2006-08-19
ギムナジウムの試験 後編
どんどん書きます!
先生はおっしゃいました。「残念ながら、3人のうち2人は不合格です。救うことすらできないくらいの落第点でした。そして、合格した人も、決して良い点というわけではなかった。」
え〜〜!!!! 息子は90%はできていたと言っていたのです。なのに・・・???? ということは・・・。汗+恐怖
その後の言葉は、耳の障害のある私には聞こえづらく、それに外でしたので雑音も多くてわからず、息子の顔を見ました。「俺だけが合格したんだって。でも喜んじゃ駄目だよ。」と日本語で言いました。
ああ、つまり他の2人が不合格だったというのですね、それで彼らのことを気遣い、露骨な態度をとるな、と言ったのですね。そんなこと私がするわけありませんけれど、息子は同じ追試を受けた子ども達に対して、心配りをしているようでした。
無表情のままで、算数の先生の言葉に聞き入りました。
先生は息子に向かって、「では11時に校長室にいらっしゃい。校長先生ともうひとりの算数の☆先生、そして私の3人で口答試験をいたします。」と言って、後は他の生徒に近づいていきました。「残念だけれども、どうすることもできないのです。ある一定の点数に達していなかったので。」女の子は泣いていました。家庭教師が慰めていましたが、どうにも止まりません。ヴィンツェントも暗い顔をして、目を真っ赤にしています。お母さんは無言で下を向いてつらそうです。・・・・私もつらい! 息子が筆記試験に合格したのは素直に嬉しいですが、まだ口頭試験は残っていますし、手放しで喜ぶような状況ではない。それにまさか2人が落ちるだなんて・・・。なんと言っていいのかわかりません。
彼らは悲しそうな顔をしたまま、車で去って行きました。
本当にむごいです・・・。
残った私たちは正門の前で車を見送りましたが、ぽつんと息子が言いました。「俺、口答試験って、ギリギリで点数が悪い生徒を救うためにするようなものなのかな、と思っていたんだけれども、甘かったな。そうじゃなくて、本当にかなりシビアに試験をするんだね。だから筆記でも、答えを出す前のプロセスもしっかりチェックして採点したんだよね。そうじゃなくちゃ、そこまで厳しい添削をするはずないもの。俺が90%できたって思ったけれども、そういう厳しいチェックによって、70点程度になったんだろうね。」
これは大変! 一体どんな口答試験なのか・・・・。なんだかものすごく怖くなってきました。「俺、去年追試を受けた女の子からちょっと聞いたんだよね。その子は歴史の追試だったんだけれども、筆記試験があるのは基本的には主要科目、つまりドイツ語、英語、ラテン語と算数だけで、後は口答試験だけなんだって。それで彼女は何とかなるだろうって思って、頑張って勉強したんだって。そして自信を持って試験を受けたんだけれども、不合格だったんだ。で、俺達と同じクラスになったわけなんだけれども・・・。それがどんな問題だったと思う?ヴォーベライトとフランスのxxの政策の共通点と相違点を述べよっていうんだってさ!」
え〜〜!!! そ、それってつまり、教科書に載っていない時事問題ってことです・・・。ヴォーベライトとは、ベルリンの市長なんですが・・・まさかそんな問題・・・。いやはや、びっくりです。それで彼女は落ちてしまい、8年生を二度することになり、去年息子と同じクラスになったそうなのですが・・・。ということは、息子が情報収集して、追試で合格した人はいないということでして・・・。かなり怖い事態になってきました・・・筆記試験には合格したものの、先生いわく「たいした点じゃない」・・・そして口答試験を受けるということは、う〜〜ん・・・・難しいってことなのでしょうか・・・。
「でも大丈夫よ!! どんな問題が出たって、君はちゃんと準備したし頑張ったし、うまくいくはずよ!」と励ましましたけれども、多少の不安はありました。でも、それを吹き飛ばそうと思いました。必ずうまくいく! そう信じたのです。
11時前に校長室の前のベンチに座りました。そこには、私たちの前に口答試験を受ける8年生の別のクラスの男子生徒と、そのお母さんがいました。彼は英語を落としたようで、英語の追試を受けたもよう。そしてどうやら筆記は合格したようです。彼はすぐに呼ばれて校長室に入り、そして5分ほどで出て来ました。結果は合格!! 良かったですね〜〜!!! こうして目の前で合格した人を見るのは嬉しいものです。追試を受けた全員が落ちるわけではないということがわかって、ちょっと光が見えてきました。
算数の先生がやってきました。私が挨拶すると、にっこりと微笑んで握手をし、そして息子に唐突に話しかけました。「どこで勉強を習ったの?」「え、え〜〜と家庭教師です。インターネットで調べて母がさがしました。」「まぁそうなの、ふ〜〜ん。」・・・この会話がポジティブなのかネガティブなのか、さっぱりわからなかったのですが、とにかく先生にちゃんとわかっていただこうと思い、私も説明をしました。「息子はやっとモチベーションができたんです、勉強しようという気持ちになったのです。友達と一緒に進級したいという気持ちから・・・。」と言ったところ、先生は再びにっこり微笑んで「そうですわね、でもちょっと遅かったですけれど・・・。」ひぇ〜怖い表現! さらに、「もう少し早く勉強する気になったら良かったのにねぇ。でもまぁ、ひょっとしたらうまくいくかもしれませんしね。」
ひょっとしたら・・・・? 本当に、ドキドキする表現を使いますね、先生・・・。汗
そして時間になり、息子は校長室に先生と共に入って行きました。
待つこと20分!!!! あまりに長い〜〜〜〜!!! 前の生徒は5分で出てきたというのに・・・確かに受けた科目は違います。でもそれにしても・・・・・。駄目ってことなのでしょうか・・・・。いや、そんなはずない!! 祈るような気持ちで待っていました。
すると、ほどなく息子だけが出て来ました。「どうだった?」「うん、今度呼ばれたら結果がわかるよ、今3人で話し合っているところみたい。」まだ決まらないのですか・・・。はぁ・・・。「なんだかすごいテストだったな。普通答案用紙に書くような答えを、全て口頭で答えるというものだったよ、それも3人とも質問するんだよ。20分みっちり大きな問題が3つあって、その中に小さな問題がいくつかあって・・・。数字を並べるのは全てできたと思う。ちゃんと説明できたはず。でも、名称を答えるのは、とっさに出て来なくて黙ってしまったのが3つあった。あとは・・・校長先生が質問した最後の問題は、学校でもまだ習っていなかったものだったんだけれど、勘で答えたよ。それはどうだかわからないなぁ。算数の先生も、気づかなくて教えていない問題を書いてきてしまったそうで、それはきっとそうなんだなと思うんだけれども・・・。」
なんだか・・総合して、やっぱりかなりシビアな試験なのだと思いました。少なくても、日本の追試とは全く性質が違うようです・・・。追試によってその子を落第から救う、という温情趣旨のものではない、ということですね・・・。実際、落第する子どもはかなりいるのです。息子のクラスで3人。他のクラスもありますから、多いですね。息子のクラスにも数名上から落ちてきた子ども達がいます。
算数の先生が5分後に出てきました。私のところにやってきて、「あなたの息子さんは合格です。進級できました。」とおっしゃいました。
よ、良かった〜〜〜!!!!!
タガが外れたように緊張がほぐれ、突然涙が溢れ出しました。あわてた先生は私を優しくハグしてくださいました。え!今まで怖い先生だな、と思っていたのですが・・・なんだか優しく見えました。隣にいる息子を先生が見ながら、「そうですね、そうですね! お母さんはきっとこの夏、きが気ではなかったでしょうね。お察しします。ストレスもすごくあったことでしょう。」そして息子に向かって今度は「いいこと、君は実力があるのだから、今度こそ授業中も私を無視せず、できるだけ授業で吸収するように心がけ、まじめな態度で接しなさいね。できるのだから君のためよ!」
丁度廊下にいた地理の先生や、試験官の一人の算数の先生も加わり、息子に笑いながら、「だめじゃないか、お母さんをこんなにまで悲しませて! これからはちゃんと勉強するんだぞ!」と言われていました。
私たち親子に、やっと明るいほっとする時間がやってきたのでした!!!