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[第8章●地理情報コミュニケーション]
1… 地理情報伝達の難しさ
[2003.08.15登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

地理情報といえば小難しく響くが、要するに「どこ」ということ。たとえばこれから訪問したいと考えている相手の会社の所在地のこと。この「地理情報」の伝達というのは、非常に難しい。

「じゃあ明日午後1時に弊社ということで、よろしいですか」
「了解しました。で、御社はどこでしたっけ」
「あ、じゃあ、あとで地図をファックスしておきますね」

こういう会話は日常茶飯に交わされる。そして「地図」なるものが送られてくる。しかし印象で言うと半分くらい確率でこの「地図」なるものはまったく役にたたない。特にデザイン系の仕事をしている事務所のそれはヒドいことが多い。かっこよくデフォルメされているのだが、カッコばっかりで、地下鉄の駅を出たとたんからどちらに進むのかわからなくなる。

じゃあ、所番地を使うとどうか。上述のような会話を交わす相手というのは、ま、既知の相手であるから、名刺の手交くらいはしている。名刺には事務所の所在地の所番地が記されているのは普通だから、相手の住所(所番地)はわかっているのだ。

ポケット型の市街地図をもって住所をたよりに探索するというのはどうか。これもなかなかうまくいかないのだね。13番地だというから、10、11、12と進んできたのに、いきなり次は40番地とかになったりする。日本では番地の振り方にルールがないのだ。

東京大阪といった大都市圏では、インターネットのピンポイント検索でたなごころを指すがごとく、明瞭にわかる(後述)が、それはそれ。どこにでも通用するわけではない。

とくに都市部じゃないところは所番地ではとうていわからないし、ましてや、山中の一点をピンポイントで指し示したい場合は、そもそもからして番地がなかったりする。

地理情報のコミュニケーションは、とっても難しい。

ところで、情報を検索する場合は、どのようなものでも「索引」が必要になる。索引はルールとキーで構成されていなければならない。たとえば国語辞典の索引ルールは「見出し語(それがキーだ)を50音順に並べる」というもので、そのルールがあり、そしてそのルールを我々が知っているから、はじめて使うことができるのだ。

地球上の1点を指し示すための「索引」のひとつは「所番地」であるが、これは実際には郵便や宅配便の宛先に書くものでしかない、と割り切っておいた方がいい。現地を良く知るもの(郵便配達員とか宅配便ドライバー)にしか役立たないシステムだからだ。しかしもうひとつ別のグローバルな「索引」が存在する。それが緯度経度システムである。

北緯何度何分何秒東経何度何分何秒ってやつだ。これならどんな辺陬の地であっても、唯一無比、他の場所と取り違えるということはありえない。

しかも地図情報と違って、これは名刺やメールの1行に収まるサイズの文字列情報であるから、取り扱いもラクである。

日常的な地理情報のコミュニケーションで緯度経度を使う人は現時点ではきわめて少数派である。なんでこれが広まらないのか、わたしは不思議でならない。

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