2007-10-08

かわいがり

最近、相撲の世界がなにやら騒がしいのですね。

帰国してから、テレビで相撲協会の不祥事の話が流れない時はありません。

かわいがり・・・

この場合の表現は、本当にとても怖いですね・・・。

そうしたら、ふと恐ろしいことを思い出してしまいました。

友人のジャーナリストにたまたまその話をしたら、絶対にブログに書くべきだ、それが今までドイツ政府公認ジャーナリストとしてドイツからいろいろ発信していた人間の役目だ!とまで言われてしまいまして・・・。

どうしたものかと思ったのですが、勇気を出して(時間もないのですけれども・・・汗)書くことにします。

・・・

まだ私が若かった頃の話です。

父が、ある相撲部屋の後援会に入っていたことがあります。あくまで仕事のつきあいで、決して相撲が特別好きだとか、そういう理由は全くありませんでした。(実際に、あっという間に退会しました。)

ほんのたま~~に相撲のチケットがもらえて、私と妹は父に連れられて相撲を見に行ったことがあります。

父と私達姉妹は、ある時その相撲部屋の、「早朝稽古」というちょっとしたイベントに招待されました。

イベントと言ったのは、ちゃんとそういうプログラムが時々相撲部屋に組み込まれているからなのです。

私は、何も知らずに

「力士の稽古を見学するだけ」なのだと思っていました。

確かにその稽古部屋には、高見から稽古を見学できる「たたみの座敷」があり、そこでゲストである私達が座っておすもうさんのお稽古を眺めるのです。

私達親子を含めて、10人くらいは招待を受けていたでしょうか。

何だか、偉そうな私達・・・。
お相撲さんのお稽古を、見世物みたいに見るの? 何故???

かなりの違和感がありました。

その日のメニューは(というか、いつもの基礎練習なのかもしれませんけれども)ぶつかり稽古と、記憶が間違っていなかったら、竹刀を持った力士が後輩をいわゆる「かわいがる」(私の認識では、ですが)様子でした。

でも、父が言うには、あれはかわいがりではない、と・・・・。

汗・・・・

本当に、かなりすごいぶつかり稽古でしたし、凄まじかったのですけれども、それでもそれは「かわいがり」ではない??

でも・・

私達が見学をしたその日、特別なプログラムが組み込まれていました。

ある若い力士に渇を入れるべく、親方が指示し、その力士は他の力士とずっとぶつかり稽古をし、うまくできないとその若い力士だけが竹刀で打たれ、投げ飛ばされて壁に激しく身体がぶつかり、水をかけられたり・・・・。

その度に、汗が飛び散り、壁にぶつかる凄まじい音が聞こえるのです。

私は全く理解できませんでした。

私の目から見たら、これは「稽古」ではない!

何だかもっともっと激しいもののように映りました。
しごかれているというか・・・??

これを、見学している人は皆面白いと思うのでしょうか?

ものすごく疑問に思いました。

その時見学していた子供は、私と妹だけだったと思います。

私はあまりの恐怖に気分が悪くなり、退席してしまいました。

続いて妹も出て来ました。
私達姉妹にとっては、この稽古はあまりにもハードなものでした。

しばらく他の部屋で過ごし、深呼吸をして、目に焼きついているミミズ腫れになった若い力士の桃色の肌を、自分の頭の中から消し去ろうと懸命になりました。

でも、うまくできず、吐き気がしてしまいました。

力士の結ったマゲが、戦国時代の負け戦をしている武士のように乱れ、顔も身体もぶつかって土俵で倒れた時についた土でまみれてどす黒く醜く、不気味な肉の塊のように見えました。

何で私はこんな所にいるのだろう?

泣きそうになり、しばらくは放心状態だったものの、妹とそのうち別のことで楽しく遊べるようになってきました。

しばらくすると、私達姉妹は呼ばれました。

「これから、朝食にちゃんこ鍋をいただくから。」と父。

「ちゃんこ番の力士が、見学に来た人にちゃんこ鍋をふるまうんだよ。」

・・・・汗。

ちゃんこ番力士????

信じられない!

私が見たのは、まだ身体に汗が湯気のようにまとわりついて、そこに土がまだらについたままの力士達が、私達に向ってお辞儀をして、そして懸命にちゃんこを作っている姿でした。

これも記憶違いかもしれませんけれども、力士は強い順番からちゃんこ鍋を口にすることができるので、下っ端の序の口力士などは、もう本当にずっとずっと後に食事にありつけるということなのです。
すぐに食事がふるまわれるのは、先ずはゲストである私達、次にその部屋の最も番付が上位の力士や親方だと記憶しています。

私は、もう恐ろしくて恐ろしくて、その場からすぐに逃げ出してしまいました。

もちろん、ちゃんこ鍋は全く食べませんでした。

それどころか、ちゃんこ番力士と言われるおすもうさんと目を合わせることもできず、器に盛ってもらう前に席を立ったのでした。

・・・

私は外に出ていきました。

もう呼吸が浅くなり、倒れそうになったからです。

はぁはぁ言いながら少し呼吸を整え、青ざめた顔を上げた時、

目の前には、みんなにしごかれた(としか私には見えない)あの若い力士が、家の壁にもたれながら顔を下に向け、ぐったりとしていました。

ショックが2倍になってしまい、私はその場から動くこともできなくなりました。

・・・

その後の記憶が全くありません。

一体私はどうしたのでしょうか?

ひとつだけ言えるのは

それからは、私は二度と相撲を見に行きませんでしたし、ちゃんこ鍋も今まで一度も食べたことがありません。

あの時見た光景は、本当にただの稽古だったのでしょうか?

いえ、確かに「滅多にない特別な稽古の日」にたまたま当たってしまったのです。

でも、あれは「かわいがり」ではないと????

だったら、それ以上のしごきの稽古(?)である「かわいがり」とは、一体どんな内容なのか・・・。

考えただけでもドキドキして汗が流れます。

私にとって、相撲の「稽古」は辛いトラウマとなりました。

あまりに太った人を見ると、力士を思い出してしまうのか、動悸が激しくなって具合が悪くなります。
もしかしたら、本当にこの悪夢のような体験があるからなのかもしれませんね・・・・。

・・・

今回は、少食のお話でありませんでした。

ごめんなさい・・・。

今回亡くなられた若い力士の方のご冥福をお祈りします。