した人が38パーセントで、ブラウン労働党の30パーセントを上回った。

 ブラウン財務相は、2009年5月に行われるだろうと予想される総選挙で労働党を勝利に導き、4期連続労働党政権という快挙を成し遂げたいところだが、ブレア氏の最大の負の遺産「イラク政策」の対応に追われることになりそうだ。