2012-12-21

お部屋2477/風営法改正の問題点 5/酒かダンスか溜息か

なんにもないと寂しいので、意味なく動画を埋め込んでみました。

2472「風営法改正の問題点 1」のコメント欄に「悪いのは酒なのだから、深夜酒類提供飲食店の規制を強めればいい」という意見を書いてくれた方がいらっしゃいます。

今現在の日本でそうすることに私は賛成しませんが、この指摘には一理あります。酒を飲める店をすべて学校や病院の近くに出せないようにし、住宅街にも出せないようにし、夜は12時または1時までの営業にしてしまえばいい。

そうすれば自動的にクラブは現在の風営法と同じような条件になりますから、ことさらにダンスという要件を持ち出す必要がなくなるわけです。「クラブは規制されて当然」という人たちも、「ダンスを風営法から外せ」という人たちも、これなら納得。私は風営法からダンスを外すことはもはやあまり意味がなく、風営法に残して営業時間を伸ばした方がいいと思っているので納得しないですが、ダンスという曖昧模糊としたものを基準とするより、酒税法で明確に規定されている酒類を基準にした方がクリアではあります。

そこはどうなるかわからんですけど、酒というものが風営法に大きく関係していることは海外の例を見るとさらにはっきりします。

以前、ロフトプラスワンで磯部涼久保憲司二木信Hibikillaらと、風営法を取り上げた時に、欧米との比較をしました。「ダンスができないのは先進国で日本だけだ」みたいなことを言う人たちがいて、たしかに日本同様、ダンスをさせる営業に規制をかけている国はあまりないようです。

しかし、欧米においても、朝までクラブが営業できる国は決して多くない。酒の販売が規制されているためです。リカーライセンスが日本の比ではなく厳しくて、小売店でも飲み屋でも深夜1時か2時で販売ができなくなります。24時間営業のスーパーでは、酒のコーナーが閉じられてしまいます。

アメリカでは州によって違いますが、ほとんどの州では似たようなものであり、ネバダ等を除いて、路上、公園、海岸などの公共の場での飲酒も禁止されています。酒に厳しい国ではダンスを提供する営業という定義が不要なだけで、それらの国でクラブという存在が規制されていないわけではない。

先日、イギリス人に聞いたら、「二次会は個人の家でやる」と言っていて、彼らとて朝まで飲まないわけではなく、酒の販売を厳しくすることを住環境の違う日本で実行するのは無謀です。と酒を飲まない私も思うのですが、ここで大事なことは、酒という要件を厳しくすればダンスを持ち出す必要はないということです。

外国人に日本の風営法の話をすると、「そりゃ、ひどい。ダンスもできないなんて、Shit!」と言うわけですが、「おめえんところだって似たようなもんじゃねえか、Fuck!」って話。何を基準にするのかの違いだけであり、現に英米では、日本よりちょっと長くクラブが営業できるだけ。ヨーロッパではもっとゆるい国もありますけど、だいたいどこでも酒が基準になっている。

それらの国でも酒での規制ができない場合、クラブはダンスで規制せざるを得ないかもしれない。これはクリミナル・ジャスティスを見ても明らかです。ある業態を縛るために、時には酒、時にはダンス、時には音楽を制限してくる。ダンスより音楽の方がまだしも基準としてはクリアかもしれない。

それぞれの国において、他の法律との兼ね合いで要件が違ってくるわけですが、クラブにせよ、レイブにせよ、複合的な要件によって定義するしかなくて、どっかで制限をかけられればいい。日本ではそれがダンス、飲食を提供する営業になっています。他で定義できるんだったらそれでいいのですが、酒の規制がゆるい日本では酒で一括してくくることができず、よってダンスをも要件にするしかないということかと思います。

「ダンスを外せ」「飲み屋は朝までできるのに、クラブはどうしてできないんだ」という意見においては、ダンスを風営法から外して、英米並に酒の販売を深夜一時までにすれば解決なんですけど、酒飲みたちがこれを許さないし、酒のメーカーも反対に動くでしょう。「クラブのために、なんでワシらが不利益を被るのか」ってことにもなりましょうし。

詳しく紹介するのが面倒なので、各自、検索して欲しいのですが、WHOの勧告を背景に、日本でも酒に対する規制を強める動きが着々と進んでいます。この動きを進める人たちは、クラブが風営法から外れた時には、それを理由に酒の規制を厳しくすることを求めてくるかもしれない。

「朝まで踊って酔っ払ったクラバーが学校の校門でゲロ吐いてケツ出して寝ている国はどうなんか」と。こうなると、風営法からダンスを外すことによって酒の規制強化をバックアップするってことにもなりかねない。

酒の規制が厳しくなったら、それを前提に考えるしかないのですけど、今はそうじゃないのですから、そうじゃないことを前提として、「どうすればクラブはより長い時間営業することができるのか」という問題を考えるしかないし、考えるべきです。

そのために本当に「風営法からダンス外す」というのが有効かどうかって話ですね。

まだまだ続く。