2007-05-01
政治への本気の熱意か金持ちの道楽か 注目される黒川紀章氏の参院選出馬
『日刊ベリタ』に「政治への本気の熱意か金持ちの道楽か 注目される黒川紀章氏の参院選出馬」というタイトルの記事を執筆しましたので転載します。
【リード】
建築家の黒川紀章氏が参議院選挙に出馬することを正式に表明したのは4月21日。「おたく評論家」宅八郎・渋谷区長候補の応援演説で突如、立候補を口にした。「私は今夏の参議院に出て、当選して、総理大臣になります」。「金持ちの道楽」と揶揄されるが、黒川氏の政治への熱意は本気のようだ。)
黒川氏といえば、先の都知事選に「共生新党」を結成し自らが党首に就き、同党公認で出馬したことで話題を呼んだ。「金をかけた」派手なパフォーマンスと「変人キャラ」が注目された。
都知事選の初日には「約6000万円で購入した」という12人乗りの自家用クルーザーを運転して、隅田川をさかのぼった。選挙戦中盤にはヘリに乗って伊豆諸島をまわった。ヘリのレンタル代は1時間約86万円だ。約1000万円かけてつくった選挙カーには丸テーブル1つ、椅子5脚。シャープの薄型テレビやDVDプレーヤー、トイレもついていた。そして、選挙カーを高級車センチュリーが先導した。
今夏の参議院選挙では比例区に「共生新党」を率いて、自ら出馬する。大量に票を得られる著名人の擁立を目指し、タレントなどに黒川氏が直に連絡して口説き回っているという。
同党は、「政党要件」に必要な「国会議員が5人以上所属する」か「直近の衆院選または参院選で、選挙区か比例代表の選挙で有効投票総数の2%以上の得票がある」という2つの条件を満たしていない。このため「政治団体」という扱いになり、参院比例区に出馬するためには、地方選挙区・比例区にあわせて10人の候補者を擁立しなければならない。同党が比例区に10人候補を揃えるには、供託金だけでも6000万円かかる。選挙は全国区となり、運動にかかる費用もばかにならない。しかし、黒川氏は供託金・選挙費用を全て工面して臨むという。
今夏の参院選比例区には政党要件を満たす7つの政党と、化粧品の販売会社アイスターが母体になっている「女性党」と維新政党「新風」が候補者を立てる予定だ。比例区で1議席を獲得するためには、全国で120万票(約2%)が必要とされる。「共生新党」はそれだけの票を得られるのか。
前回の参院選比例区では、俳優の中村敦夫・参議院議員(当時)が代表の「みどりの会議」(現在は解散)が中村氏を含む10人の候補者を擁立して臨んだ。しかし、得票数は90万3775票で、1議席も得られなかった。
同党の関係者は「共生新党」の苦戦を予想する。
「黒川紀章さんに知名度があっても、議席をとるのは難しい。テレビ局や全国紙は『政党要件』を満たさない政治団体について報道しないという取り決めになっています。そのため、『みどりの会議』のことは全てのメディアが黙殺しました。『共生新党』で比例区に臨んでも、全国紙が記事にすることはないし、テレビに出ることもない。テレビや新聞を見て投票する候補・政党を決める有権者が大半ですから、メディアからのパージは相当キツイですよ。よほど強固な組織がない限り、当選の可能性は低い」
今回の都知事選で黒川氏は「有力な4候補」の1人としてメディアで連日、取り上げられたが、得票数は15万9126票(2.89%)にとどまった。参院選ではメディアが取り上げない上、10の政党が立つ。前出の関係者は、「東京にかぎっても、知事選以上の票を得ることはまずありえない。半分の8万票とれれば上出来ですよ。実際は2~3割程度しかとれないでしょう。結党して半年も経たず党名が浸透していないから、他の都道府県では1%の票すらとれない可能性もある」と冷ややかに分析する。
ただ、議席獲得の可能性がゼロというわけではない。スポーツ紙の記者が語る。
「黒川さんのもとに、テレビやラジオからの出演依頼や、雑誌・新聞の取材申し込みが殺到しているといいます。『変人キャラ』が世間ではウケて、黒川さんはいまや『旬の人』。ちょっとした『黒川ブーム』ですから、その勢いで大量に票をとれるかもしれない。それに、黒川さんには潤沢な資金がある。それを使って新聞や雑誌に広告を頻繁に出せば、政党名も黒川さんの主張・政策も有権者に浸透させられる」
参議院選挙まで3ヶ月をきった。知事選では派手なパフォーマンスでマスコミや市民を驚かせた黒川氏が、次は何で驚かせてくれるのか。要注目である。