2010-04-29

お部屋2047/インタビュー原稿のルール 4

読んでいない方は以下を先にお読みください。

お部屋2042/インタビュー原稿のルール 1

お部屋2043/インタビュー原稿のルール 2

お部屋2045/インタビュー原稿のルール 3
 

インタビュー原稿が出る過程で、河野氏にもまたミスがありました。これも「[ツイッターを疑え!]を疑え」のコメント欄で質問をしました。

河野氏は原稿チェックの際に【文字数を気にしながら】と書きながら、一見して文字数が増えていることがわかります。「受け取った初稿」「ぼくが直した原稿」を比較すると、初稿は1行15文字で122行です。それを直した原稿は20行オーバーの152行。

実際に出た「週刊ポスト」の原稿は、12字×165行で、初稿を12字詰めに直すと、1行の違いしかない。つまり、初稿の段階で文字数はフィックスであったことがわかります。対して、河野氏が直した原稿を12字詰めに直すと、28行オーバーです。

これでは編集部に対して「もう一度手を入れてかまわない」と言っているに等しい。事実、掲載誌を見ればおわかりのように、編集部あるいはライターは少しずつ文章を削る工夫をしています。

河野氏が入れていたセカンドライフの部分も削られていますが、これは行数を合わせるとともに、同特集に登場する中川淳一郎氏も言及しているからです。どちらを削除するのかと言えば、文字数をオーバーして戻してきた人の方を削除するに決まってます。

もし文字数がちょうどであれば編集部は手を入れにくく、そのまま出す可能性もあったのですから、ここに削った文章を復活させる余地が生まれたのかもしれないとも想像します。

実際にどうだったかは知らないですが、「相手が文字数をオーバーするルール違反をしてきたのだから、こっちもカットした部分を復活させてやれ」と思ったのかもしれないし、手直しする過程でミスが起きたのかもしれないし。

しかし、行数オーバーは、ルール違反ではあっても、単なるミスですから、編集部が削った文章を復活したことが正当化されるわけではありません。あくまで計算ミスであって、こんなん、よくある話です。編集者が間違えていて、原稿を書いたあとで、「あと30行増やしてください」と言われることもあります。

ミスであろうとなんであろうと、これによって、編集部が手を加えること自体は当然であって、「手を加えたことがいけない」のでなく、あくまで「削った内容を復活させたこと」が問題。

無闇なマスコミ批判を声高に叫ぶ人たちは山ほどいても、こういった検証をするのは不得手らしく、あるいはこの程度の検証をする気さえないと見えて、誰一人指摘していないので、これも私がやっておきました。
 
 
以上のように、このトラブルは、編集部側が合意された内容を覆し、その変更についての改めての合意が十分になされないまま話を進めたところに最大の原因があったと考えます。合意がなされていないにもかかわらず、「ここまではやってもいい」とライターなり編集者なりは思ってしまったのでしょう。

「週刊ポスト」の弁明に対して、河野氏は【「拡大解釈してしまった」という詫びともつかない説明】と書いていますが、これは「変更した企画趣旨に対して河野氏が合意しているのだと思い込んでしまって、あのような一文を加えても納得してくれるのだと勘違いした」という意味だと理解できます。

要するに手続きの問題です。その背景には「週刊ポスト」の思い上がりがあるかもしれないですが、このことから、そこまで拡大するのは無理ではなかろうか。どんな出版社のどんな雑誌でも、あるいはどんな業種のどんな場面でも手続きミスはあることですから。現に河野氏もまた単純な計算ミスをやっているわけで、ミスはありますよ。

「週刊ポスト」の担当者に対して言うべきは「今後はちゃんと手続きを踏みましょう」ってだけのことだと思います。また、それがどういう経緯であれ、自分が語っていない言葉が自分の名前で出されたと河野氏が主張しているのですから、現にやってしまったことに対しては訂正の一文くらい出してもいいでしょう。

このことは「週刊ボスト」の記事をどう評価するのかとは別問題であって、どれだけ素晴らしい記事であっても、やってはいけないことはありますし、手続きに何ら問題がなくとも、記事は別途批判されていい。

河野氏の提示した問題に対して、どんな判断をするにせよ、「事前の合意がどこまでなされていたのか」を確認せずに、この問題を正しく判断することは難しいと思います。そのことは、すでに説明したように、インタビュー原稿が作られる経緯を踏まえればわかるはずです。

当人は合意が覆されたことを知っているわけですが、知らない第三者が中途半端な情報で「週刊ポスト」を断罪するのは軽卒です。河野氏が言うように、メディアリテラシーを身につけないから、そういうことになる。

しかし、そういう能力のない人や正しい判断をしようとする気がない人にいくら言っても無駄です。これについては私はすでに諦めつつあります。自分のことを考えても、すべての情報の裏取りができるはずがなく。今回も本当は「週刊ポスト」側の意見も聞くべきなんですけど、そこまで暇でもなく。

では、どうしたらいいのか。それをずっと私は考えているというわけです。当分このことを考え続けると思いますが、ここでは、この話は終わりです。

このエントリへの反応

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