2005-08-29
欧州は急速に変化する(フランス政界の行方)
久々にフランス政界の話に触れます。
フランス社会党が分裂の危機にあるということを朝日新聞が報じたそうです。
(TNさんのトラックバックによる。
http://transnews.exblog.jp/1639273/)
2002年の仏大統領選挙第一回投票で、社会党が擁立したジョスパン首相(当時)は極右のルペン候補の票に及ばず三位につけ、上位二位による決選投票に進むことができませんでした。世に言うルペン・ショックです。当時の第一書記(日本で云う党首)は、フランソワ・オランドさんでした。今年五月の欧州憲法批准をめぐる国民投票で、賛成キャンペーンの先頭に立ったのもオランドさんでした。批准が否決された日の夜、オランドさんは記者会見をしました。顔面蒼白で、前々週に私が顔を合わせたときに比べて、頬がだいぶ痩けていました。
仏社会党大会は11月に開かれます。2007年大統領選挙に向けて、党内結束して臨みたいところなのに、分裂の危機にあるわけです。最大の関心事はオランド第一書記が追放されるかどうかにあります。彼が追放されるにせよ、その職に留まり続けられるにせよ、党内の分裂は不可避というのが一般的な見方であり、2007年大統領選挙はガタガタな党内事情のまま突き進みます。
一方、シラク与党のUMPは圧倒的な人気をほこるサルコジ党首・内相を担ぐでしょう。ドヴィルパン首相かシラク大統領が出馬して、保守陣営が分裂したとしても、サルコジのパワーには叶わないことでしょう。
さて、来るドイツの総選挙で、保守政権に変わることは不可避でしょう。2007年にはサルコジ大統領が誕生することも、いまある選択肢の中では、もっとも可能性の高いシナリオです。独仏同盟国というのはおもしろいもので、仏が左翼政権(ミッテラン)だったときは独が保守政権で、仏が保守政権(シラク)だったときには独は左翼政権(シュレーダー)なわけです(わずかな期間を除いては)。今年ドイツが保守政権になり、再来年にフランスがサルコジ政権になれば、保保同盟になるわけです。ドイツもフランスも親米路線に転換することになり、独仏を中心としたアメリカに対抗する欧州統合といった路線は転換される可能性が高い。
ところで、朝日新聞記事をみてオヤッと思ったのは、フランス社会党の一番人気の政治家が同性愛者であることをカミング・アウトしているパリ市長、ドラノエさんになっていることでする。同氏はパリ市内において、左派のみならず保守層からも支持を集めており、彼が大統領選挙に出れば、国民の広範な支持をうけることが予想されるからでしょう。といっても、社会党分裂という火中の中で、ドラノエさんは果たして栗を拾うか。その可能性は低いように思えます。