2007-05-08
だから、サルコジは嫌われる(下) 『緑の党』前党首が「極右コピー」と批判
『オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。フランス政治や大統領選挙に関するディープな情報は拙著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)に掲載していますので、御関心のある方はお手におとりください。
タイトル:だから、サルコジは嫌われる(下)
サブ・タイトル:『緑の党』前党首が「極右コピー」と批判
これまで、ニコラ・サルコジ前内務大臣(52)に対する批判の声をご紹介してきた。
今回、登場していただくのは、ヤン・ヴェーリング氏(35)だ。同氏は2005年1月に33歳という若さで「緑の党」党首に選出された。31歳の女性、セシル・デュフロさんが党首の座を2006年12月に引き継ぐまで、党首としてメディアに積極的に出て、同党の政策や主張を訴えた。
ヴェーリング氏は党首を退いてからも、同党論客の1人として活躍している。同氏はイラストレーターでもあり、エコロジーをモチーフにしたイラストを多数、発表している。
サルコジ氏の大統領就任が決まる前に聞いてみた。
【本文】
――「緑の党」は5月6日に行われるフランス大統領選挙の決選投票で、セゴレーヌ・ロワイヤル「社会党」候補に投票しようと呼びかけていますね。その理由を教えてください。
ヴェーリング氏 「国民運動連合」党首で右派のニコラ・サルコジ候補は、極右政党「国民戦線」の政策や主張を真似ることで、人気を得てきました。
サルコジ候補が政策に掲げ、内務大臣として実行してきた不法移民に対する徹底した排斥や、移民系若者に対する警察による抑圧、移民の選別・規制、犯罪の厳罰化による治安改善など、どれも「国民戦線」のジャンマリー・ルペン党首が長年、主張してきたことです。決選投票は「サルコジ・ルペン連合」対「フランスの民主主義・連合」という構図です。自由を愛し、民主主義を尊重するならば、サルコジ氏でなく、ロワイヤル氏に票を投じるべきです。
――2005年秋、パリ郊外を中心としてフランス各地で若者による暴動・反乱が起きましたね。暴動の本質的原因は何だと思いますか?
ヴェーリング氏 郊外問題は新しい問題ではありません。1950年代にパリ北郊外に広がった工業地帯の労働者団地に、60年代に安い労働力としてマグレブ諸国(チュニジア・アルジェリア・モロッコ)からの人々が移住してきました。彼らの居住地として、高層団地群がパリ郊外で林立していきます。
80年代に入ると、移民の家族合流が許可されマグレブ・アフリカ諸国から妻子や多妻家族たちが移住してきました。親たちの6割はフランス語を話さず、4、5人の子どもを抱え、家族手当だけで暮らす母子家庭が今日3分の1を占め、パリ郊外は貧困化が進むと白人は団地を去り、移民系住民が多くなるゲットー化が進んでいます。暴動に参加した若者は、この移民2世・3世が中心です。
同じ地区に経済的に問題のある人を住まわせると、排除と暴力を作り出します。郊外問題は私たちにとっては暴力の問題ではなく、社会的排除の問題です。大統領選で勝ちたいニコラ・サルコジ氏は、暴力に対する唯一の解決法は「抑圧」だと皆に思いこませようとしてきました。警察を使って、いわゆる「不良」をしめつけて。そして、彼は「なぜ」という問いかけをまったくしていません。
まず、これらの地区が排除されないような手段を投入するのが解決策だと思います。公共サービスや交通を整備し、雇用問題にも取り組みます。若者にも手をさしのべなければなりません。それに、もっと包括的に町について考え直さねばなりません。裕福な地区、貧しい地区、ビジネス街のある中心地、などという考えをやめなければいけません。同じ地区にオフィスもあれば、商店もあり、公共サービスもあり、住人には貧しい人も豊かな人もいて、というふうに混じり合っているのが理想です。混じり合っていないと、今日のような問題が起きるのです。
郊外問題は、20年、25年かけてじっくり取り組んでいかなければならない問題だと思っています。