2013-01-12
お部屋2483/風営法改正の問題点 9/自分の感覚のみを基準とするメディア
久々にFacebookで書き込みをしまして、ブログも更新したので、ついでにもうひとつ。
前々回書いたように、メルマガ読者用に、単行本未収の古い原稿を次々公開しているところです。現在10冊目に突入。次の購読者募集までには予定通り20冊分、原稿の本数にして500本程度公開する予定です。ゲラチェックはないにしても、単行本を作る作業とたいして変わらないですから、連日連夜、これに忙殺されています。自分の原稿を読み直すのが嫌いなのですが、10年も経つと当時とは違う読みができて、新鮮だったりもします。それももう飽きてきてますが。
改めて実感するのはメディアに対する失望です。すでにほとんどすべて消してますけど、このブログでも性風俗産業に関するメディアの取り上げ方を繰り返し批判してました。テレビ番組は言うに及ばず、「朝日新聞」「週刊朝日」「サンデー毎日」「週刊実話」などなど。
こういったメディアの人たちは、「個人の感覚」で報じているだけで、「しっかり調べる」「冷静に考える」ということをしない。「性風俗産業はいかがわしい」「売買春はけがらわしい」という個人の思い込みから決して抜けることはなくて、その思い込みで情報を選択し、その思い込みでコメントをする人を探し、その思い込みでコメントを改竄さえする。悪意など、これっぽっちもなく、これをやってのける。
とくに「週刊実話」はひどいですよ。問い合わせの電話をしてきた記者に話をして、記者の思い込みに過ぎないことを説明し、それで記事はボツになるのかと思ったら、私が否定しているにもかかわらず記事を出し、私の承諾もなくコメントを使っていました。しかも、そのコメントもムチャクチャな使い方で、ロクにメモさえしていなかったのでしょう。それに抗議をしたところ、「コメントを使うなとは言わなかった」とデスクが開き直る始末。ライターは「コメントを使わせてくれ」との説明もしてないのだから、「使うな」なんて言うはずがないだろうが。
これについての謝罪も何もないですから、今も「週刊実話」はこういう方針で雑誌を作っているのでしょう。ここの編集者やライターと話をするだけで勝手に言葉を使われるので、皆さんもお気をつけください。
「週刊実話」の記事を信じるようなアホな人はほとんどいないでしょうから、これはまだいいとしても、他も十分ひどい。
浄化作戦の時も、頻繁に私はそれを批判し、その内容を伝えようとこのブログに書き続けていたわけですが(当時はまだブログという形式ではなかったかな)、「週刊プレイボーイ」や「ダークサイドJAPAN」など一部のメディアを除いて、これを問題視することはありませんでした。繰り返し言ってきたように、現在の風営法の厳格な適用はあそこから始まっています。性風俗に対する「浄化」を認めたから今があります。そういう意味では自らこの社会は現在の状況を招いたわけです。そこに私の挫折感と絶望があって、風営法改正を求める人たちに対しても、どこかに「自分らが招いたことじゃねえか」と冷めた気持があることを否定できません。とりわけ他業種のことを一顧だにしない人たちに対しては。
それに引き換え、現在の風営法改正についてはメディアが味方をしてくれています。そこが当時とは全然違うところです。だから期待ができる。
と今まで思っていたのですが、過去に自分が書いたことを読み直しているうちに、「待てよ、そんな簡単にメディアが変わるはずがあるか?」との疑問にぶち当たります。結局のところ、今も新聞やテレビでこれを扱う人たちは「朝まで踊ってもいいだろ」「クラブが風俗っておかしいだろ」といった「個人の感覚」で報じているだけなのではないか。起きていることの表面をなぞっているだけではないか。
そのことはここに書いてきたような「クラブを風営法から外すことで何が起きるか」というシミュレーションをどこもやっていないことでもわかります。
昨年のクリスマス、「おいおい教」教祖の元氣安が屋外で「儀式」をやるというので渋谷に観に行ったのですが、ライブハウスやクラブが密集する場所だったため、この「儀式」と関係なく、路上がひどいことになってました。ヒップホップ系のライブがあったようなのですが、その出演者と取り巻きが歩道の真ん中で立ちションするわ、路地から出てきたタクシーを囲んで騒ぐわ、通行人に因縁をつけるわ。
「儀式」の撮影スタッフまで因縁をつけられて、「ここだからいいようなもので、こんなん、住宅街でやられたらたまったもんじゃないよな」という話をしていたのですが、本当に皆さんは住宅街にクラブができていいと思っているのでありましょうか。「問題なし」と答える人の意見も尊重はできますけど、考えていない人に対しては「考えろよ」と言わないではいられない。何も考えずにここまで至っているのではないか。
Let’sDANCE法律家の会の主張は「ドラッグにしても騒音にしても他の法律で取り締まればよく、一律に業態で網をかけるべきではない」というものかと思います。その発想を無制限に許すと、あらゆる業態が風営法の対象になりかねないですから、私もこの論に賛同する点はあります。しかし、同時にこの論理は風営法自体の全否定にもつながります。
売春は売防法で取り締まればいい。ストリップは公然わいせつで取り締まればいい。18歳未満の雇用については児福法で取り締まればいいのだから、風俗営業についても、性風俗営業についても、ことさらに風営法の対象にする必要はないということになりかねない。私は風営法自体を否定する気は毛頭なく、営業内容を守るため、むしろあって欲しいと思っていて、このような意見には与しません(風営法はゾーニングの発想に基いた法であるという話もこのシリーズで書くつもりだったのですが、昨年暮れに壁にぶちあたって。そのまんまになってしまいました)。
Let’sDANCE署名推進委員会やLet’sDANCE法律家の会は、クラブという業界の利益団体およびそれをバックアップする団体であって、法改正がなされればそれでいいという考え方なのかもしれず、それはそれで正しいのかもしれないと私も思っていたりします。広く議論を巻き起こしたところで混乱するだけであって、不正確だとしても、わかりやすく「ダンス規制法反対」とやってしまった方が署名が集まる。署名が集まれば政治家はそこに票を見て動く。あとは議員さんたちが議論をすればいい。現にこの国では広範な議論なんて起きやしませんから、そこに期待したってしょうがなく、それよりも力技が有効なのだなと思える。残念ながらそういう国であって、ここまでの経緯を見て、そこは私も認めつつあります。
でも、メディアはそこに乗ずるのが役割じゃないっしょ。メディアがそこに無批判に乗っかるのであれば「だったら、ソープランドやストリップ劇場、キャバレー、パチンコ屋がどこにできても文句言わないのですね」と聞いてみたいものです。たぶんなーんも考えてない。そういう検討もない「踊らせろ」の大合唱に対して、寒々としたものを感じています。
で、Facebookにも書きましたが、この「朝日新聞」の記者はひどくないですか。
法律を理解することもないまま記事を作っているわけです。信じるのは「自分の感覚」だけでしょう。なーんも変わっていなかった。
このツイートの問題点についてはFacebookに書きましたが、「興行場法をどう考えるのか」「興行場法とのかねあいを考慮すべき」という意味もたぶんわからないでしょう。その例を簡単に説明しておきますか。
風俗営業の1号から4号までについて、風営法からダンスを外すと、4号は消えて、3号は深夜酒類提供飲食店の届けだけになる。風俗営業には1号と2号が残るわけですが、ダンスという要件が消えると、この区分がほぼ不可能になります。「だったら、一緒にすればええんでないか」ってことになって、1号と2号を合体させて、接待と飲食の提供をする営業をまとめて1号にする。シンプルですね。
ただし、事はそう簡単ではなくて、キャバレーは1号であるがために、現状では興行場法の除外になっています。キャバレーで行われている歌謡ショーやダンスのショーは風営法上では接待という扱いですが、同時に興行場法の興行にも該当します。しかし、1号の基準は施設、設備に対しても十分に厳しいので、重ねて興行場法の届けは必要がないということになっているわけです。
ここで1号と2号を区別しないとなると、キャバレーは興行場法の届けを改めて出す必要があります。これ自体は、たいした手間ではないとも言えますが、風営法はあくまで営業を対象とする法律であり、環境衛生を目的とする興行場法とは基準が違うため、キャバレーによっては改装や新規の設備投資が必要になる可能性があります。ここは個別のキャバレーを検討しないとはっきりしたことはわからないですげど、可能性はある。
ただでさえ、キャバレーは経営が厳しいのに、クラブのためになんでそんな負担をせねばならんのかって話です。それなら、現行法の営業時間を伸ばすなど、他業種にもメリットがある条件の緩和の方がずっとスムーズであり、業種間の確執も生じない。
前から言っているようにクラブはクラブの事情で動けばいいのですが、他業種に皺寄せが来るような改正には私は反対します。だから、「他業種のことを少しは考えましょうよ」「他業種の人たちも自分らの意見を言いましょうよ」と言い続けているのですが、わかってもらえない。Let’sDANCEの中でも他業種に対する言及をしているのは「NOON」の金光さんくらいでしょう。
これについてはとっくにメルマガでも検討していて、ダンスを外し、なおかつ1号を維持する方法も一応は考えているんですけど、議論がそこまで至ってないので、言ってもしゃあないわな。
こういう国でしかありませんので、私もあとは議員さんに任せて自分の古い原稿と格闘する作業に戻ります。議員さんたちは頑張ってください。