2005-03-29
映画評『受難』……16歳未満禁止のド変態もの……
ベルギー・ルクセンブルグ・フランスの三国合作映画『受難』(“Calvaire”)は見応えのある映画だ。
小さなコンサートを繰り返す歌手(♂)がある時、土砂降りの中、森を車で走っていると、車が壊れる。近くの家にいき助けを求めると、白い髭をたくわえた一人暮らしの家主が泊まっていけという。手作りの料理でもてなす家主はとても親切だ。
しかし、時折、わけもなく泣き出し、落ち着かない動作を繰り返す。
翌朝、家主は車の修理会社に電話をかけた。歌手は近くに民家や商店がないか、うろつくと、狩人たちが集まり、イノシシと性的に戯れているところを目撃する。彼は気分を害し、元の家に戻る。その間、家主は車の扉をこじ開け、彼の恋人の写真・携帯電話をポケットにしまう。
歌手は周囲に電話をかけようと思い、受話器をとると、回線がつながっていないことに気がつく。家主を捜しその部屋に入ると、自分の携帯・写真を発見する。
そして、気がつくと家主は外で、彼の車をハンマーで破壊し、石油をあびせ、火をつける。彼は家主からハンマーで一撃くらい、気を失う。
気がつくと、女性もののワンピースを着せられ椅子にしばりつけられ、髪を刈られる。
それから、映画は彼の逃走と捕獲、さらなる虐待……というシーンが繰り返される。同性愛シーン、”獣かん”シーンの出てくる同映画は痛々しいが、どこか耽美な雰囲気が漂う。
虐待されるうちに歌手が正気を失っていく過程や、彼をペットのように弄ぶ家主の狂気が、丁寧に描かれる。クリスマスに、近くの牛を盗んできて、皆で「わしらは家族だ」といって喜びはしゃぐ家主、絶望的な状況なのに血まみれになりながらも意味なく笑う歌手……。
「絶望」と「狂気」が深く描かれている。
この映画は冒頭の五分ぐらいの間、女性が出てくるだけで、あとはむさ苦しい男のみが登場する。
変態村
邦題:変態村 原題:CALVAIRE 監督:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ 出演: