2003-07-14
メロンパンの誘惑
甲田医院の月曜日と火曜日は、基本的には外来の診察日です。日本全国各地から患者さんがやって来ます。みなさん真剣です。ほとんどが、他の病院で見放され、最後の場所としてやって来ているのですから・・・。事務の方も、そんな訳で月・火はとっても忙しそう。いろいろ質問したいこともあったのだけれども、どうやらしばらくはお時間をいただけそうもありません。
甲田先生は、休みなく毎日ちゃんと朝の8時に私達入院患者の診察をしてくださり、私達の日々の疑問点や話を聞いてくださいます。
今日は患者全員で、トイレや台所などの掃除をしました。
みんなでやればあっという間です。普段みんなで一緒に食事を作ったり洗い物をしているので、さささっとできました。身体を動かしている方がずっと良いので、皆テキパキとしています。どの人も病人には見えない。
でも、みなさん大変な病気と戦っている。入院前にしっかり甲田食事療法をしてきているので、具合が前よりずっと良いとおっしゃっていました。この断食入院は、さらにさまざまな甲田メソッドを正確に覚えて、退院後にできるだけそれを実践することを目的とした部分もあります。もちろん、入院中に治れば最高だけれども、薬を飲んではい、治りました! というのではありませんしね。身体を大切にして、もともと人間が身体の中に持っている自然治癒力を蘇らせ、それを持続させることが大事なのです。
そのためには、日々きちんと粗食・少食を守らなければなりません。これはでも、そう簡単なことではないのです。
逆に言えば、これさえ毎日ちゃんとできれば、病気はほとんど治ったも同然。けれども人間は煩悩の塊・・・食欲との戦いは、思ったよりずっと厳しいものなのです。
甲田先生でさえ、若かりし頃は甘党で甘い物をやめることができず、それさえやめれば身体が良くなる、とわかっていても、あんころもちを大量に食べてしまって抑制がきかず、もう死んでもいいから甘い物を食べたい! と思ったことが何度もあったそうです。実際、甲田先生が糖分とさよならできて身体が治るまでに、およそ10年もかかってしまったというのですから、私達普通の患者など、一体どうなのでしょう?
私にできるのかしらん??? いや、私は聞こえるようになりたいから、頑張る!! (・・・と、一応書きますが・・・どうでしょうねぇ・・・)
入院前、その厳しい甲田メソッドを家でやっていましたが、モーレツに甘い物が食べたくなって、どうしようもなくなって、チョコレートやアイスを買って来て食べてしまったことがあります。その罪悪感たるや!! ・・・ここに書けないほどです・・・。でも、他の入院患者さんの話を聞いていたら、みんな例外なく、そうした食欲でつまずいているんですね。
それでお互いにほっとしあったりして・・・。とはいっても、いくらしっかりと食餌療法をしていても、一度そうやって禁止されている食べ物を口にしてしまうと、1週間の無駄になるのだそう。つまり、1週間頑張った食餌療法がパァになるのです。
そんなことを聞いてしまうと、無駄にしたくないから頑張るしかないって思います。
よっぽど意志が強くなければ、普段の食事を極端に制限して好物を食べないってことは、まぁできるものではありませんね。
例えば、この病院の斜め前に大きな100円ショップがあります。
入院中の足りないものを、そこで調達しようと思って行ってみたのですが、その店の前に車が止まっていて、焼きたてほかほかの手作り「メロンパン」に「クロワッサン」、「カレーパン」などが売られていました。メロンパン! ドイツになくて、私も大好きなメロンパン! しかもオリジナル手作りパンで、見るととっても美味しそう!! オーブンから出した、焼きたてホヤホヤのメロンパン!!! でも、食べてはいけないのです・・・・。これ、想像できます?
すごすごと病院に戻り、そんな話を入院仲間に話すと、すかさず三重から来ているK子さんが「あ〜〜〜! 私もあのメロンパンにはやられちゃったわ〜〜。大阪は食い倒れっていうくらい食べ物が美味しいって言うけれど、私は松坂牛などの三重から来ていて、何でもとっても美味しいの。だから、大阪の食事に魅力を感じてはいないけれども、あのメロンパンだけはどうもね〜〜〜。食べたくて我慢するのがキツかったわー。」と言ってました。他の人達ともそんな話で盛り上がり、食べられないつらさをみんなで話すことで発散させるのです。
たったメロンパン1個のことなんですけれどもね・・・・。
でもこれ、入院しているからみんな我慢しているけれども・・・。
もしも退院して家に戻ったら・・・。それがみんな怖いのです。(ちなみに、入院患者のフロアには、前の患者さんが置いていった本がたくさん本棚にあります。見てみると、なんと食事に関する書物が多いことか!!)
でも、甲田先生はおっしゃいます。「みんなこの療法でしっかりと治ったら、また前のように好きな物を食べられるようになるのだから、それまでの我慢です。無制限にずっと厳しい食餌療法をし続けるわけではないのだからね。」
これを聞いて私はほっとしましたよ! 私の場合は、3年後ってことでしょうか?
あ、それから入院してからずっと、私の体重は増え続けています!
先生によると、栄養がまわっているとのこと。他の患者さんは入院してから普通はどんどん痩せるのですが、私はどうやらもう究極の体重まで落ちてから入院して来たタイプのようです。
でも、もちろん断食に入れば別です。今日の体重は46キロ。
もうすぐ断食開始。どうなるのでしょうねぇ。
明日は三分粥になります。