2006-12-23

アンゲリカとの出会い秘話 その2

完全な勘違いをしてしまった(笑)私は、そのままアンゲリカを日本の両親宅に泊めることを決め、アンゲリカは嬉しそうに成田に到着しました。

そう、彼女はとても明るくて、いつもニコニコしていて、そして人なつっこいのです。一人でホテルに泊まるなんて、きっと彼女にとっては楽しいことではなかったのですね。でも、全く友達でもない、10分しか会っていない私の家に、3週間も滞在するのは、さぞかし不安もあるだろうと思ったのですが・・・・。

全くそんなことはありませんでした! 笑

彼女は、どんな場所にもすんなりと溶け込んで、自分も相手も楽しめる空気を作ることのできる人だったのです。だから、父も母も神経を使いすぎることなく、自然と彼女を受け入れました。

それともうひとつ、大事なことがあったのですが・・・。

実は、私には嫁いだ妹の他に、弟がいます。弟は生まれてすぐにひどい黄疸にかかり、いろいろあって重度の脳性小児麻痺になりました。家族はともかく、他人とコミュニケーションをとるのは大変難しく、それゆえ新しいお客様がいらっしゃる時は、それなりに家族で考えて対処することが普通のことになっていました。

アンゲリカが我が家に滞在するということで、両親と私は話し合いました。ヨーロッパの人は、躾けのひとつとして、子どもの頃から社会福祉への心得が自然に身についていますので、たぶん問題ないと私は両親に伝えました。そして実際アンゲリカは、弟を特別扱いするでもなく、全く他の人と同じように普通に接してくれました。それは本当にとても自然で、そして愛情あふれるものでした。両親も感心していました。アンゲリカが両親や弟に何か伝える度に、私が通訳をしたわけですが、彼女が発する言葉はどれもこれも心がこもっていて温かいので、私を含めてみんなの気持ちがあたたかくなりました。

・・・

さて、翌日から彼女の日本での修行が始まりました!習い事の先生は英語をお話しにならないので、どうしても通訳が必要です。彼女は日本で学ぼうとしている学生なのだし、3週間のうちおよそ2週間はまるまるレッスンを受けるわけですから、そうなると通訳代が膨大になってしまいます。私は大学の休みに一時帰国をしたのだし、友達と会ったり遊んだりすることよりも、アンゲリカのお手伝いをして、ささやかでも日独の交流に役立てればと考えて、無料で通訳することに決めました。

「え、でも申し訳ないわ。少しでも払わせてよね。」と言うアンゲリカに対し、私は頑固にNOと言い続けました。学生の身分で、通訳代を出すのは大変なことでしょう(と思ってしまっていました!笑)。「いらないわよ。私だって学生だし、まだまだプロのような通訳はできないのだしね。そんなんで良かったらお手伝いさせてね!」

ということで、私たちは2週間ずっと一緒に先生のところに通ったのです。

もちろん、私は彼女を普通のお客さん扱いしませんでした。宿泊料を少し払わせて欲しいという彼女に、「うちに泊ってもらうのは問題ないの。一銭もいらないわ。でも、私たちはあなたをお客さんだと思わないで、私たち家族がいつも食べている物を食べてもらうし、我が家のルールを守って欲しいのね。例えば、食事をしたら私と一緒に食器を洗って頂戴。部屋の掃除も私とするのよ。母には頼まないから。それでいい?」と言ったところ、笑顔で「もちろんよ! 嬉しいわ、ありがとう淑子!」と快諾してくれました。

後になって気づいたのですが、彼女からしてみれば、他人の家でそんなことをしなさいと言われたことがなく、かえって新鮮だったようです・・汗。

続く