2007-06-25

エコロジー革命の時代がきている

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写真脚注:ヤン=ヴェーリング「フランス緑の党」前・全国書記(党首)【及川健二・撮影】

オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。

タイトル:エコロジー革命の時代がきている
サブ・タイトル:フランス『緑の党』前党首インタビュー

【本文】
 1980年初期にドイツで最初に設立された『緑の党』は、世界に広がり、とりわけヨーロッパでは一定の影響力を保持している。フランスでも『緑の党』は左派連立政権に90年代後半に加わり、環境相のポストをとり、環境政策を積極的に進めた。

 ヤン=ヴェーリング氏は2005年1月に33歳という若さでフランスの『緑の党』党首に選出された。31歳の女性・セシル=デュフロさんが党首の座を昨年12月に引き継ぐまで、党首としてメディアに積極的に出て、同党の政策や主張を訴えた。

 ヴェーリング氏は党首を退いてからも、同党論客の1人として活躍している。同氏はイラストレーターでもあり、エコロジーをモチーフにしたイラストを多数、発表している。

 日本には『緑の党』が存在しないから、馴染みがない人がほとんどだろう。同党は他の党とどこが違い、何を目指しているのか。そもそも、エコロジーとは何なのか。ヴェーリング氏に聞いてみた。

直線的経済から循環型経済へ

――日本には緑の党は存在しないため、多くの人にとって、まったく馴染みがありません。緑の党とは何なのか、他の政党との一番大きな違いは何ですか。

ヤン 一番の違いは、「地球には限りがある」ということを基本的な考えとして政策に盛り込んでいるということです。現在の発展モデルは資源をより多く使うようにできているのですが、これからは限りのある資源をリサイクルして使う必要があります。

 そのためには、直線的経済ではなく、循環型経済に転換していく必要があります。「持続可能な発展」を私たちは主張していますが、これは長い間続く可能性がある発展を目指すということです。

 石油は遅かれ早かれなくなるし、ほかの資源にも限りはあるし、水もこれ以上汚染してはいけない。常にリサイクルをし、循環型経済をとる必要がある。このことを訴えていることが一番の大きな違いです。

――ヤンさんはなぜ、いつ、どのようにして、緑の党の活動家になったのですか。緑の党の何が魅力的でしたか?

ヤン 私が緑の党に入党したのは1988年です。入党したときは17歳でした。私はもともと政治の世界に入りたいと思っていて、そのときに環境問題や今までなかったような新しい社会問題に目を向けている党に入りたいと思いました。その点で緑の党は私の考えにぴったりだったのです。

原発・遺伝子組み換え作物

――緑の党は原子力発電所に一貫して反対していますね。その理由を教えていただけますか。

ヤン これからの時代、エネルギーの問題は一般的に非常に重要になってきます。自然のエネルギー資源獲得に関して、国際関係が非常に緊迫したものになるでしょう。石油、ガス、石炭はどんどん残り少なくなっており、豊かな国はすべて独り占めしたいと思い、貧しい国も手に入れたいと思っています。

 フランスは、戦後、安全保障理事会に席を獲得するために原爆が必要だという選択をしました。原子力を、国際的政治力を高める手段としたのです。しかし、状況は変わりました。チェルノブイリに代表されるような事故を経て、私たちは、原子力は安全性に非常に問題のあるエネルギーだと知りました。

 事故が起これば多くの死者が出ますし、自然環境も破壊されます。それに、安全性に問題があるばかりか、とてもコストのかかるエネルギーなのです。国は、原子力開発のために非常に多くの予算を投入しています。廃棄物の問題もあります。

 危険な上に高くつく。そういうエネルギーは未来の地球のエネルギーではないと私たちは考えます。地球の未来のエネルギーは何か。地球に住む人にとって良いエネルギーは何かと考えると、原子力を選択する余地はまったくありません。

 石油は公平に分け合わねばなりませんし、現在のように、たくさん消費し続けていてはいけません。何かほかの方法を見つけなければならない。私たちが考えるほかの方法とは、まずは、節約することです。

 消費するエネルギーが少なくて済むようにすること、効率を考えること、エネルギー消費の少ない製品を作り出すこと。エネルギーをあまり使わないバッテリーや、電気をあまり消費しない電灯、少ないガソリンで走る車などを作ることです。そうすれば、消費エネルギーを世界で30パーセントまで節約できると考えられています。特に西洋では。西洋の国々が一番エネルギーを消費していますから。

 それから、新しいエネルギーについても考えなければならない。継続的に供給できるエネルギーです。つまり、現在あるエネルギーを消費せず、リサイクルで生み出せるもの。例えば廃棄物をリサイクルしてエネルギーを生み出すなど。それから、太陽、波、風、地熱などまだまだ使えるエネルギー源が地球にはあります。これらのものはまだ十分に開発されていません。未来のエネルギーはここにあります。

 日本とフランスの間で論争になった国際熱核融合実験炉(ITER)には巨額の資金が投入されていますが、太陽や風などのエネルギー源の開発にもっと投資するべきです。ITERはエネルギーを生むかどうかも分かりません。それに対し、太陽や風はエネルギー源になることがはっきりしているのですから。どうしてすばらしいエネルギー源があるのに、新しいものを探す必要があるのですか。

――フランスは80パーセントのエネルギーを原子力発電に頼っており、フランスの産業で原子力は非常に重要な位置を占めています。これを変えることは可能ですか。

ヤン 確かに、目の前に大きな壁が立ちふさがっています。緑の党は、原子力からの脱却を掲げる唯一の党です。しかし、以前は緑の党だけでしたが、今ではほかの党の中にも、この問題について考える人が出てきました。社会党の中にも「もしかしたら廃止できるのでは……」と考える人が生まれていますし、ほかの党でも、この問題について考えなければならないという流れが出始めました。フランスでは50年間、原子力を支持してきたので、経済的にも産業的にも、原子力を支持する非常に堅固な組織網ができあがっています。

 これに相対するのは非常に難しいことです。緑の党は小さい党ですし、資金も限られています。しかし、幸運なことに、市民団体などの活動もあります。フランス人のなかではこの問題について意見が真っ二つに分かれています。フランス人の半分は原子力に反対しているのです。つまり、私たちには強力な手段があるわけです。それに、今すぐ原子力をやめろと言っているわけではありません。25年かけて序々に減らしていこうというのです。今、始めれば、25年後には最後の原子力発電所を閉鎖できると考えています。現在と同じ快適さを維持しながらです。

――なぜ緑の党は遺伝子組み換え作物に反対しているのですか。

ヤン 私たちは遺伝子の研究には反対していません。その点だけは明確にしておきます。遺伝子の研究は、科学の発展に重要ですし、病気の治療にも発展をもたらしてくれるでしょう。ただ、研究する際には、すべてコントロールされた状況で行わなければならないということです。実験室で新しい薬を開発した際、それが安全だと証明されるまでは市場には出さないでしょう。

 遺伝子組み換え作物の問題は、科学的理由ではなく、経済的理由でテストが行われているということです。例えば、ある種を畑で使う実験をして、種の効率性について、収穫が増えるかどうかをテストしても、それが健康や環境に及ぼす影響についてはテストしないのです。だから私たちは反対しているのです。このようなやり方はまともではないし、犯罪とさえいえます。

 実験しているのは、科学の実験を行う会社ではなく、種子を扱う大企業です。非常に力を持った企業で、農業を助けようとか、消費者を助けようとかいう気はまったくありません。ただ、新しい種を売って利益を得ようとしているだけです。新しい種というのは、自然界に存在しない新しくつくられたもので、それを売ることによって世界中の農業に従事する人を自分たちに依存させようとしているのです。

 種はもともと自然にあるものなのに、実験室でつくられた種を使わざるを得なくすることによって、種を買うのにお金を払うことを強要するのです。ですから、この問題に関して、私たちは非常に強く反対しているわけです。