2007-06-09
「変人」黒川紀章氏の無謀な再挑戦?~珍言・妄言を連発する国際的建築家の真意は~
『オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。
タイトル:「変人」黒川紀章氏の無謀な再挑戦?
サブ・タイトル:珍言・妄言を連発する国際的建築家の真意は
黒川紀章氏といえば、国際的建築家として知られている。フランス建築アカデミーゴールドメダルや米国のリチャード・ノイトラ賞、フランス芸術文化勲章、スペインの国際都市賞など、権威ある賞を数多く受けてきた。日本のみならず世界で手がけた建築も多い。代表作として、ドイツのベルリン日独センターやフランスのパシフィックタワー、マレーシアのクアラルンプール国際空港、オランダのゴッホ美術館・新館などがある。
その黒川紀章氏の変人・奇人ぶりが、いままた注目を集めている。「週刊新潮」は5月31発売号で「『若尾文子さん』に家から追い出されちゃった『黒川紀章サン』」と題する記事を掲載した。
同記事によれば、妻で女優の若尾文子さんが住まう自宅に黒川氏は居住しておらず、自宅の目と鼻の先にあるホテルに長らく滞在しているという。「週刊新潮」は取材の結果、「どうやら黒川サン、一時的なのかどうか、若尾さんに家から追い出されちゃった格好なのだ」と結論づける。
夫婦が別居状態にあるかは不明である。しかし、都知事選に出馬を表明して以降、黒川氏に珍言・妄言や奇妙奇天烈(きてれつ)な行動が目立つのは確かだ。
出馬会見で爆笑発言を連発
都知事選の出馬会見では記者を失笑させる発言を連発した。石原慎太郎氏のことを問われると、「まだ障子を破るくらい元気だね、エヘヘ。ただ、愛がないと硬さで突き破れないんだよ」と発言。
珍言はまだ続く。
「25年も東京湾の汚染を研究し、そのためにボート(クルーザー)を買った」
「明日からボク、徳島に船で釣りに行くから連絡つかないな」
「投票日の4月8日って偶然、ボクの誕生日なんだ。まあ、その日はパリにいるから、開票速報は見られないけど」
「ボクはいまだに社会主義に対する幻影がある。具体的に支援しているのは、中国。ロシアは本気で亡命しようとしたこともあったけど、ちょっと良くないな。日本にも社会主義的な思想を広めたいね」
報道陣からは「世界的建築家なのに支離滅裂だね」の声も出て、失笑、爆笑が尽きなかった。
選挙戦でも奇天烈な行動を連発
選挙戦でも周囲を驚かせるパフォーマンスを連発した。知事選の初日には「約6000万円で購入した」という12人乗りの自家用クルーザーを運転して、隅田川をさかのぼった。自身が設計したという選挙カーはガラス張りで、かかった費用は約1000万円。中には丸テーブル1つ、いす5脚。シャープの薄型テレビやDVDプレーヤー、トイレがついていた。
選挙中盤の3月30日には秋葉原のメイド喫茶を訪れ、「だんなさま、お帰りなさいませ」の出迎えに相好を崩した。鼻の下を伸ばし、メイド嬢に「かわいいねー」と連発し、「『萌(も)え』は日本の誇るべき文化だと痛感した」とコメント。
選挙戦最終盤の4月5日にはヘリをチャーターして伊豆諸島をまわった。ヘリのレンタル代は1時間約86万円だ。まず、訪問したのが八丈島。黒川氏は到着すると趣味の釣りを始めた。しかし、魚は1匹も釣れず、激怒して、予定されていた遊説は中止。場所を移動して釣りに再挑戦した。結局釣りに2時間半興じたが、釣果はゼロ。
魚が「買収に応じず、金満政治に反対の姿勢を示した」、「軍資金(えさ)がなくなったので、金満選挙は終わりにします。もう2度とえさで票を釣るようなことはしない」、「どうやったら票が釣れるか。まだ、魚にまでマニフェストが行きわたっていなかった」との珍妙なコメントを発表した。昼食には生ビールを飲み、ほろ酔い気分になり、訪問するはずの青ケ島行きを急きょ、中止し、来訪を待っていた村長をガッカリさせた。
演説中の都知事の横で「銀座の恋の物語」を絶唱
都知事選の最終日には、新宿駅西口で街頭演説をする石原慎太郎都知事陣営を襲撃し、演説会場から20メートル近く離れたところで、知事の弟である故・石原裕次郎のヒット曲「銀座の恋の物語」を、声をひっくり返しながらハンドマイクで絶唱した。そして、「慎太郎! オレの方が裕次郎よりうまいということが分かったか!」と絶叫した。
都知事選以降も、黒川氏の奇行はとまらない。
統一地方選挙後半戦には、文京区長選挙から出馬した鳩山太郎氏の総決起集会にアポなしで現れ、司会者のマイクを奪い、10分ほど独演会を始めてしまった。関係者によれば、会場は爆笑の連発だったという。
渋谷区長選挙に立候補した宅八郎氏の応援には最終日、訪れた。16時に予定されていた演説は黒川氏が3時間遅刻したため、19時から行われた。
宅八郎選対のスタッフはこう語る。
「16時に電話したらクルーザーに乗って隅田川を下っていると言います。遅刻して当たり前……という感覚でしたね。選挙演説では『黒川紀章の建築と宮崎駿のアニメ、宅八郎のオタク文化が世界に通用する』と力説しましたが、突如、『今夏の参院選に出馬する。議員になったら、必ず総理大臣になる』と度肝を抜く発言をして、聴衆を笑わせてしまった。しかし、黒川さんは至って本気でした」
妻の若尾文子さんが「共生新党」から出馬
常識の範疇(はんちゅう)を超えた行動で注目を集める黒川紀章氏だが、この夏は、4月に結成した「共生新党」から参院選に臨む。黒川氏は東京選挙から出馬し、女優で妻の若尾文子さんは同党から比例区で出馬するという。
黒川氏は「10人以上の候補を立てる」と断言するが、告示日まで1カ月だというのに、候補者発掘は遅々として進んでいない。若尾さんのほかに、愛知選挙区から秘書の荒川厚太郎氏の立候補が決まっている。「共生新党」公認候補は現在、わずかに3名で、比例区に臨むために必要な10名まであと、7名足りない。政界関係者は次のように語る。
「テリー伊藤や桜金造を口説くなど、黒川さんは片っ端から著名人・有名人にあたっています。しかし、みんな返事はいまひとつです。第1次公認が妻と秘書という身内しかいないところを見ると、正直なところ、『共生新党』が10名擁立できるのか甚だ怪しい。黒川紀章氏が東京選挙で奇抜なキャンペーンを行い、注目を集めるも惨敗するという都知事選と同じパターンにはまるのではないか」
告示日が迫り、各党の攻防が激しさを増す中、黒川氏の「独自の戦い」は今後も話題を呼びそうだ。