2005-11-15
【ルポ】極右との対話4。ルペン党首がロワイヤル広場で大咆吼……Jean-Marie, President! C’est vrai?……
「だから、いったじゃないの。ルペン党首がいったとおりになったわ。彼はね、30年間言い続けてきたのよ。こうなるって」
ルペン党首と同い年の77歳という老女は興奮して私にこうまくし立てた。
11月14日(月)18:30、極右政党国民戦線が主催するジャンマリー=ルペン党首の演説会(la Manifestation)が開かれると聞いたので、ルーヴル美術館の目の前にあるパリロワイヤル広場(La Place du Palais Royal)に赴いた。フランス暴動について語るという。地下鉄の改札を抜け地上に出ると、階段を上ったところに制服の警官が二人立っている。そして、上ってくる市民を観察する。
広場には、日が落ちてすっかり暗くなっているところに、強烈なスポットライトで照らされたステージが設置されている。その周りには人だかりができている。フランスはすっかり冷え込み、夜は五度近くまで気温が落ちる。その日も声を出すと口から出る吐息が白色に染まった。コンサート会場のステージのように、鉄の柵が演台を囲んでいる。そして、セキュリティの男性がその前に立ち舞台を背にして支持者と向き合う。
頭上から降り注ぐスポットライトは20ばかりあるのではなかろうか。ステージも音響装置もライトもすべて国民戦線が用意をしたものだ。緊急集会すぐに開くことができる能力が国民戦線にはある。緊急の呼びかけであるにもかかわらず1000を越える党員・支持者が集まり、会場設備もすぐにでき、プレスを招集する。
カメラマンや記者が大量に集結している。ステージ真下には雑誌・通信社・新聞社のカメラマンが固まり、本日の主人公・ジャンマリ=ルペン(Jean-Marie Le Pen)党首の登場を待っている。ステージから5メートルほど離れたところには、テレビ局のカメラが何台も設置されている。
わたしは聴衆のほうを振り返った。暗くてハッキリ見えないけれど、かなりの数の党員がいるようだ。わたしは誰もいないフランス国旗が並べられたステージの上にのぼった。ライトのまぶしさに目の前が真っ白になる。目を凝らして眺めると、広場いっぱい人があふれている。自由・平等・博愛を象徴する三色旗の旗がところどころはためく。
「フランスの救世主・救国の徒、それは古くはジャンヌ=ダルク、そしていまはジャンマリ=ルペンだ」
そう信じて疑わない党員・支持者が寒さに震えながら、救い主が光臨するのをじっと待つ姿を見ていると国民戦線が主催した舞踏会のことが思い返された。
(つづく)