2009-11-09
さらに先の図書館Webサービスと、保存体制のバックボーン案
これまで勤務先では、ブログをはじめソーシャルブックマークサービス、ブクログ、そしてGoogle AJAX Feed APIなどを利用し、様々なWebサービスを展開してきた。
最近では、公開準備段階でまだ公式サイトからのリンクは貼っていないが、「結城市関連論文ナビゲーター」というサービスの準備を進めている。
これは、図書館側で用意した地域に因むキーワードをクリックするとCiNiiを検索して、全文表示可能な論文を表示するものだ。
公共図書館ユーザーにとって、CiNiiはあまり馴染みのあるものではなかったと思うが、ネットワークと資料のデジタル化のおかげで、CiNiiに収録されている膨大な学術情報を能動的に提供できることを示す事例として、これは意義があるのではないかと思う。
なお、このプログラムを製作した当館スタッフの牧野雄二が、国立情報学研究所主催のCiNiiウェブAPIコンテストに応募している。
「結城市関連論文ナビゲーター」のような路線で考えると、例えばPORTAなどの外部データベースのパーマリンクを利用し、選書感覚でセレクトしたデータに、図書館サイトから利用者を誘導することにも大きな可能性を感じる。
図書館のWebサービスを介して資料を知る利用者もいるだろうし、最近の図書館はそういうこともやるんだなぁ、と関心を持ってもらうきっかけになってくれることも期待している。
だが、これらはすべて図書館にしかできないことというわけではなく、やろうと思えば個人にも可能なことである。
現状手が届きつつあるこうしたWebサービスの方向性は、図書館固有の機能と呼ぶにはまだ少々足りない。
ではこの先、どうすればいいのか?
やはり司書が利用者や情報に対し、図書館や図書館サイトで自館にアクセスされるのを待ち受けるだけでなく、能動的に仕掛けていくことを考えたい。
つまり、非来館者サービスとしてのWebサービスという次元を超えて、図書館サイトに来る人だけでなく、Web上の一般的な場所にも司書が出て行って、積極的にサービスする試みも必要だろうと感じている。
そういう意味で、これまでにiGoogleガジェットを用意してみたが、これもユーザーがわざわざ組み込まないと使えないのだから、まだまだ満足できるレベルとは言い難い。
検索バーへのプラグインにしてもそう。
まだ図書館(サイト)を知っている人だけを対象としたサービスの域を出てはいない。
そんなことを感じていたので、先日国会図書館が三菱総研に調査を委託している次期システムの検討会議「国会図書館情報検索サービスの利用者ニーズに関するディスカッション(第6回)」に参加した際、メーカーが工場からパソコンを出荷する時点で、あらかじめブラウザーの検索バーにPORTAを組み込んでおいてもらえないだろうかという意見を出してみた。
結構無茶な意見だったかな?とも思うし、実現するかどうかはわからないが、そういうことができれば、今よりも図書館を身近に感じる人は増えるだろう。
さらに、国会図書館の資料の電子化を見越した場合、PORTAの検索結果から当該資料を所蔵している公共図書館一覧が表示できて、最寄の図書館にリンクするといった導線が必要だと思ったので、そんな仕掛けをぜひ用意して欲しいと提案してみた。
また、前回書いたOCLCのウェブスケールに関することもある程度話すことができた。
現状は、まだまだ分担保存体制が確立されておらず、他館の所蔵を確認してそれぞれが保存・除籍を考えるといったルールも整備されていないところが多い。
例えば僕が勤務している茨城県に関していうと、市町村と県との関係は、分担型なのか県内の最後の砦として県立が控えているのか、まったく不明確な状態であり、最近になってようやくその点を議論しようという機運が高まりつつある程度の状態に過ぎないのだ。
少なくとも司書は、ルールが整備されていない段階である以上「最後は国会図書館が持っていればいい」ということで安心して思考を停めてはいけないだろうと思う。
地域の図書館が地域のアーカイブとして責任を持つ分散管理型でいくのか、市区町村の後ろに都道府県、さらには国会図書館がバックアップ機関としてアーカイブしておく体制になって行くのか、今のところはいずれとも言えない曖昧な状況である。
だが最低限、除籍しようという時点で他の図書館が持っているのかどうかを知らせてくれるアラート機能が働くような総合目録は必要ではないかと思う。
個人的には、その資料が単に地球上に存在するという保証があれば良いのではなく、図書館はその資料を利用する人のアクセシビリティも考えた方がいいと思うので、できれば都道府県立図書館の機能を強化することが望ましいと思うが、ともかくそうした議論さえまだ始まってもいないように思う。
保存体制を支えるシステムとしては、総合目録の構築を前提にウェブスケール的なシステムを構築するのが、いま考えられる限りでは最も有効ではないかと僕は思う。
さらにもうひとつ考えられそうなのが、都道府県立図書館は、ゆにかネットやNACSIS-CATに接続できるのだから、その傘下に各市町村を束ねたミニ総合目録をつくり、コントロールする方向性だろうか。
あるいは、図書館システムベンダーならば自社製品の目録を集めることも容易だろうと思うし、公共図書館界最大のMARCサプライヤーであるTRCならば、公共図書館版OCLCのように発展できる可能性もあるかもしれない。
PORTAに代表されるWeb上の情報源という点でも、もちろん国会図書館には大いに期待しているが、そうした他機関を利用する方向とは別に、地域の図書館ならではの主体的なWebサービスとしては、どんなことが可能だろう?
その地域の司書がレコメンドする情報、という部分にしか価値が残らないとしたら、その情報発信自体、いつまで存在意義を保てるか、確信は持てないと僕は思う。
だから、これまでやってきた路線とは別にもう一本、全く違ったことをやる必要があるんじゃないかと考え、現在新しい構想を練っている。
ところで、こんな具合にWebサービスをどんどん発展させることに対し、キーとなる人材が異動したらサービスが止まってしまうではないかといった懸念を聞くことがある。
確かに、サービスの安定供給を旨とする考え方は正しいと思う。
だが、一人や一部だけではなく、多くのスタッフを巻き込んで一緒に話を進め、動き出して習慣化させることができれば、安定したサービスとして定着させ得るというのが僕の実感だ。
あとはそのサービスを評価し、不断に改良し続けられれば良いと思うが、そこにはどうしても人材の問題が絡んでくる。
自治体の人事制度や委託などの問題ともリンクするので、ここで詳しく言及はしないが、ともかくいま現場で出来ることを、何か一つでも始めてみることが大事なのではないかと思う。
webと図書館の相関性は具体的には理解できないが、
本質的に図書館を利用する方々の本質はどこにあるのかが重要ではないのか、
学術的観点から図書館を利用すべき方々がたは結城市にどの程度あるのだろうか?
図書館に足を運んでくれる方々をもっと大切にすべきではないのか?
私は、素人なのでよく分からないが、なにか大切なものが欠如してはいないのか?
OGIさま、コメントありがとうございます。
>図書館に足を運んでくれる方々をもっと大切にすべきではないのか?
というご意見、ごもっともだと思います。
当館としても、そこを疎かにするつもりはありません。
ただ、現実に図書館に通われる市民の方は、市民全体の何パーセント
いるのだろうか、ということです。
既存のユーザーだけがサービス対象ではありません。
奉仕対象はあくまで全市民なのです。
図書館は文献に基づいた調べもののできる場だということを広く知って
いただきたいですし、仕事や勉強に必要な情報を求めることのできる社
会的基盤だということを伝えるためのひとつの手段として、Webの活用も
有効ではないかと考えています。
>なにか大切なものが欠如してはいないのか?
とのご指摘ですが、あくまでWebサービスは手段です。
サービスを遠くに判りやすく伝える道具だと考えています。
ということでご理解いただけましたでしょうか?
追加になりますが、「結城市関連論文ナビゲーター」や「新着雑誌記事
速報」を、市の図書館協議会においてスライドで説明した際には、市内
のボランティア団体、社会教育団体等の代表の方々より、どうしてこん
なに便利なものをもっと宣伝しないのか、と広報努力の不足を指摘され
ました。
需要のないところに向かっているわけではない、という感触は得つつ前
進していますので、この点もご理解頂ければと思います。
需要のないところに向かっているわけではない、という感触は得つつ前
進していますので、この点もご理解頂ければと思います。
この文章理解できない。