2007-05-30

ヴッパータール(3)

ナイヨンがカンティーネにやって来ました。

もちろん、シャワーを浴びてお化粧を落として、すっきりすっぴん美人で登場。

「よしこ~~!! 嬉しいわ~、来てくれたのね!」私達はがっつりハグハグ!
そしてアンゲリカとぺトラも、再会を喜びました。ヴィリーはナイヨンとは初対面。ものすごく嬉しそうでした!

そこに、ピナが現れました。

いろんなお偉いさんと立ち話をしているピナの隣で、私達は今回の公演のことを話していましたが、最後にピナにも挨拶をしました。

「もう、本当にいつも舞台を拝見した後、余韻に酔いしれています。いつも素晴らしい作品をありがとうございます!」と、ドキドキしながらピナさんに伝えました。

ピナさんはにっこりと微笑んで、「まぁ、どうもありがとう! 嬉しいです。何度も来てくださってありがとう。」と言って握手をしてくださいました。
ぺトラもアンゲリカ夫妻も大感激! 
ナイヨンも隣でにっこり。

・・・

「さ、じゃぁ約束通り、私達の友達のイタリアンレストランに行きましょう。アンナは直接自転車で向うから、私達は私の車で移動しましょうね。」とナイヨン。

外は嵐のような豪雨でしたが、車だったのですんなり移動できました。

・・・

夜の10時45分から食事・・・これは、どう見ても私の場合はあまりよろしくないディナーではあります。

でも、6人で会話を楽しみながらの食事は、それだけで意味があり、大切なひとときです。みんなはワインやビールを飲んでいましたけれど、私は水だけいただきました。そしで、できるだけ少食を心がけるようにしました。細心の注意を払って、肉類は口にせず、軽いものだけセレクトしていただきました。

そのイタリアンレストランは、20人も入れば満杯になってしまうくらいのこじんまりとしたお店なのですが、ピナも他のセレブも絶賛するほど美味しく繊細なお料理を出すことで有名です。私は今回が2度目でした。
リーズナブルで美味しくて、ちょっと和食のテイストがミックスされた素敵な味。
気をつけていないと、パンを沢山食べてしまうほど、自家製パンもすごく美味しいのです。

でもでも! 私は出来る限り少食でいるようにしました。

アンゲリカ夫妻は、毎年必ずバカンスで何週間もイタリアに行くほどのイタリア通。もちろん、それゆえにイタリアンにはかなりうるさい夫婦なのですが、最初から「ブラボー!」と言って舌鼓を打っていました♪
ナイヨンとアンナは、気に入ってもらえたので得意顔、すごく嬉しそうでした!

私も満喫しましたけれども、私のメインディッシュは食事ではなくて会話です。そう思ったら、何も苦痛なことはありませんでした。それに、私が耳が悪いことで、楽しめなかったり機嫌が悪くなるような友達は一人もいなくて、みんなすごく私を自然に受け入れてくれて、本当にありがたかったです!
例えば、まわりがうるさすぎてよく聞こえない状態になったら、誰かがちゃんとニコニコしながら私の耳元で繰り返してくれました。それらの行動も皆とてもナチュラルで、私は卑屈になる必要もなければ劣等感も感じることもなく、本当に心底楽しむことができました。
先日H子さんやEさんや息子と行った、チョコレートレストランもそうでしたし、ボーデ美術館の後で寄ったレストランも同様でした。

今、私のまわりの人達はみんな、私の耳のことで嫌な思いなど全くしないし、それどころか快く私を受け入れてくれます。それも自然に・・・。

「よしこ、そんなことは友達だったら当たり前だし、たとえ友達じゃなくたって、そうすることは当然のことでしょう? 耳が悪いからって、場がしらけたり会話が成り立たないなんてことはありえないし、淑子がそのことで肩身が狭くなることなんてことがあってはならない! みんな、よしこがこの場にいてくれて嬉しいんだからね!」と、全員が口をそろえて言ってくれました。

とても嬉しかったです!幸せを感じました。

私は、この耳のことがあって、しばらくみんなと外で会ったりパーティや会合に参加するのが怖くて控えていた時期がありました。でも、今残っている友達は皆、本当に心から私と話をしたいと思ってくれるし、たとえ私が聞こえないことがあっても、丁寧に根気よく繰り返してくれます。そんなことは当たり前で、何も大変なことじゃない、と言ってくれます。

そういうこともあって、私の耳はどんどん良くなってきているのだと思います。

心のある友達に囲まれて、助けてもらいながら、そして少食をしながら回復していくこと・・・すごく幸せだなぁと感じます。

・・・

ナイヨンが言いました。

「ピナはね、本当にダンスの世界で頂点を極めて、天才コリオグラファーとして世界の人々に愛されているでしょ? 彼女の振り付けにすごく影響を受けた著名ダンサーも多いしね。彼女の創造の世界は境界などなくて限りがないけれども、ひとつ心がけていることがあるのよ。

それはね、昨今は、暴力や死や、不幸なことが世界中で起こっているでしょう? そういう描写は舞台でする必要がないってこと。あまりに悲しい出来事がありすぎるので、舞台では影と光、喜びと悲しみや生と死を表現しても、決してネガティブな暴力などをテーマにはしないって。
そんなふうに言っていたわ。」

ピナ・バウシュの作品に身をゆだねると、自然とその美しさと芸術性の高さに感銘を受け、いつまでもそこに漂っていたいという気持ちになります。

本当に、この上なく幸せで美しい1日になりました。