2007-05-29

参院選に護憲で挑む 「9条ネット」前田知克代表に聞く

インターネット新聞・JANJAN』に【 参院選に護憲で挑む 「9条ネット」前田知克代表に聞く】という記事を書いたので転載します。

 自由民主党は今夏の参院選の争点を「憲法改正」にする意向だ。日本は改憲の道を着実に歩んでいる。そんな中、政治団体「9条ネット」が党派を超えて「護憲」を旗印にして、今夏の参院選に臨む。「9条ネット」は何を目指すのか。同団体の代表で弁護士の前田知克氏にインタビューした。

――前田さんが平和運動をはじめとする市民運動に関わったのはいつから、キッカケは何でしたか?

前田:旧制高校時代(1948年)から数々の学生運動に参加し、1950年のレッドパージ反対闘争では東大駒場寮委員長として退学処分になるなど一貫して平和運動に参加して来ました。1960年安保の時の学生運動犠牲者の弁護団長、スモン、高速道路建設反対運動、横田基地住民訴訟など住民運動の弁護団長をして、人権擁護の活動をしてきました。キッカケは、世の中の間違った政治に対して容認できないという人権感覚と正義感です。選挙では社会党(社民党)、時には共産党などの革新候補を助けて運動をして来ました。

――護憲運動・平和運動にこれまでどのように携わってきましたか。

前田:日常、護憲勢力、護憲政党と協力し、国政選挙の時などは護憲勢力を党派の関係なく応援して来ました。

――イラク戦争の開戦前にどのような行動をされましたか。

前田:反対集会の呼びかけ人となり、街頭行動にも参加して来ました。

「9条ネット」設立の背景

――2007年の統一地方選挙の結果は「9条ネット」にとってどのようなものでしたか?

前田:9条ネットに参加している人達から数多くの地方議員を選出しました。既製政党に飽き足らない人達の支援を得ました。

――「9条ネット」の目的・趣旨について簡単にご説明ください。

前田:憲法9条を変えさせないために党派のいかんを問わず、9条擁護の市民の平和勢力を結集しようとするものです。

――「9条ネット」結成をした理由について3点お伺いしたく存じます。

1.日本になぜ「9条ネット」が必要なのか?
2.必要ならば、何故、必要といえるのか?
3.社民党など既成の革新勢力で物足りない点は何か?

前田:護憲勢力とされている政党の中で、議席をもっている共産党、社民党は支持率が低く(最近でも、1~2%)、また本当に共同して市民の中に浸透して行こうという気構えがなく、すべて我が党ということが優先して真の統一戦線が組めない。これでは、選挙のときにはこれらの政党に投票しても死に票となるので投票に行かない人が多い。憲法9条を護ろうという人達でも、共産党や社民党には投票したくないと口にする人達も大勢いる。護憲勢力政党といわれる党らは、一緒になって改憲勢力と戦おうとはせず、ばらばらで、自分の党の勢力拡大だけに熱中している有り様なので、これらを市民の立場から結集させよう、そうして、これまで棄権していた人達が投票する対象を作り上げようということです。

 前述の通り、既成政党だけでは憲法を護る力が結集できない。政党に対する期待感がなく絶望を感じている人達がたくさんいる。護憲勢力をまとめて、憲法改悪に危機感をもつ人達を結集し、選挙で護憲勢力を増加させ、改憲勢力(自民、公明)を減らすことが必要である。それには政党に飽き足らない人達の投票目標を作ろうということです。

――9条ネットと他党との違いは何か。

前田:9条ネットは政党ではない。ただ今回の参議院選挙で9条を護ろう、殺されかけている9条を救おうという市民の結集団体です。従って、自分の確認団体だけの当選だけをめざすものではありません。そのために、共産党、社民党に対して共同行動、選挙の時だけの共同の確認団体を作ろう、そのために各党は当組織をそのまま維持して、選挙のときだけ共同の確認団体の候補者として戦い、比例区では、9条と書けばすべての投票がこの確認団体の票となり、それを各党が自分の党の所属者のなかで個人票のおおいものから議員にすれば良いという構想です。

 必ずしも9条ネット所属員が議員にならなくても良い、9条擁護派が当選すれば良い、そうして改憲派の自民・公明の議員を減らせば良いということです。従って従来の政党とは異なります。もし9条ネット独自の候補者が当選すれば、共産党、社民党その他の護憲勢力と国会で統一会派を組めば良いということです。要するに、既成政党では集められない9条擁護を願う市民を、より多く結集しようということです。

――昨今の憲法を巡る動向についてどのように評価されますか。

前田:憲法を巡る動向は、日本軍(現在すでに世界有数の強力な軍隊に成長しているが)をアメリカの戦略に沿って、アメリカの始める勝手な戦争に、日本の防衛とは関係なく、第1戦に送ろうというもくろみの達成のために、憲法を変えようとしていると評価しています。ただ、日本国民の中には、まだこれに気が付いていない者が多数いる、自分らが殺されるのだということが分かっていない者が多くいます。これは戦後60年に亙って、まともな歴史教育をせず、かつての侵略戦争の罪悪をわざと教えないようにして来たアメリカと日本政府の教育の成果です。これを今回の選挙で少しでもまともな方へもっていかなければならないと考えています。

――「9条ネット」はどのような社会を目指すのですか。

前田:平和憲法の真髄を生かし、世界と共同で平和な世界を作り上げて行くことを目指しています。

今夏の参院選

――今夏の参院選では「9条ネット」は比例区に候補を立てるのか。供託金を集めるのも大変だと思うが、比例区で候補を擁立できるのか。

前田:立てます。できます。既に10名の候補者を予定しています。供託金も作っています。全国からカンパも集まっています。これは真摯に平和を願い、9条を変えさせないという決意をもっている、これまでいろいろな分野で市民のために活動して来た人達ですし、応援者も続々増えています。

――地方選挙区ではどのような対応をとるつもりか、「9条ネット」は選挙区で立てる予定はあるのか。

前田:選挙区でも立てられるところは立てます。既に決まっているところもあります。但し、選挙区で候補者の無いところは、その選挙区で9条を救おうという志をもつ候補者、これが既成政党の候補者であっても応援することにしています。 

――「政党要件」を満たさない確認団体が出馬しても、マスコミの協定は「なきもの」として扱われるようになっている。「9条ネット」が候補を擁立できたとして、数々の困難が予想されると思うが、どのようにお考えですか?

前田:マスコミは現在各社から毎日のように頻繁に取材が来ています。今や、既成政党だけではどうにもならないという危機感をマスコミももっているようです。権力におもね、市民の力を軽んずるマスコミは本当のマスコミとはいえません。

――「9条ネット」は比例区で何議席獲得することを目標としますか。

前田:少なくとも3名以上は獲得する予定です。今回は9条が瀕死の立場に追いやられようとしています。自民・公明の改憲勢力(戦争勢力)は一つになっています。9条をまもろうという勢力はばらばらです。共産党、社民党にも呼びかけましたが、共産党ははじめから無視し、応じたのは新社会党とその他の革新勢力、労組などです。社民党には「社民党・9条ネット」という確認団体の結成を呼びかけましたが、最後には断ってきました。

 もはや、かれらの既成政党には国民全体、平和国家の建設維持という理想はなく、ただ我が党の勢力拡張だけが目的であることがよく分かりました。これでは日本国憲法は殺され、市民は殺されます。今回は平和憲法を生かすか、殺させるかの関が原です。9条ネットは力の限り戦います。