2007-04-25

世田谷区長選:漁夫の利で保守の現職が勝利

インターネット新聞・JANJAN』に次のような記事を書きましたので、転載します。

タイトル:世田谷区長選:漁夫の利で保守の現職が勝利

本文
 下北沢や二子玉川の大型再開発などが争点になった世田谷区長選挙は、自民党と公明党が推薦し、石原慎太郎・都知事と大場啓二・前区長が応援した熊本哲之・区長(75歳)が手堅く組織票をまとめ、他の2候補を引き離して再選された。

 熊本区長は土木予算を増やし・大型開発を推進する一方、この3年間だけで70億円にのぼる区民の福祉・くらし予算を削減する典型的な保守区政を進めており、一部の区民からは、根強い批判の声が上がっていた。

 そのため今選挙では、熊本区政に批判的な政党、団体、市民が「統一候補」擁立を模索した。ところが、候補者の選定が進められる過程で、民主党が独自に世田谷区前助役・水間賢一氏の推薦を決定した。水間氏は前回選挙では1,173票という僅差で熊本氏に破れ、再起の機会を窺っていた。

 市民団体や社民党、生活者ネットワーク、日本共産党などは候補者を選定した結果、公認会計士の鈴木義浩氏の擁立を決定した。熊本区政との対決を示す候補は、水間氏と鈴木氏の2人が出ることになった。両候補ともに熊本区政の「大型再開発」を批判するなど、政策や主張は似通った。

 熊本区政に批判的な区民は、「市民派」候補の分裂選挙で、自民・公明が全面的に支援する熊本氏が漁夫の利を得るのではないかと懸念した。結果は「市民派」候補の分裂のおかげで、熊本区長が楽々と再選を果たした。得票数は以下の通りだ。

・熊本哲之:11万5,770(43.2%)
・水間賢一: 7万7,962(29.1%)
・鈴木義浩: 7万4,325(27.7%)

 水間氏と鈴木氏は僅差で、2人の票を合わせれば、熊本氏を上回る。候補者が一本化していれば、「政権交代」できた可能性は高い。

 熊本区政の続行で、これから4年でくらし・福祉の予算はさらに削られ、下北沢の街は再開発の名の下に原形を留めぬほどにずたずたに改造されるだろう。候補を一本化できなかった政党・政治家の責任は重い。