2008-04-29
東京タワー。上のほうまでいかなくても
例えば周りにいる知人。東京育ちの知人たちに、東京タワーに行ったことある?と訊いてみると、いったいどれ位があると答えるのだろう。
あと、東京タワーに思いいれある?と訊いてみて、あると答える人は、東京育ちで、どれ位いるのだろう。
ある、といっても、それは中に入って遊んだとかではなくて、どちらかというと、眺める夜景の一環として印象深いというか。ま、そっちの方なんだろうなって。そんな気が、する。
先日、はじめて東京タワーに行ってきた。いや、ひょっとしたら子どもの頃に連れられてきたことがあるのかもしれないけど、俺の記憶にはまるで残っていない。
だから、はじめて。行ってきた。
上のほうに行くエレベーターは順番まちの行列。
早々に辟易してしまい、まずはみやげ物売り場や、ファーストフードの出店がある、人のひしめくフロアをブラブラ。最初は距離を置いて眺めていたのに、いつしかハマっていく。
それだけで、軽くおなか一杯な気分になってしまう。
おなかも一杯になったのは、気分だけ。この日、来る前に食事を済ませてしまっていたので、身体は普通におなか一杯だったのだ。
そばと丼モノのセットとか、そういったものを出す店があった。そういう類のお店は、人がたくさんいる熱気の中だと一際美味しそうに思えてしまうものだが、既に食事を済ませた30代の午後13時半過ぎだ。ここは気持ちをぐっと抑えこむ。でもカツカレー、うまそうだったな。メニューのサンプルが、そそる。サンプルって、とことんずるいよな。
そして階段でいける範囲。ロウ人形館などに行く。
やたらと洋ロックな雰囲気。ロックTシャツの店が併設されている。
ここでTシャツ買うのか。でも、俺が地方に住むロック好きで、修学旅行でここに来て、こんなにロックTシャツが売っているのを見たら、それこそ狂喜乱舞だろうな、て思う。
実際、俺自身も高校の頃には西新宿でロックTシャツを何枚か買っていた。ストーンズやT-REXや、あとヴェルヴェット・アンダーグラウンドの1stジャケTシャツ。
そういえばその頃、どこにでもあるジーンズメートで、ブルース・シンガーのロバート・ジョンソンのTシャツを売っているのを見かけたことがあるけど、あれは何だったんだろう。内部に好きな人がいたのだろうな。きっと。
パネル展示で、現在の東京、それから日本関するあれやこれやを紹介するスペース。人口とか、経済の流れとか。
子どもの頃、勉強は大嫌いだったけど、学校でこうゆう話を聞くのは、なぜか無性に好きだった。
見ちゃうんだよな。こうゆうの。なるほど、とかいって。で、すぐに忘れるんだけど。
歩き回って、みやげ物屋がひしめくフロアに戻る。
チェーン系カフェの席が空いているのを発見して、そのままそこに入ってしまった。
飲み物と、おやつにホットケーキを注文。
プラスチックの、おままごとみたいなナイフとフォークがついてきた。ヘナヘナしなって、とっても切りにくい。
これはないだろう、とか思いつつ。いやここで普通のナイフとフォークを出されても引くなあ、とか思いつつ。ヘナヘナごしごし、切っていく。
隣の席には、一人で来ているおばあさんがいて、これまたホットケーキを食べていた。おばあさんも、ヘナヘナごしごし、切っている。
東京タワーに一人で来ているおばあさん。
ついつい余計なことをあれこれ想像していたら、自分の足元に、おばあさんの使っていたナイフが飛んできた。あまりにヘナヘナ過ぎて、つい力が余ってしまった様子。
こちらが使っていたナイフを、もしよければと差し出してみたけど、既におばあさんのホットケーキは食べるサイズに切られていたので、その必要もなく。
地下に降りてみると、昔からあるような、大食堂兼喫茶コーナーといった趣の店舗を発見した。
お客さんも混みあっていない。広い店内に、高い天井。ナポリタンとかプリンアラモードとか、いかにもなメニュー。そしてもちろん、ずるいサンプル。
失敗した。どうせならここに入りたかった。
あのおばあさんも、きっとこっちの方がよかったに違いない。
結局、上のほうにいくエレベーターの行列は途切れなくって。
タワー内の水族館を見物して、帰った。
東京タワー、上のほうまで行かなくっても、充分楽しめる。