2007-06-09
ムズィーク・ムズィーク!!(2)
今日は土曜日。息子は昨日、日本語補習校の後、友達や先生と一緒に元気にキャンプに行きました!
私も、しっかりとシャーピンを25個も作って持たせました。キャンプに引率してくださる、先生やリーダーの青年達の分も入っています。(それが決まりなのです)
それに、子供達はそれぞれのお弁当を交換しますので、多ければ多いほど良いのです。
息子はかなり少食になったので、キャンプでもそれほどは食べないと思います。
出かける前に作ったランチの全粒粉のお好み焼きも、3分の2しか食べず「後は補習校の休み時間に食べるから」と言って、自分で包んでいました。
怪しいサングラスをかけ、無印で買った私の麦藁帽子をかぶり(どうしてもその帽子がいいと言うので・・汗)、大きなマンモス社のキャンプ用リュックをしょって、嬉々として出かけて行きました。
・・・
さて、木曜日のギドン・クレーメルです!
私はクレーメルの生演奏を、なんと20年ぶりに聞きました。
20年前、ある仕事のために、私はウィーンでコンサートを聞いたのですが、それはマルタ・アルゲリッチとクレーメルのデュオでした。超満員でチケットは全くとれない状態でしたが、コンサート後にアルゲリッチさんに会って話をすることになっていたため、私のためにチケットを用意してくださいました。恐れ多いことです!
アルゲリッチ(ピアノ)とクレーメル(バイオリン)の、二人の天才による演奏は、もう神がかっているとしか言いようがなく、会場は大興奮の嵐でした。
私もものすごく感激して、さぁ、それではアルゲリッチさんとお話をさせていただく、ということになった時、「ギドンも一緒でいい?」と言われ・・・。
それで、何とアルゲリッチさんとクレーメルさんと3人でお食事をしたのでした!・・・大汗
いやぁ、ものすごく緊張いたしましたね、あの時は・・・。でも、天才お二人のお話は面白かったです。
まるで、漫画「のだめカンタービレ」のような・・・。
思考がユニーク!
それに、お二人ともドイツ語がお上手でした。というか、何ヶ国語もぺらぺらなんですよね。
語学の天才でもあるだなんて・・・すごすぎる・・・。
・・・
ということで、クレーメルが今、一体どんな演奏活動をしているのか、コンサートを聞いてみたいと思ったのでした。
室内楽ホールでしたし、さてどんな感じかな、クレーメルだから満杯状態かな、と思ったのですが・・・会場は満席ではありませんでした。ちょっと意外な感じがしました。
日本では、きっと即日完売になるのでしょうけれど・・・。
私の安い席は、ステージの裏側だったので、演奏中は誰の顔も見ることができなかったのですけれども、休憩後にはそういう席の人は、空いていれば良い席に移動するのが常。
私も休憩の後、ステージ中央の一番後ろの席に移りました。まぁ、他の人に比べたら、控えめな移動ですね・笑。
・・・
今回の「クレメラータ・バルティカ室内管弦楽団」は、ラトヴィア出身のクレーメルが、故郷であるバルト諸国での新しい音創りを世界に紹介するため、また若いバルト三国の才能あふれる音楽家を育てていくため、さらにクレーメル自身が表現したい音楽を追及するために結成された、まさに理想的なクレーメルの楽団なのです。
なので、クレーメルが自ら音楽監督をし、ソリストとなって、このアンサンブルをまとめています。
今年ですでに結成10年というからすごいです!
今では、ヨーロッパを代表する弦楽アンサンブルにまでなっているそうで、クレーメルの才能も当然のことながら、若手を育成するという彼の社会性にすごく共感を覚えました。
本当に、ほどんどが見るからに若い男女の弦奏者が21名。そしてヴィブラフォン奏者のアンドレイ・プシュカレフ。彼も若い!
今回は、クレーメルがプシュカレフをアピールしたかったようで、プログラムの二人の名前は、なんと同列に書かれていました。
さすがクレーメルです!
それで、先ずは前半です。
マーラーのシンフォニー10番からアダージオ。
原曲は大オーケストラ用ですが、弦オケ用にこの楽団が編曲をしました。
弦によるアダージオの、なんとなんと美しい音色!!
気がついたら、私の目からは涙が流れていました。
この私の耳でも、静寂の中の幾重にもかさなるシルクのような音の糸を感じることができました。
それらの糸がキラキラと光って他の糸と混ざり、さらに美しい色合いを見せてくれるのでした。
いつまでも、いつまでもずっと聞いていたいと思うほどでした。
続いては、ショスタコーヴィチのソナタ134番。
これは、本来はバイオリンとピアノのための楽曲なのですが、バイオリンと室内オケ用にプシュカレフ等がアレンジ。
クレーメルの音の世界と、プシュカレフのパーカッションが見事に融合して、とても面白いサウンドでした。また楽曲自体がとても面白い!
若いアンサンブルと超有名なマイスターであるクレーメルの、それはそれはホットでなめらかなハーモニーでした。
若い音楽家は、ほとんどみんなソリストとしても活躍しているほどの実力があり、クレーメルと一緒でも臆することなく、すごく自由にダイナミックに演奏していました。
それを受けて、クレーメルもスマートで若々しい、この上なく楽しい音を聞かせてくれました。
・・・
そして休憩の後、クレーメルは登場せず、若い弦のソリストであるダニイル・ガルリツキィがコンマスになり、
チャイコフスキーの弦楽6重奏「フィレンツェの思い出」をアンサンブルだけで演奏しました。
これがまた素晴らしい!
若いエネルギーがひとつになって、エネルギッシュで明るい、はつらつとした最高の六重奏でした。
第4楽章まであるのに、あまりに良かったので、観客が第3楽章で思わず大拍手をしてしまったほど。
終わってから、かなりのブラボーが聞こえてきました。
クレーメルだけが素晴らしいのではなく、若手の活躍も見所というわけです。素敵なプログラムだなぁと思いました。
そしてラストは、かなり遊び心のある「春をテーマにした曲のメドレー」!
クレーメルが再び登場し、著名な音楽家の「春」にちなんだ曲を集めて、それを次から次へメドレーで演奏していくというもの。
エンターテイメントとして楽しめました。
本当に今、春なんだなぁと実感できる楽しさ!
ポレヴァ、ベートーヴェン、ストラビンスキー、チャイコフスキーやピアソラ等・・・・。
観客の大歓声+すさまじい拍手に応えて、素敵なアンコールが用意されていました。
クレーメルとプシュカレフが中心となって、ピアソラの「フーガとミステリー」!
す、すごいです!!
プシュカレフの超絶技法としか言いようのないヴィブラフォンと、クレーメルのものすごぉ~くかっこいいバイオリンの音!
クレーメルは偉大な音楽家でありながら、若い音楽家に対して上からの目線ではなく、同じ立ち位置で演奏していて、それがとても素敵でした。
いやぁ、本当にクレーメルが進めていることは、素晴らしいなぁと感心いたしました。
・・・
フィルハーモニーを出たのは11時15分前。かなりの時間が経っていました。
雨はもうとっくにやんでいて、生暖かい風が吹いていました。
お酒は全く飲めない私ですが、まるで酔ったような気分になって、ほわ~んとしたあたたかな気持ちになりました!
帰宅してもお腹は減らず、そのままほろ酔い気分で眠ることができました。少食大成功です!笑
本当に、とっても素敵なコンサートでした!
(なんと、このクレメラータ・バルティカ室内管弦楽団は、6月15日と20日に日本公演が予定されているんですね!
曲目は若干違うようですし、プシュカレフをフィーチャーリングというわけでもなさそうですが、マーラーやショスタコーヴィチは演奏するようです。)