2008-06-21

書店で学ぶ

図書館用の本を買うために、スタッフを何人か連れて神保町に行ってきた。

休日に交通費は自腹でも構わないから同行したいという臨時・嘱託職員を募ってみたところ、ほとんど全員から参加したいという返事があった。

今回は約半数の5人のスタッフを連れて、まずは三省堂書店神保町本店からスタートする。地元企業から寄贈された図書券を優先的に使いたいという事情や、大人数で幅広い分野から本を選ぶということに加え、図書館開館以来ずっと雑誌の購入でお世話になっている書店であるというのが、三省堂行きの理由だ。

三省堂書店からは、毎週納品データをメールでもらっていて、それを丸ごと図書館システムに取り込んでいるので、100冊以上の雑誌が一度に届いても数分でデータ登録が済んでしまう。
しかも、雑誌1冊につき1件の特集見出しを無償で入力してもらい、そのまま図書館システムに取り込んでいるので、こちらの感覚としては書店と図書館の関係を超えた、よきパートナーという感覚でいる。

事前に訪問準備として、中高生向けの科学分野の資料が少ないとか、教育関係の法律解説書が手薄だとか、環境問題に関する資料が不足しているなどといった、各分野それぞれが分担した購入希望メモといった感じのものを用意した。

実際に書店の棚を前にすると、目に飛び込んでくる情報量が多すぎて、全部買いたくなったりどれも買えなくなったりするから、書店の棚と自館の蔵書を結びつけて考える手がかりに、最低限のメモは用意した方がいい。
これらを参考にしつつ、持参したパソコンで選んだ本の重複調査をしながら三省堂で新刊書を約10万円分ほど購入した。
今回は行けなかったが、次回は佐野衛店長が「書肆アクセスをほぼ復元できるのではないか」(毎日新聞 2008年6月2日 東京夕刊より)と語る東京堂書店の「地方小リトルプレス」コーナーにも是非立ち寄りたい。

その後、次回古書店を訪問するための下見と雑誌バックナンバーの発掘を兼ねて、同行スタッフに古書店街を案内。
今まで郊外のブックオフ以外に、ほとんど古書店を知らなかったスタッフもいたので、田村書店の全集の山、呂古書房やキントト文庫の個性的な品揃えなどは、かなりインパクトが強かったようだ。
何時間もかけて見て歩いたのだから、個性様々な書店がたくさんあってただ驚いたとか、ボンディのチーズカレーがおいしかったで終わってしまってはもったいない。
開館5年目の新しい図書館なので、蔵書の多くが近年刊行された本に偏りがちだから、普段目にする機会の少ない古本や雑誌を、実際に自分で歩いて見て触れることはいい勉強になるだろう。
さらに、書店の棚は図書館のテーマ棚の手本にもなるし、書店員がつくる販促チラシは図書館広報の参考になる。本と人とを結びつけるという見方をすれば、書店と図書館は似た部分が多いから、何かと学ぶことは多い。
公共図書館の市民サービスという視点を一度離れ、図書館も書籍流通業界の一翼を担っていることを改めて意識して考える機会にもなって欲しいと思う。
その視点に立てれば、図書館にしかできないことは何なのかを、今まで以上に考えるきっかけにもなるだろう。

市民や役所や図書館の世界ばかりを見て仕事をしていると、視野が狭くなってしまうこともある。そんな殻を破るには、外の世界を知ることが一番効果的だ。

だから、今年はできるだけ多くのスタッフを連れて、積極的に外出しようと思っている。