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[第3章●インターネットはこう使う] 3… 統計局のサイトを使う |
[2003.10.24登録] |
石田豊 |
総務庁統計局のサイトがなぜいいか、というと、「常時そこにある」からだ。各種の調査や統計の集計結果は、少なくともその概要くらいは新聞や雑誌に折りに触れ掲載される。「携帯電話の普及率××%を超える」なんて大見出しのもとに最新の調査結果が発表されたりするわけだ。そうした記事を読んだ時には、ほほー、なんて驚いたりするが、あとになってその数字を使いたいと思っても、探し出すのに往生する。 自分の専門分野だったら、記事を切り抜いたり、抜き書きを作ったりするのだろうが、森羅万象、すべてのものをそうしているわけではなく、専門分野からちょっとはずれたところの数字こそ、もっとも必要であったりする。 たとえば、映画の未来ってことを考え始めるとする。その契機はさまざまだろう。ずばり「映画の未来」ってテーマの記事をかかなきゃならないという「ライター的」なきっかけもあるだろうし、純粋に好奇心の対象って場合もあるだろう。家庭向き映画コンテンツの配信なんてビジネスの企画の一部でこういう発想がでてくることもあるかもしれないし、余暇の使い方を考える中の一項目としてこれがでてくることもあるかもしれない。 ともかく、いま、映画ってどうよ、と。 映画は斜陽である。テレビやらなんやらにおされて、キビしい状況にあるのである。なんてことはずっと昔から聞かされ続けてきた。それは今でもホントなのか。それにしてはテレビなんかでさかんに映画のコマーシャルをしているし、ここ数年は前よりずっと多いような気がする。どうなっているのか。 こういう場合に、まず、統計局の統計をちょこっと見てみるわけだ。ここのサイトにある「日本統計年鑑」の第23章科学技術・文化ってところに「映画」という統計がある。昭和45(1970)年から平成13(2001)年までの映画館数、入場者数、封切り本数の推移をまとめたものだ。 これを見ると、映画はどの数値に着目しても、右肩下がりではある。しかし、入場者数はここ20年、そんなに変化をしていないのだ。 この統計表には、実は決定的な不備がある。入場者数の単位が記されていないのだ。数字だけを取り出すと、70年255、75年174、以下2001年163までの推移が掲載されている。グラフにしてみると次の通り。 70年を別にして見てみれば75年から2001年までは、ざっくり「そう下がっているわけではない」ということがわかる。95年からあと、若干の復調基調にあるんじゃないのとも読み取れる。 つまり常識化してしまっている「映画の右肩下がり」ってのは、必ずしも現在も通用する言い方じゃないというではなかろうか。 もちろん、これだけのデータで何を言うこともできないし、何がわかるというものでもない。でも「考え」のひとつの出発点というか、きっかけには充分なりうる。 ここから出発して、調べものを始めていけばいいのだ。まず手始めにはこの「255」という数字の単位。ネットで検索することで、これは100万人単位だということがはっきりしてくる。つまり2001年なら1億6,300万人。 私の場合、このような感じでこの統計サイトを使うわけだ。 映画の観客動員数の推移なんてことなら、別にこのサイトを見なくても、Googleで検索をかければ、それを記載したサイトをいくらでも見つけることができる。Googleで検索する前にここで調べるのはどうしてかというと、理由はふたつある。 ひとつは、データの信頼性である。Googleで調べた有象無象のサイトでの数字の信頼性はさまざまだ。だからどうしてもウラをとらないと怖くて使い物にならない。政府発表の数字のすべてを信じるわけじゃないけど、ある程度の「堅さ」はあるはずだ。 そしてもうひとつは、検索を開始するときに「映画の観客動員数」というファクターに気がついていないということだ。つまり「映画の未来ってどうよ」というのが出発点であって、とりあえず映画関係の統計って、なんかないかしら、と統計局のドアをたたくわけだ。まさか「映画ってどうよ」とググるわけにもいくまい。統計表を見たために、映画観客数って、一概に減っているわけじゃないのだな、と、いわば「問題の所在に気がつく」わけだ。 そこから出発して検索することで、1960年の観客動員数が10億0100万人もあったことがわかる。それに比較すると、さすがに斜陽感はある。この数字を見つけたサイト(映画業界の実情)によって、派生してくるいろいろな要素を知ることもできる。 繰り返すようだが、調べもの、考えごとの出発点・口火として利用するわけだ。 こういう「ぬるい」使用法であるからこそ、「無料でいつでも」が利いてくる。この統計の出典は先にも書いたように「日本統計年鑑」であるが、これはもちろん紙版としても発売されている。B5判964頁CD-ROM付きで14,000円(平成14年版)である。「ぬるい」使い方ができるような価格ではない。タダでスグに使えるからこそ、使っているのだ。 私にとっては、ここはなくっちゃ困るサイトである。 |
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