2007-11-02

サルコジ仏大統領に新スキャンダル フランスの新聞、雑誌、テレビを都合よくコントロールか

_12_0144.jpg

サルコジ大統領離婚前に『オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。

タイトル:離婚目前?サルコジ仏大統領に新スキャンダル
サブ・タイトル:フランスの新聞、雑誌、テレビを都合よくコントロールか

【本文】

 今年5月に就任したフランスのニコラ=サルコジ大統領の身辺が騒がしい。

 フランスのメディアは、一斉に正妻のセシリア夫人とサルコジ氏が別居状態で、離婚は秒読み段階だと報じている。

 大統領の在任中の離婚は前代未聞のことであり、過去に例がない。セシリア夫人は現在、行方をくらましており、大統領府の報道官は記者団に、

 「夫婦のことについてはコメントできない」

とノーコメントを貫いている。サルコジ氏も沈黙したままだが、

 「もうすぐ、独身になる」あるいは「これからは職務に専念するのみだ」

と身辺に漏らしたと伝えられ、臆測を呼んでいる。

 セシリア夫人といえば、2005年5月に多忙を極めていたサルコジ氏を捨てて、ニューヨークの実業家のもとへ駆け落ちした前科があり、その浮気相手と夏期ヴァカンスを2人仲良く過ごしている写真が、ゴシップ週刊誌「パリマッチ」の8月25日号の表紙と記事中に掲載され、いくつかの週刊誌が追従して注目を集めた。

 ただ、セシリア夫人は2006年初めに、サルコジ氏と寄りを戻している。だが、大統領選挙の期間中に行方不明になったり、決選投票を棄権し、話題になった。

 サルコジ氏の当選後、先進8カ国サミットに出席する夫に同行したものの、終了日前に1人で帰国、この夏のヴァカンスを、米国で家族で過ごした折に、ジョージ=ブッシュ大統領から別荘へ招待されたのに、体調不良を理由に欠席。ファースト・レディらしからぬ自由奔放な振る舞いが続き、周囲を慌てふためかせてきた。

 夫人に振り回されっぱなしのサルコジ大統領だが、追い打ちをかけるような重大なスキャンダルが発覚した。

 10月11日に刊行された本『血にまみれた雑誌』で、衝撃の告白をしたのは、著者『パリマッチ』誌の発行元・アシェット出版のジェラルド=ドゥ=ロクモレル前社長だ。

 同書には「セシリア-パリッマチ事件」と題された章があり、セシリア夫人の駆け落ち事件の顛末が記述されている。

 それによるとセシリア夫人と駆け落ちした相手とのツーショット写真を、『パリマッチ』編集部は入手したものの、社内には掲載に反対する声があったという。

 しかし、ロクモレル氏は「言論の自由」だと判断して、掲載を容認した。

 そのスクープ写真が載った号は、飛ぶように売れ、実売部数はその年、最高の90万部を記録し、営業的には大成功だった。

 その記事は「サルコジ氏を激昂させてしまった」とロクモレル氏は述懐する。

 アシェット出版は、防衛・メディア大手のラガルデール・グループの子会社で、オーナーのアルノー=ラガルデール氏とサルコジ氏は昵懇の仲だった。

 ロクモレル氏によれば「ラガルデール氏を通じて、怒り心頭のサルコジ氏から責任者を辞めさせろという圧力があった」とか。

 トップダウンで編集長は直ちに解任され、ロクモレル氏も1年後の2006年9月に責任をとらされる形で、社長の座を追われることとなった。「サルコジ氏による言論への不当な介入です」と同氏は憤る。

 『パリマッチ』はその後、サルコジ氏の提灯記事を掲載する、御用雑誌となってしまった。

 2007年8月9日号では、米国ニューハンプシャー州でヴァカンスを過ごす水着姿のサルコジ大統領の写真が掲載されたが、経済誌『レクスプレシオン』は8月23日号で、その写真は、大統領の腰まわりのぜい肉を目立たなくするために修整されたものだと暴露した。

 同誌は、腰回りにぜい肉がついた修正前の大統領の写真を示して、意図的な加工だと告発している。水着写真1枚を、そのまま掲載できないくらいに『パリマッチ』はサルコジ大統領に、配慮して自主規制しているのである。

 ただ、問題なのは『パリマッチ』だけではない。サルコジ大統領は、日刊紙や週刊誌を発行する右派の大手メディアのフィガロ・グループの経営者、左派系日刊紙の『リベラシオン』の大株主、経済日刊紙の『ラ・トリビューン』の経営者、さらに最も視聴者の多いテレビ局TF1やカナル・プリュス局の経営者と懇意の仲であり、仏メディアの多くを支配下に置いているような状況だ。

 野党第1党の社会党は、サルコジ大統領とメディアとの癒着だと批判している。

 フランスの国立放送研究所の集計によると、5~8月のサルコジ大統領のテレビニュースへの登場頻度は、ジャック=シラク前大統領が再選を果たした2002年の同時期のほぼ3倍に達するという。

 自由の発生の地、フランスにおいて、時の大統領によって「言論の自由」が制限されていく状況は、嘆かわしい限りだ。